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企業のお問い合わせフォーム、それは、ラブレターの送り先。

コロナがきっかけで客足が遠のいたのか、はたまた、実は以前より経営難だったところにコロナの打撃がトドメとなったのか。
わたしには詳しい事情は分からないが、3月あたりから、有名なブランドや企業が倒産したり、事業縮小したりしている。

キャスキッドソンが倒産となったとき、わたしの友人は本当にショックを受け、「あの…あのキャスキッドソンが…そんな…きっとこれから色んなところが倒産する…コロナやばい。」と、打ちひしがれていた。

幸い、わたしが愛用しお世話になっているブランドや企業は無事ではあるが、果たして本当に無事な状況なのかは分からないし、今無事だったとしても1年後にはなくなっている可能性もある。

そんなふうに考えたわたしは、購入して応援するというのはもちろん大前提として、良いなと思ったら、なくなってしまう前にちゃんと企業に伝えよう。そう思い至ったのである。


のりたまは、今年で60歳

わたしは、料理が好きだ。
しかし、それは誰か自分以外に食べてくれる人がいるときという条件付き。
家で自分だけが食事をする場合、しっかり料理して食べて片付けもするというのが、本当に面倒くさい。
めんどくさすぎて、家で一人のときの大概は、前日の夕食の残り物を食べる。

しかし、「夜中のミートソーススパゲティは母の味。」や、「パセリと共にどう生きるかを考える。」にも書かせてもらった通り、わたしは割とたくさん食べる。
そして夫もめちゃくちゃたくさん食べる。
どのくらい食べるかというと、夕食のみで二人でご飯3合食べるくらいには、食べる。
ここ最近は二人とも少し食べる量が減ったので、お茶碗0.6杯くらいは残るが。
わたしの実家が米農家で良かったと心底思っている。

そんなわけなので、夕食は残らないことがほとんどだ。
残っていたらラッキー、翌日ありがたく頂戴するのだが、何もないときは悲惨だ。
食べないなんてことはザラで、良くて卵かけご飯、めちゃくちゃ良くて和えるだけソースを使ったスパゲティ。

元の自己肯定感が低いというかアンバランスだからか分からないが、こういう食事をするとめちゃくちゃ自己肯定感下がる。
パスタのときは、和えるだけパスタソースの種類が豊富で楽しいので、ご機嫌のまま食事を終えられるのだが、卵かけご飯のときなんかは、一口食べて「おいしい〜」ってなった後は、どんどんと自己嫌悪に陥る。

そんなんだったらちゃんと作って食べなよという意見はわかる。わかるけど、めんどくさい。

どうしたもんかと思っていた矢先、わたしが食べたのが、丸美屋食品ののりたまをかけたご飯だった。
食べたのはおそらく中学生ぶりだった。

そうしたら、おいしいのだ。
最後まで。

パスタは「茹でる」というコマンドが増えたり、チンするだけでできる容器もあるが洗い物は増えるし、完成まで10分かかったりするので、めんどくさがりのわたしにはちょっと頑張って手に入るご機嫌なのだが。

ふりかけご飯は、ご飯をよそったら食べられる。米さえ日頃多めに炊いて冷凍しておけば、2分チンするだけで食べられる。
洗い物は、お茶碗とお箸だけ。最高。

のりたまによってご機嫌に食事を終えたわたしは、これはもう丸美屋食品に連絡するしかない!と、お客様相談窓口にメールをした。
のりたまとわたしの思い出を思い起こしつつ、応援と感謝の気持ちを込めたわたしのメールがこちらである。

幼稚園や小学校の遠足のおにぎりは、いつものりたまをリクエストしていました。
中学校の毎日のお弁当では、「てのりたま」を持って行っていました。
その後しばらく、「ごはんは白米で食べたい期」を過ごしました。
10年以上経って、ふとスーパーでのりたまと目が合いました。
なんだか懐かしくて買ってみたのですが、「こんなに美味しかったっけ?!」と、
驚きと共に感動しました。
子供の頃に食べていたのりたまと全く同じなのか、改良に改良を重ねて味が
グレードアップしたのかわたしには分かりませんが、どちらにせよ本当に
美味しかったです。
10年以上見向きもしていなかったのにこんなことを言うのも図々しいかと思いますが、のりたまがこの先もずっと愛され続けますように。
応援しています。また買います。

