小説/『シヴィル・エンジニアの異世界復興』 5頁め
5.初めての戦闘
シアンは、慎重に歩みを進め、池のほとりに辿り着いた。
まだ、『エイコーン』には、気づかれていないようだ。
「クリン見てて、私戦ってくる!!」
シアンの眼前には、栞(碧・緋)が浮遊し、戦闘準備は万全だ。
「まずは、相手の動きを確認するか……」
シアンは、栞(緋)を操作して『エイコーン』に攻撃を仕掛ける。
カンッ、『エイコーン』の胴体に栞(緋)が触れた瞬間、甲高い音が響いた……
「操作が難しいな……思ったところに当たらない……」
シアンの攻撃力では、胴体にはダメージを与えられないようだ。
「柔らかそうな、頭頂部を狙ったんだけどな……」
『エイコーン』がこちらに気付き、とび跳ねながら勢いよく体当たりしてくる。
「防御しないと……」
シアンが、自分と『エイコーン』の間に栞(碧)を移動させると、体当たりに合わせて碧色の障壁が展開した。
六角形の障壁は、衝撃を『エイコーン』自身に跳ね返す。
シアンは、『エイコーン』が衝撃で吹っ飛んだ隙に、頭頂部を狙った攻撃を繰り返す。
カンッ、カンッ、カンッ、『エイコーン』が少し動いただけで狙いが外れ、硬い胴体に攻撃が弾かれる。
グニャン、栞(緋)が頭頂部に当たる瞬間、円形で透明な嚢状膜に衝撃が吸収される。
驚いていると、剣の様に硬質化した葉でシアンを斬りつけてきた。
「パァン……痛っ」
間一髪障壁は展開できたが、反動で弾き飛ばされる。
「シアン大丈夫‼︎」
クリンが衝撃の大きさに心配して駆け寄ってくる。
「大丈夫、操作が下手なら、近づけば良いんでしょう……」
ぶつぶつ呟いた後、シアンは、栞(緋・碧)を両手に持ち『エイコーン』との距離を詰める。
剣の斬撃を栞(碧)で受け流し、栞(緋)ですれ違い様、頭頂部を切断した。
切り口から、緋色の結晶が転がり落ちる。
「シアンやったね、メテオライト結晶ゲットだ♪」
クリンに以前聞いた話によると、メテオライト結晶は、通称『緋晶石』と呼ばれ、力などの能力を引き上げる性質がある。
その他には、エネルギーを産出する燃料としての役割を担っているようだ。
「死ぬかと思った‥‥」
シアンは疲労困憊になりながら、手のひら程の緋晶石を拾い上げた。
「シアン……さっそく緋晶石を使ってみなよ」
「クリン……緋晶石って、そもそもどうやって使えば良いの?」
「クエタ(本)の表紙に緋晶石を触れさせてみて」
表紙中央部には、緋色に光る結晶が埋め込まれている。
シアンは、緋晶石を裏表紙に近づけてみた。
パァーン、ヒュッ、緋色の光が2つに分かれ、クエタ(本)とシオンの体に吸い込まれる。
クエタ(本)が緋く光り輝き、1頁目が自動的に開かれる。
∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞
《ステータス MP II 上昇》
《スキル 物理障壁II 獲得》
タスク
●戦闘勝利(初回)
《碧晶石 ×100 獲得》
●反撃攻撃で勝利(初回)
《スキル 反撃鋭翼I 追加》
●特殊個体の討伐(初回)
《スキル 使役指揮I 追加》
∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞
「シアン……碧晶石が手に入ったよ!! 」
碧晶石でクエタ(本)が強化できるよ。
今度は裏表紙だよ。
パァーン、ヒュッ。
碧色の光が2つに分かれ、クエタ(本)とシオンの体に吸い込まれる。
クリンに言われ、シアンは、碧晶石を裏表紙に近づけてみた。
クエタ(本)が碧く光り輝き、1頁目が自動的に開かれる。
∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞
《ステータス HP II 上昇》
《武器 クエタ=アーカイブ II 強化》
《防具 ナノ=ローブ II 強化》
タスク
●碧晶石の使用(初回)
《栞(碧)×1 獲得》
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クエタ(本)には、無数のタスクと対応した報酬が表示されている。
タスクは、項目毎に分かれ、こなしたものには、色がついている。
「シアン一度ステータス確認したら?」
シアンは、クリンに促され、クエタ(本)で 自分のステータスを確認する。
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基本情報
〇 名前 シアン
〇 性別 女性
〇 称号 転生者
ステータス
■ L V 【 I 】
■ H P 【 II 】【■■■】
■ M P 【 II 】【■■■】
装備
◇武器‥クエタ=アーカイブ【 II 】
栞(碧)×2
栞(緋)×1
◇防具‥ナノ=ローブ【 II 】
スキル
■ 空間認識【 I 】
■ 物体操作【 I 】
■ 物理障壁【 II 】
■ 反撃鋭翼【 I 】
■ 使役指揮【 I 】
特殊能力
◆ ライブラ【 I 】
情報を可視化できる。
(知識・経験を得ることで情報量追加)
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「少し成長したけど……タスクをクリアして、もっと強くならないと…… 」
シアンが独り言のようにつぶやくと、クリンはいつものように、ゆらゆらしながら声をかけてくる。
「『アズラエル』を1体倒したくらいで、急に強くなるほど、この世界甘くないよ‥‥」
シアンはこれからどうするべきか、しばらく真剣に考え、結論を出す。
「クリン、訓練したいから『アズラエル』がたくさんいる場所教えて!!」
シアンは、強い自分の姿を、思い描きながら、クリンに勢いよく宣言した。
「山頂付近が良いと思うよ、『アズラエル』が群れでいるはず。
「分かった、行ってみる!!」
シアンは、足早に元来た道を引き返し、山頂を目指し進んで行く。
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2023.3.5(プロット修正版)
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