今全て皆で分かち合う

23年3月頃だったか、プリンスのアルバム『Diamonds & Pearls』と『ラブシンボル』のリミックス曲付きデラックス・エディションのアナログ盤がebay等で流出したことがあった。ソニーとワーナー共同でリリースを企画していたのだろう、詳しい経緯は不明だが、製品化されたのにも拘らずお蔵入りとなってしまった。この2枚のアルバムのためのスーパーデラックス・エディションも企画されていたはず。実際何枚組になるはずだったのか。ボリュームがあり過ぎてスーデラは売れない、そう判断されたと聞いたことがある。でもそれなら作ったのにリリースしない、そんな勿体ないことをするだろうか。ブラック・アルバムやテイマーのファースト・アルバムのように、プリンス...もちろんプリンスはこの世にいない、そのリリースを止めたのはプリンス・エステート、ということになるのだろう。

ペイズリーパークで行われたセレブレーション2023、その参加者のみに配られたカセット型のUSB『Vault Series Vol.1』。それに入っていたmp3の完全未発表2曲、「All A Share Together Now」と「7 (E Flat Version)」はストリーミング配信等でシングル・リリース(その呼称が的を射ているかどうかは別として)される予定だ。そしてレコード会社を仲介せずプリンス・エステート自らがこれらを行っていく様子。今後CDでのリリースが検討されているのかはわからないが、NPG Music Clubのようにダウンロード販売を進めていくつもりなのかもしれない。レコード会社と決別し独立してやっていこうとしているのだろうか。

確かに『Purple Rain』はあるが、スーデラはプリンスが本来求めていたリリース形態ではないと言えるかもしれない。『20Ten』も企画されていたが、アナウンスされたものの世に出ることはなかった。アルバムのためにと曲を作ることはもちろんある。しかしそれに紐付け出来ない、定義付けられないマテリアルこそ膨大にある。よって一つのアルバムのアウトテイクを含めて作られるスーデラは、プリンスにとってはそれでさえ矮小であり、当て嵌めることが出来ないスタイルと言えるだろう。80年代ならスーデラは成立するかもしれない。しかし90年代に入って色々なプロジェクトを並行させるのが頻繁になってからそれがいよいよ難しくなってくる。例えば『Come』と『The Gold Experience』というリリースされている二つのアルバム、作られたのは同じ時期なので、それぞれのスーデラを作るよりこの2枚は一緒にして企画されるべきだ。『Emancipation』、『Chaos & Disorder』、『The Vault:Old Friends 4 Sale』、『Crystal Ball』、これらのアルバム群は、曲の制作時期が入り組んでおり、いっそ全てを一緒にして、ワーナー確執時期後半のスーデラとして括ってしまいたくなる。しかしそんなことをしたら一体何枚組になってしまうのだろう。200枚組1セット100万円とか。ライブ映像なんて入れる余地はない。テレビ放送映像だって無理。

ヴォルト内にあるプリンスの未発表曲は、アルバムとしてリリースされるのを待っている。プリンスの匙加減でアレンジを変えたりして世に放たれることになるかもしれないが、それらはほんの一部だ。プリンスは常に新しい曲を作っているし、それらで溢れんばかりなのだから。しかし止まった。プリンスにしかヴォルト内のマテリアルをプリンスのしたいやり方でリリースすることは出来ない。なら『The Vault Series』としてボリュームがどこまで行くのかわからないけど、とにかく出していくこと。後は僕らファンがプリンスの仕事を分類していくから。

「7 (E Flat Version)」(5:01)は92年8月8日か9日にペイズリーパークで作られた新しいバージョン。従来の「7」にあったエジプシャンさが消え、ダークさが伴ったボーカルに入れ直しをし、そしてヒップ・ホップな「2 Whom It May Concern」の亜流的バッキングに入れ替えるも、後半にはプリンスお得意のファンクが待ち受けているという、最高の展開を持つ珠玉のアレンジ。

「All A Share Together Now」(3:45)はセレブレーション2023のプロモーション時に30秒程の断片(計3バージョンあるらしい)、その全貌バージョン。でもラストのラストでカッティングのフレーズが変わり、それをもっと聴きたいと思わせつつフェードアウト。更なるロング・バージョンがあるのかもしれない。「Sexy M.F.」の磨ける所全てを磨き上げたかのような超洗練ジャズ・ファンク。06年9月4日か9日にペイズリーパークで作られた。当時シングル・リリースしても良かった位出来は良いが、果たしてあの頃のどのアルバムに収録させるか、と言われると悩む。『Hitnrun Phase Two』の「Stare」の代わりに収録させるとか。とにかくいつの時代でも聴けてしまえる、踊らされてしまう曲。

All A Share Together Now

ああ、僕を知れ
それぞれの世代で
父の教えの如く、息子がしているように
過ぎ去りし過去が
富を、英知を、より強固に増やしてきたけど
その時以上に得ることが出来る世代はもうない

簡単に手の届く距離で
バトンはパスされる
聖書は僕らに教えてくれる
以前からの債務は支払われるべきだと
今全て皆で分かち合う
今僕を好きになれ
あとになってでもいいよ

黒字、赤字、各々を一つに
共に動き出すんだ、改善するために
一つの神、真実の神の下に
ブラザー、シスターが呼び合う
今全て皆で分かち合う

敵は寝ている、丘の麓で
愚弄しない方がいい
僕らが奴らを根絶するには
信念を貫くんだ。
理由reasonもなく、ましてや罪であるにもかかわらず
殺してはならない
全てには季節seasonがある
全てが時と共にある

どんなものでも収穫したら
収穫した人には今度は種を蒔いてもらう
そう僕に言いましたよね
今皆で共に奉仕する
人生において必要なもの
恵みをしっかり見定めれば循環するんだ
今共に立ち上がろう
Hit me, band

もし君がよければ、今日手に入れたものがある
彼女は混雑している部屋から彼を連れ出した
喜びと笑顔だけがあった
直ぐに今の現実を変えるために
彼女には考えがあった
彼女が常に知っている計画
彼女はその運命を変えようとしてた
今全て皆で分かち合う

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