人新世の資本論 まとめ 3

ジョセフ・E・スティグリッツ

ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・E・スティグリッツは、行きすぎたグローバル化や、現在の富の偏在、大企業による市場支配を厳しく批判していることで有名。

スティグリッツは自由市場信仰を批判し、公正な資本主義社会を実現するためには、労働者の賃上げや富裕層や大企業への課税、さらには独占の禁止を強化する必要があると述べている。民主的な投票によって、法律と政策を変更すれば、経済成長が回復し、万人が豊かなミドルクラスになれる「進歩的な」資本主義が可能だというのである。


日本社会の「失われた30年」

資本主義にとって、成長できない状態ほど最悪なものはない。資本主義のもとで成長が止まった場合、企業はより一層必死になって利益をあげようとする。ゼロサム・ゲームのなかでは、労働者の賃金を下げたり、リストラ・非正規雇用化を進めて経費削減を断行したりする。
国内では階級的分断が拡張するだろうし、グローバル・サウスからの掠奪も激しさを増していく。
実際、日本社会では、労働分配率は低下し、貧富の差はますます広がっている。ブラック企業のような労働問題も深刻化している。
そして、パイが小さくなり、安定した仕事も減っていくなかで、人々はなんとか自分だけ生き残ろうと競争を激化させていく。
「上級国民・下級国民」という言葉が流行語になったことからもわかるように、社会的分断が人々の心を傷つけている。


量(成長)から質(発展)へ

量(成長)から質(発展)への転換だ。プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)に注意を払いつつ、経済格差の収縮、社会保障の拡充、余暇の増大を重視する経済モデルに転換しようという一大計画。


新世代の脱成長論

労働を抜本的に変革し、搾取と支配の階級的対立を乗り越え、自由、平等で、公正かつ持続可能な社会を打ち立てる。新世代の脱成長論である。

<コロナ死者(20/11/06)>
日本 : 1,806人
アメリカ : 235,000人
ブラジル : 162,000人
インド : 125,000人
イギリス : 48,120人
フランス : 39,037人
ロシア : 29,887人


「コロナ後」 成長へ環境投資
首相、経済対策を指示へ 持続化給付金見直し探る(日経 20/11/10)

菅義偉首相は10日の閣議で、新型コロナウイルスの感染防止と経済活動を両立させるための追加対策を指示する。9日の自民党役員会で表明した。デジタルや脱炭素の技術革新に役立つ投資を柱の一つに据える。日本は米欧諸国よりも感染者数が抑制されており、給付金といった所得補填政策の見直しを探る。

首相は9日の経済財政諮問会議で、「あらゆる手段を総動員して早期に日本経済を成長軌道に戻していく対策を考える」と述べた。温暖化ガス排出量「2050年ゼロ」目標と経済成長の相乗効果を生み出す「グリーン成長」に向けた施策の検討を指示した。

グリーン投資は米欧の流れに沿う。米大統領選で勝利宣言したバイデン前副大統領は2兆ドル(約207兆円)の環境インフラ投資を公約に掲げた。欧州連合(EU)は7500億ユーロ(約92兆円)の復興基金のうち大半を環境に充てる。

日本は対策を裏付ける20年度第3次補正予算で環境分野に限らず、ポストコロナを見据えた経済構造の変革に力点を置く。通信規格「5G」やポスト5Gといったデジタル分野の開発を支援する。中小企業に生産性の高い事業への転換を促す支援も盛り込む。与党にはインフラ修繕なども含め、30兆円規模の対策を求める声が出る。

コロナの緊急事態宣言下で編成した第1次、第2次補正予算は所得補填が中心だった。1人10万円の特別定額給付金に12兆円を充てた。中小企業の減収を補填する持続化給付金は約5.3兆円の支出を見込む。12月に決定する第3次補正ではこうした給付金第2弾を見送る方向だ。

企業の雇用維持を後押しする「雇用調整助成金」の特例措置は21年1月以降も延長しつつ、助成規模は縮小する。当初予定より延長する国内旅行の支援策「Go To トラベル」も補助内容は厳格化する。

日本の平時モードへの移行は米欧との比較で際立つ。米国も追加の経済対策を打ち出す見通しで、民主党は2兆2千億ドル(約230兆円)を主張する。目玉になるのが大人1人当たり最大1200ドルを支給する現金給付第2弾だ。失業給付の積み増しや中小企業の雇用維持、航空会社向けの給与補填の施策をそれぞれ延長する。

欧州はロックダウン(都市封鎖)への対応に追われる。2日から飲食店や娯楽施設などを閉鎖したドイツでは営業停止の企業や団体に前年同月の売上高75%を支給する支援を導入した。英国は終了予定だった休業者の給与8割補填を21年3月まで一転して延長した。

政策の違いはコロナの感染状況による影響が大きい。過去1週間の新規感染者数は1日平均で米国が10.9万人、英国は2.2万人に上った。日本は920人。首相は「爆発的な感染は絶対に防ぐ」と語る。足元では増加傾向にあり、第3次補正では感染防止策にも目配りする。

日本が収入補填に慎重なのは後ろ向きな財政事情もある。国際通貨基金(IMF)の集計によると、財政支出や金融支援を含む日本のコロナ対策はすでに国内総生産(GDP)比35%に上る。米国の14%を上回り、30%台後半のドイツやイタリアと並ぶ高水準だ。日本の政府債務残高は20年にGDP比266%と米国のほぼ2倍に達する。

