M.S氏の選挙カーを目撃した日

あれは、7月4日のことだった。

私は、子供と一緒に公園に向かうため、
ベビーカーを押していた。

すると、そこに一台の選挙カー。
都知事選の投票日前日、最後の投票呼びかけだろう。
問題は、その候補者名。

M.S。
コリア系をはじめとするマイノリティーへの攻撃発言を
繰り返してきた、大日本帝国崇拝派の政治活動家だ。

排除対象のマイノリティーに属する私としては、
何とも言い難い人間。

選挙カーはどうしようもないもの。
一応は合法的に出馬した人間。
被選挙権は人民の権利。

私は、過ぎ去っていく選挙カーを無視して、
そのまま歩こうと思ったとき、
ベビーカーの中から声が聞こえた。

「パパ、あれなぁに?」
息子の声だ。
息子は、大きな声を出して過ぎていった
大きな車が純粋におもしろかったようだ。

私は、
「選挙カーだよ。」
「選挙に投票してね、ってお願いしてるんだよ。」と、
当たり障りのない答えでその場を濁した。
嘘は言っていない。
でも、その後ろにある、どす黒い何かを子供には見せないよう。

あれから3週間たった。
M.S氏は落選し、
東京がこの人物の統治下に入ることはなかった。

それでも時々私は考える。
あのとき、私はなんと息子に答えれば良かったんだろう。
あのとき私が隠そうとした、どす黒い何かを、
いつかは話さなければならない日が来るのだろうかと。

願わくば、息子が大きくなる日には、
そのようなどす黒い何かにおびえない日が来ますように。

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