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海外のホテルから消えようとしているバスタブ

家がまるごと浴室だったら、という妄想を描きながら成長した私は、大のお風呂ラバーである。
1日の終わり、お気に入りの入浴剤を入れて、バスタブに体を沈める時は、至福のひとときだ。
だが、海外に出るとこの時間を楽しめないことが多々。その時、心の底から
「日本のお風呂は素晴らしい」
と思うのだ。

取材で泊まる、最新のブティックホテルみたいなところには、当たり前のようにバスタブがない。
また、部屋にフルサイズのキッチンがついている、リゾート地のコンドミニアムも然り。
そんな部屋に泊まってしまった時のために、私のスーツケースは緊急時にはバスタブになる。
(という冗談をみんなが真に受けるほど、私にとってお風呂は大事なのだ)
いや、でもほんと何度もそれを考えた。
実際は、無駄に広いバスルームで、ここにバスタブ置けるでしょ?と、天に向かって吠えているだけなんだけど。

そこで、自分でホテルを選べるときは、予約サイトの隅々までをチェックして、
バスタブのあるなしを確認する。
まず、条件のところに、「バスタブ付き」にチェックを入れてサーチ。
でも、これを鵜呑みにしてはいけない。情報が更新されていなく、リノベーション後にバスタブがなくなった、というところがあるからだ。
予約サイトで重きを置いて見るのは、実際に「最近」泊まった人の口コミと、投稿写真だ。
写真は色々トリッキーで、バスルームなのに、洗面台のアップ画像や、シャワー用の壁についた水栓が映っていたら、そこはシャワーのみの部屋であることが多い。
また、幅広のシャワーカーテンが写っていても、その奥にバスタブがあるだろう、というのは危険な発想だ。
鏡の画像も拡大してガン見。一部でもバスタブの縁が映っていれば、まあ大丈夫だろう。
そして、部屋の予約をポチる時も、「バスタブのある部屋希望」と備考欄に記入する。

それでも!いざ部屋に着いたらバスタブがなかった、なんてことは結構ある。
だから、チェックインの時は必ず「この部屋はバスタブ付きですか?」と念を押す。
ちなみに、「Bathtub」ってなかなか発音が難しい。
聞き返されると何も言えなくなってしまう人は、メモに書いておいて見せるといい。
(私はそのクチなので、バスタブの絵を描いてみせたこともある)

そうまでしてやっとありつけたバスタブの、新たな難関が一つ。
お ふ ろ の 栓 が な い !
これは、結構あることで、バスタブの有無より重大な問題だ。

ええ。私は戦いましたよ。ビニール袋に水を入れて栓にしたり、排水溝にコップを被せてみたり。
でも、ある時取材同行のおじさんが、
「飛行機の中での足のむくみには、ゴルフボールを踏むと良い」
と言っていたとき、ハッと閃いた。
「ゴルフボール!」
そう、これこそ我が救世主!とばかり、おじさんが足の裏をグリグリしたゴルフボールをぶんどって、排水溝に当てたらドンピシャリ!
以来、そのゴルフボールは私の「旅の必需品」に加わった。
ゴルフボールのポテンシャルは想像以上のものがある。どんなサイズの排水溝にも割とフィットしてくれて漏れもない。ただあまりにもフィットしすぎると、お湯を抜く時が大変だったりもする。

異国の地で、排水溝に詰めたゴルフボールを満身の力を込めて抜く時、
「私は何をやっているんだろう?」
と、ふと考えてしまう。
客観的に考えると滑稽の極みだ。
あえて正当化するならば、
「私は世界初のお風呂アンバサダーだ!
日本のお風呂を世界に普及するために、世界中のバスタブにお湯を張るぞ!」
と言い切ることだろう。
でも、海外に行くとつくづく日本のお風呂の素晴らしさに気がつく。
だって、今はどんな小さな住宅にもバスタブがあって、毎日あったかいお風呂にドボンと浸かれる。当たり前のようなことが、海外では当たり前ではない。

風呂好きとしては、そんな日本のお風呂の素晴らしさを、世界に発信できたら良いなと思うのだ。

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