別に返事が欲しいわけではなかったので、返信不要欄にチェックを入れて送った。

ちょっと恥ずかしいなと思いつつ、素直な気持ちで送ることができたのも、この記事を読んだことがあったと思う。
とても素敵だし最高に面白い記事なので、ぜひ見てみてほしい。


さて、メールを送って1時間後。
なんと、丸美屋食品から返事が来た。
その内容が以下である。

この度は、弊社お客様相談室にメールをお寄せくださいまして
誠にありがとうございます。「返信不要」とございましたが、
メールを頂戴したことに一言、お礼を申し上げたいと思い、
誠に勝手ながら、お返事させていただきました。
この度は、弊社「のりたま」に対するお褒めの言葉を頂戴致しまして、
誠にありがとうございます。深く御礼申し上げます。
のりたまは昭和35年に発売した商品ですが、パッケージや中身についても
少しずつ改良を重ねながら現在に至っているロングセラー商品です。
今日まで成長できたのも  様をはじめ、ご購入いただいたお客様の
おかげであると考えております。心より感謝申し上げます。
なお、“のりたまがこの先もずっと愛され続けますように、応援しています。”
とのおほめの言葉は、お客様からの嬉しいお言葉として、全社に申し伝え、
業務の励みにして参りたいと存じます。
弊社と致しましては、これからもお客様のお声を聴きながら、お客様のご期待にお応えできるよう、製品の開発、製造、販売に
精一杯努力して参りますので、今後とも丸美屋食品をお引き立てのほど、
よろしくお願い申し上げます。
嬉しいお言葉、本当にありがとうございました。

とのこと。

良いと思ったものを良いと伝えるだけでも、自分の中でなんだか嬉しい。人はこれを自己満足と呼ぶ。
それなのに、返信不要にも関わらずこんな丁寧なお返事を迅速にいただいてしまい、ちょっと恥ずかしいけど嬉しさは倍増。
しかも、のりたまの歴史についても教えてもらってしまい、わたしの知的好奇心も満たされてしまった。
のりたまは昭和35年生まれなのか。
それってつまり、今年で60歳なのでは…?
のりたまの還暦祝いに、みんなでのりたま買ってふりかけご飯食べよう。


騙されたと思って食べてください、柔らか青豆の温サラダ

さて。
そんなわけでわたしは、のりたまが大好きになったが、これまでの人生ずーっとのりたまを食して来たわけではない。
なので、ほっかほっか亭の上記記事を読んだとき、こんなにも長年の間通いつめて食べ続けたメニューがあるなんてすごいな、いいなあと感心した。
わたしには、そういった熱烈に大好きといえるメニューやお店が、パッと思い浮かばなかったからだ。

しかし。
わたしはとんでもない、大切なものを忘れてしまっていた。
それもこれも、コロナによる外出自粛で、外食を3ヶ月もしないで過ごしていたからに違いない。

昨日、一人で繁華街をうろつき、買い物を楽しんだ。
18時から脱毛サロンの予約をしていたのだが、17時には買い物に満足し、手持ち無沙汰となっていた。
夫が実家に帰るというため、久しぶりに一人夜ご飯を予定していたわたしは、この余った時間、どこかでサクッと早めの夜ご飯を食べてしまおうと考えたわけだ。

そうして目に入ったのが、サイゼリヤだった。

席に通され、メニューを開く。
すぐに決まって、注文をした。

たらこスパゲティシシリー風と、セットドリンクバーと、柔らか青豆の温サラダを。

注文して、はっとした。
わたしにもあるではないか!
初めてサイゼリヤに来た9歳のころから、必ず注文し愛し続けたメニューが!

