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海外高度人材活用のススメ〜vol.1 採用編〜

「成長」と「成熟」のはざまで

赤茶けた屋根に白壁の家々、ニョキニョキと伸びるビル群ー飛行機が着陸に近づくにつれ見えてくるこの景色は、インドネシア、フィリピン、タイのどこを訪れても同じで、私はいつも記憶が混ぜこぜになるような既視感と、抑えがたい高揚感を覚えます。
地上に降り立つと東南アジア特有の咽せるような熱気と埃っぽさ、排気ガスの匂いがすぐさま目と鼻を突き、圧倒的な物量で流れゆく車とバイク。一歩室内に足を踏み入れるとガンガンに空調の効いた室内。「あー来た来た!」と身体中に活力がみなぎる感覚。コロナの空白を挟んで街はいくらか浄化され、急速な物価上昇が進んでもどこかあっけらかんと自分の時間を生きる人々。
私はこの「成長」のうねりを肌で感じ、東南アジアの現在地をアップデートするため、ここ数年、ジャカルタ、マニラ、バンコクその他いくつかの主要都市を定期的に訪れています。

一方で日本に帰ると、適度な車間距離を置き、空気を最小限に汚しながら走るハイブリッド車、野山の美しい自然、張り巡らされた公共交通網、その中をきちんと列をなして進む人々。そのすべてが整然と秩序だったさまにほっと安堵を覚えるのも事実です。
いつまでも高度成長期の残滓に生き、「失われた30年」と揶揄して久しい日本ですが、そうだ、私たちはこの掛け替えのない「成熟」を手に入れたんだと改めて気づかされます。

東南アジアの「成長」と日本の「成熟」ーこのはざまに私たち経済人にとっての大きなビジネスチャンスが広がっています。日本のアニメや食、ものづくり技術、整備されたインフラに強い憧れを抱く東南アジア、片や街に溢れる若者たちの姿と伸びしろしかない経済発展に羨望を抱く日本、お互いに無い物ねだりの両者の間で「成長」と「成熟」を等価交換することで、この先の10年間のチャレンジをしていきたいと私は思っています。この記事では、海外高度人材活用の当社の取り組みを何回かに分け、あくまで一例として皆様に共有していきます。

自己紹介

まず初めに自己紹介。
国立大学文学部卒のド文系(しかも2年留年)。
就職氷河期の真っ只中に就活もせぬまま卒業し、アルバイトや派遣社員など転々としていたところ友人の父親の会社に拾われ、人事労務の仕事に約7年間従事。その間に神戸に転勤し、その地で知り合った現在の妻と結婚。
30代前半で、兵庫県尼崎市で70年続く義父が経営する税理士事務所に転職。税理士を目指すも受からず、その後完全に挫折。
税理士事務所に入って一年経った頃に、併設法人として2013年1月に株式会社eftaxを立ち上げ、そこでデータ分析やAI・機械学習モデル開発の事業をスタートしました。とは言え、始めた当初はプログラミングも数学・統計の知識も皆無。私に唯一できるのは、”できる人を連れてくること”でした。
尼崎の事務所の会議室を借り、AIや機械学習の無料勉強会を土日に開催し、そこに集まった最新の知識獲得に貪欲なITエンジニアや理系の大学院生たちから徐々に情報を仕入れながら、一人目の社員とも出会い、データ分析サービスを立ち上げていきました。と、この話を続けるとキリがないので、すっ飛ばして本題の海外高度人材活用の話に入ります。

海外高度人材活用のきっかけ

海外高度人材活用に着手したのは、2019年1月に入ってからのことでした。
2018年4月に大阪淀屋橋に20名規模のコワーキングスペース(現在の弊社・大阪オフィス)を開設し、そこでAI・機械学習のセミナー・勉強会を継続していたところ、AIESEC JAPAN(アイセック・ジャパン)という海外インターンの受入・送出し事業を行う学生団体の大阪大学委員会のメンバーが訪れ、海外インターン生の受け入れを打診されました。
当時AI・IT人材は採用難で、国内のみの採用活動に限界を感じていた私は、渡に船とその話に乗っかり、2019年2月にまずトルコと中国から1名ずつインターン生を受け入れ(モバイル開発1名、マーケティング1名)。同年8月にインドネシア、シンガポール、ブラジルから計4名(フロントエンド2名、バックエンド1名、事業開発1名)を受け入れ、インターン期間中に作ってもらったWebアプリケーションの開発を継続するため、帰国後もパートタイムでリモート雇用しました。結果的にこの年の6名のうち2名を本採用し、卒業後ビザ取得(技術・人文知識・国際業務)し、正社員として日本に呼び寄せることにもなりました。
ここで2014年当時の私と2024年現在の私をわかりやすく対比します。

