泥まみれの英雄
雨の日が好きだ。という人はいるのだろうか?
もしいるのなら話が聞きたい。
私は、晴れてる日の方が断然好きだ。
雲の上は常に晴れている。
どうせなら雲の上で住みたいくらいだ。
雨の日は何をするにもやる気が出ない。
朝、起きて窓を開けて雨だと知った私は、ため息から1日が始まる。
それぐらい雨が嫌いだ。
雨の日のサッカーなど最悪だ。
高校時代に大雨で濡れた土、まるでコーヒーのようなグラウンドの上で寒さに耐えながら、泥まみれになるのを避けて練習していたのを思い出す。
しかし、フィンランドでは「泥んこサッカー選手権」というスポーツがこの国のメジャースポーツとなり人々を賑わしている。
フィンランドの人たちは、泥にまみれたグラウンドでサッカーをするという本来のサッカーとはまた違った文化がある。
いかに泥まみれになることを恐れずにプレーできるかが鍵になってくる。
おそらく、メッシやロナウドのような技術があってもこのグラウンドの前では無力になるだろう。
高校時代の練習試合でこれと似たような出来事を目にしたことがある。
その日は大雨が降っていて、グラウンドはとてもサッカーができる状況ではなかった。
いわゆる泥んこサッカーである。
ましてや、相手チームは中学生。
適当にやって流しとけば勝てるだろう。
はやく帰ってお風呂に入りたい。
そんなことを思いながら試合前のアップを行っていた。
試合が始まると、案の定あっという間に点が入り楽勝ムード。
誰もがこれ以上得点をする気はなく、後は汚れないように泥まみれにならないような無難なプレーをしていた。
ただ、ある1人のチームメイトだけは違った。
その子はサイドバックというポジションだったにも関わらず相手が弱いと汲み取ったのか果敢にオーバーラップを繰り返し攻撃参加をしていた。
試合が終わる頃には、1人で10得点を記録した。
そして、チームメイトの中で唯一、気持ちいいぐらいに泥まみれのユニフォーム姿だった。
正直、相手チームは弱い。
10得点を取っても不思議ではない。
称賛されるべきところはそこじゃない。
誰もが雨の中、泥だらけのグラウンドで汚れることを避けながらプレーをする一方で1人がむしゃらにピッチの中を駆け回り、転び回り、泥まみれになることを恐れずにサッカーを楽しんでいたということだ。
彼が「泥まみれの英雄」になった日である。
当時は、中学生相手に何をここまで頑張るんだと馬鹿にしていた。
しかし、心のどこかで「あー、こいつみたいにはなれないな」と劣等感があったに違いない。
「泥んこサッカー選手権」と彼の考えは似ている。
いかなる状況でもサッカーを楽しむことを忘れてはいけない。
スポーツとは本来、楽しむべきものであり教育や環境に左右されてはいけないものである。
雨が降る日のサッカーはいつも彼の10得点を思い出す.....
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