それが、そう。
サイゼリヤ定番メニュー(と、わたしは勝手に思っている)柔らか青豆の温サラダ

何回でも強調して記す。柔らか青豆の温サラダだ。

注文したことのない人もいるかと思うので、どんなメニューなのか説明すると、山盛りのグリンピースがいい感じに茹でられており、そこに刻んだベーコンが混ざっていて、半熟たまごが乗っかっている、ベーコンの塩気とグリンピースの甘み、たまごのトロトロさが絶妙に絡み合う、神の作り賜うたメニューだ。値段は税込199円。


わたしとこのメニューとの出会いは、今から20年近く前まで遡る。
サイゼリヤは、地元には存在しないファミレスで、わたしは当然聞いたことも見たこともないお店だった。
9歳の頃だ、サイゼリヤが地元にできたのは。

ずっと東京で仕事をし、結婚を機に地元に帰って来た父は、「お父さんが東京にいたときよく食べに行っていたお店ができたんだよ!」と、サイゼリヤができてすぐに連れて行ってくれた。

そこで父が頼んだメニューが、そう。
柔らか青豆の温サラダだった。(他にも頼んでいたはずだが忘れてしまった。)

父は、「これが本当においしいんだよ〜。」と、わたしに一口くれたのだが、それはわたしにとって忘れられない瞬間、そう、つまり、一目惚れだったのである。

おいしすぎて、父が頼んだにも関わらず結局全部わたしがもらった。この日以来、わたしはサイゼリヤに来れば必ず柔らか青豆の温サラダを食べている。

父は、自分の好きなメニューを娘が気に入っている様を見て、とても喜んでいた。
今なら、このときの父の気持ちがわかる。
なぜなら、わたしは、サイゼリヤで柔らか青豆の温サラダを頼む人と、出会ったことがないからである。

これまでたくさんの友人知人とサイゼリヤに行ったことがあるが、柔らか青豆の温サラダを頼む人は見たことがないし、なんなら、「それ頼む人いたんだ!」と、驚かれたり、「グリンピース山盛り食べるとか正気じゃない。」と、グリンピース嫌いからは呆気にとられたり。

確かに、グリンピースは子供の嫌いな食材ランキング上位に入っていそうなイメージがあるし、好きな野菜は何?と聞かれて、「グリンピースです!」と、答える人は世界中に一体何人いるのか。
友人たちの気持ちはわかる。
わたしも、父が頼んでいなければ、敢えて頼もうとは思わなかったかもしれない。

しかしである。
サイゼリヤにはメニュー表の他に間違い探しの冊子があるのだが、そこで、「サイゼリヤ特製、柔らか青豆のヒミツ」的なタイトルの特集がされていたのを見たことがある。
こんな特集をするくらいだ、きっとサイゼリヤも推してるメニューに違いないし、きっとわたしのような根強いファンがいるのだ。

そう思い、自分が頼んだら毎回同席している友人知人には一口食べてもらっている。
なぜなら、柔らか青豆の温サラダがサイゼリヤグランドメニューからなくなったら、わたしはきっと泣いて落ち込むからだ。

頼んでくれる人口を増やすためにも、わたしは布教を続けている。

こんなにも愛しているメニューがあったことを忘れていたわたしは、自分をぶん殴りたい気持ちで昨夜の夕食を終えたのだ。
そうしてお店で、即座に開いたお問い合わせフォーム。
柔らか青豆の温サラダについて愛を語らせてもらい、柔らか青豆の温サラダが未来永劫サイゼリヤのグランドメニューに鎮座できるよう、よろしく頼ませてもらおうじゃないか。

そう思ったわたしは、絶望した。


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電話のみ!!!!!!

さすがに恥ずかしい。
良いものを良いと伝えたいけど、これは恥ずかしい。

でも、サイゼリヤから柔らか青豆の温サラダがなくなる日なんて来て欲しくない。

そんな葛藤を抱え、わたしは、電話をできていない。

この投稿が、サイゼリヤの関係者の目に届くのが先か、わたしが腹をくくって電話するのが先か。


神のみぞ知る。




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