2014年当時

  • 尼崎の税理士事務所(所長先生1名、職員約20名)に毎日定時出勤(9〜18時)

  • 中小企業のクライアント10〜20社を担当

  • 午前1社・午後1社を電車・車移動で現地訪問し、会計監査業務を行い、社長に対面で報告

  • 所内にいるときは証憑整理や会計入力などを行う。

2024年現在

  • フルリモート・フレックスタイム制

  • 社内公用語は英語

  • 日本人以外に、インドネシア、タイ、トルコ、スーダン、モロッコ、エジプト、ナイジェリアのエンジニアやPMが在籍し、国内外で稼働

  • Google Workspace、Github、Backlogなどデジタルツールを活用し、オンラインで協働

  • 過去5年で28カ国・67名の海外インターン生を受け入れ

この10年で仕事の内容もワークスタイルも大きく変わりました。今でこそ「社内公用語は英語」とドヤ顔で書いてますが、最初の一人目を迎え入れた時点では英語を話したことなど一度もなかったし、今でもさして上達もしていません。Google翻訳やDeepL翻訳を駆使すれば概ねコミュニケーションは取れます。そしてお互いに英語は第二言語の者同士、発音の巧拙は度外視し、伝えようという熱意さえあれば大体のことは伝わります。この続きはまた各種ツール編で。

当社の主な海外高度人材の採用ルート

以下、当社が過去5年間で色々と試してきた海外高度人材の主な採用ルートをご紹介します。

1. JICAの留学生のインターン生受け入れを通じた採用

JICAではイノベーティブアジア、ABEイニシアティブなど複数の留学生プログラムが実施されています。そのインターン事業を通じて、当社でも多数の留学生インターンを受け入れ、何名かの採用につなげてきました。
既に日本に住んでいるので採用手続きが迅速・日本での生活に慣れている・日本の大学とのつながりがあるなど、多くの利点があります。JICAのインターンご担当の方々が親切にサポートしてくださるのも大きなアドバンテージです。

2. 経済産業省・国際化促進インターンシップ事業を通じた採用

こちらは経済産業省の行うインターンシップ事業です。参加倍率が高く、その中から厳選された優秀なインターン生とマッチングしてくれます。過去3年にわたって参加し、この事業を通じて2名の正社員採用につながりました。事務局が事前研修や参加企業同士の交流会など綿密なプログラムを用意してくれており、海外人材採用に不慣れな企業様も入りやすいのが特徴です。

3. AIESEC JAPANのインターンシップ受け入れを通じた採用

先ほどもご紹介したAIESEC JAPANという学生団体が海外インターンシップの受け入れ支援を行っています。当社はこの大阪大学委員会の紹介で初めて海外人材受け入れを実施しましたが、海外インターンだけでなく、AIESECの日本の学生メンバーとのネットワークができたことも当社にとって大きな財産となっています。今でもAIESEC出身の日本人インターン生たちが当社で活躍してくれています。

4. JETRO・高度外国人材関心企業情報(OFPリスト)からの問い合わせ

知る人ぞ知る、このリストは非常にオススメです。このリストに掲載されていることで海外の優秀な学生が当社を発見し、直接インターン参加の問い合わせをしてきてくれます。自分でわざわざ探して申し込んできてくれるので、主体性に富んだ(そして日本大好きな)学生さんと巡り会えます。このサイトを通じてモロッコ人のデータサイエンティスト1名の採用につながり、2024年もフランスとトルコから1名ずつコンピュータサイエンス学科の学生さんが3ヶ月間インターンシップで来日してくれます。

5.LinkedInの求人広告

急いでいるならこれ。今すぐ即戦力人材をソーシングしたい、そんなとき当社ではLinkedInを活用します。東南アジアがターゲットであれば、かなり安い求人コストで採用活動ができます。近年インドネシアではユニコーン企業で大規模なレイオフがあり、大量のITエンジニアが市場に流出しています。LinkedInで求人広告を出すと、昨年当社が募集した際には3日間で100名前後の応募が来ました。ただし、人材のクオリティは玉石混交で見極めが大事。中にはCVにかなり経歴を盛って書かれる方もおられるので、採用にはしっかりと時間を掛け、スキルチェックすることをお勧めします。特に保有スキルの欄にたくさんのプログラミング言語を並べている方は要注意。ちょっとかじった程度で実務経験がなくても平気で「できます」と大言壮語される方も。。。

6.社員のリファラル採用

何名か実際に採用し軌道に乗り出したら、あとは定番のリファラル採用。優秀で信頼できる社員にその友人や後輩を紹介してもらい、次なる採用へとつなげていくのが一番コストも掛からず確実です。当社では、インドネシアであればバンドン工科大学やブラウィジャヤ大学、日本であれば金沢大学、大阪大学、京都大学の留学生など、既に採用実績がある大学のつながりを通じて優秀な社員を紹介してもらっています。

海外高度人材採用を成功に導くために

さて、ここからは当社が海外高度人材採用を成功に導くため、心掛けているポイントをご紹介します。

その1・インターンから始める

当社ではまずはインターンを経て採用につなげるケースがほとんどです。インターン期間中にプロジェクトへの取り組み方やコミュニケーション能力・協調性、タスクへのコミットメントの高さを見極めます。特にフルリモート・フレックスタイム制である当社の場合、自律的に物事を進める主体性が鍵となります。
お互いにミスマッチを避けるため、インターン期間を通じてしっかりとカルチャーフィット・オンボーディングを行い、その後のパートタイム雇用や正社員採用の可否を判断します。

その2・日本語縛りを捨てる

海外人材の求人において、多くの場合、「日本語N2以上のスキルを有すること」という採用条件を目にします。しかしながら、日本語を話せて、かつ、高いエンジニアリング能力も保持する人材にはめったにお目にかかることができません。日本語という条件を外すことで、人材採用の分母が一気に100倍、1,000倍へと広がります。
今はDeepL翻訳などを活用すれば言語の壁はあまり感じませんし、本国でトップ5%に入るような優秀層の海外高度人材を採用すれば、一を聞いて十を知るくらいの地頭の良さがあるので、多少言葉足らずでもこちらの意図を汲んで補完してくれます。
日本に来ている東南アジア圏の外国人留学生たちはほとんどこの層に属するにも関わらず、修士・博士過程修了後、日本語が話せないが故に日本での就労機会を得られず本国に帰国するか、シンガポールや欧米など他の先進国に移住してしまいます。できることなら大好きな日本で就職したかったという声をよく耳にします。これは日本にとって大きな機会損失であると言わざるを得ません。

その3・人として付き合い、信頼を積み重ねる

当たり前のことですが、お互い人と人として付き合い、信頼を積み重ねることが基本です。性悪説に立って一部のタスクだけ切り出し、部分的な仕事を任せて、あとは日本人が管理するといった体制を当社は取っていません。もちろん情報セキリティ上のリスクマネジメント体制の構築は必要不可欠ですが、可能な限り情報共有し、日本人・外国人の区別なく同じ立ち位置で仕事を進めています。
国籍が違い、言語も文化も異なるので、当然綺麗ごとばかりで済むわけではありません。時に価値観や考え方の違いで誤解や齟齬が生じたり、最後には袂を分かって会社を去っていく(逆に去ってもらう)ケースもあります。ただ、こちらが信頼をもって接すれば、相手もきちんと信頼で返してくれます。何よりも色々な国の人々と協働し、多様な文化や価値観に触れることは自分自身の人生を豊かにしてくれる喜び以外の何ものでもありません。

本記事を通じて、私自身が実地に取り組んできた海外高度人材活用のノウハウをお伝えし、そんなにハードルは高くない・うちでもできそうと思っていただければ幸甚です。まずは「最初の一人目を採用すること」ーそこからすべてが始まります。

2024年4月、インドインドネシア・マランで元社員(左から二人目)の結婚式に参列。一番右は現在も在籍するバックエンドエンジニア。インドネシアでは、バティックという衣装が正装とされる。

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3つの柱で、日本国内におけるIT人材不足の解消を目指します。

①外国人IT人材のリモート派遣
②バイリンガル人材によるコミュニケーション円滑化
③リモートワーク環境導入の支援

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