2019年度実質GDP / 533.5兆円
日本の政府債務残高は20年にGDP比266% / 1,387兆円


<コモン>という第三の道

<コモン>は、「アメリカ型新自由主義」と「ソ連型国有化」の両方に対峙する「第三の道」を切り拓く鍵だと言っていい。
つまり、市場原理主義のように、あらゆるものを商品化するのでもなく、かといって、ソ連型社会主義のようにあらゆるものの国有化を目指すのでもない。
第三の道としての<コモン>は、水や電力、住居、医療、教育といったものを公共財として、自分たちで民主主義的に管理することを目指す。


<アソシエーション(相互扶助)>

マルクスは<コモン>が再現された社会を<アソシエーション(相互扶助)>と呼んでいた。
マルクスは将来社会を描く際に、「共産主義」や「社会主義」という表現をほとんど使っていない。
代わりに使っていたのが、この<アソシエーション(相互扶助)>という用語なのである。
労働者たちの自発的な<アソシエーション(相互扶助)>が<コモン>を実現するというわけだ。


<福祉国家>

<アソシエーション(相互扶助)>から生まれた<コモン>を、資本主義のもとで制度化する方法の一つが、「福祉国家」だったのである。
しかし、1980年代以降、新自由主義の緊縮政策によって、労働組合や公共医療などの<アソシエーション(相互扶助)>が次々と解体もしくは弱体化され、<コモン>は市場へと呑み込まれていった。


<共産党宣言(マルクス/エンゲルス)(1848年)の要約>

資本主義の発展とともに多くの労働者たちが資本家たちによって酷く搾取されるようになり、格差が拡大する。
資本家たちは競争に駆り立てられて、生産力を上昇させ、ますます多くの商品を生産するようになる。
だが、低賃金で搾取されている労働者たちは、それらの商品を買うことができない。
そのせいで、最終的には、過剰生産による恐慌を発生してしまう。
恐慌による失業のせいでより一層困窮した労働者の大群は団結して立ち上がり、ついに社会主義革命を起こす。
労働者たちは解放される。


<進歩史観>

確かに、資本主義は、一般的に労働者の困窮や自然環境の破壊を引き起こすかもしれない。
けれども、他方で資本主義は、「競争」によって「イノベーション」を引き起こし、「生産力」を上げてくれる。
この「生産力の上昇」が、将来の社会で、みなが豊かで、自由な生活を送るための条件を準備してくれるというわけだ。


<進歩史観にはある2つの特徴>

1. 生産力至上主義
資本主義のもとで生産力をどんどん高めていくことで、貧困問題も環境問題も解決でき、最終的には、人類の解放がもたらされるという近代化賛美の考え方である。

2. ヨーロッパ中心主義
生産力の高い西洋が、歴史のより高い段階にいる。それゆえ、ほかのあらゆる地域も西洋と同じように資本主義のもとでの近代化を進めなくてはならない。


マルクスによれば

人間はほかの動物とは異なる特殊な形で、自然との関係を取り結ぶ。
それが「労働」である。
労働は「人間と自然の物質代謝」を制御・媒介する。人間に特徴的な活動なのである。

資本は、人間も自然も徹底的に利用する。人々を容赦なく長時間働かせ、自然の力や資源を世界中で収奪しつくすのだ。
もちろん、新技術のイノベーションも、人間や自然の利用をできるだけ効率よく進めるための手段として開発・導入される。
その結果、効率化のおかげで、人々の生活は、これまでとは比較にならないほど豊かになる。
ところが、ある一定水準を超えると、むしろ否定的影響の方が大きくなっていく。資本は、できるだけ短期間に、より多くの価値を獲得しようとする。そのせいで、資本は人間と自然の物質代謝を大きく攪乱(かくらん)してしまうのだ。
長時間の過酷な労働による身体的・精神的疾患も、この攪乱(かくらん)の現れであり、自然資源の枯渇や生態系の破壊もそうである。


「資本論」は、物質代謝の「攪乱(かくらん)」や「亀裂」という形で、資本主義が持続可能な生産のための条件を掘り崩すことに警鐘を鳴らしている。
資本主義は、人間と自然の物質代謝を持続可能な形で管理することを困難にし、社会がさらに発展していくためには足枷になるというのである。
無制限な資本の利潤追求を実現するための生産力や技術の発展が、「掠奪する技術における進歩」にすぎないことをはっきりと批判しているのである。

<再選に失敗した歴代アメリカ大統領>
WW2(第二次世界大戦)後は4人

1. ドナルド・トランプ(第45代、共和党、2016-2020)
2. ジョージ・H.W.ブッシュ(父)(第41代、共和党、1989-1993)
3. ジミー・カーター(第39代、民主党、1977-1981)
4. ジェラルド・フォード(第38代、共和党、1974-1977)
ーーーーーー<以下、戦前>
5. ハーバート・フーバー(第31代、共和党、1929-1933)
6. ウィリアム・ハワード・タフト(第27代、共和党、1909-1913)
7. ベンジャミン・ハリソン(第23代、共和党、1889-1893)
8. グローバー・クリーブランド(民主党、第22代、1885-1889 / 第24代、1893-1897年)
9. マーティン・バン・ビューレン(第8代、民主党、1837-1841)
10. ジョン・クインシー・アダムズ(第6代、民主共和党など、1825-1829)
11. ジョン・アダムズ(第2代、連邦党、1797-1801)


メソポタミア、エジプト、ギリシャなどの古代文明の崩壊過程

それらの文明崩壊に共通した原因は、過剰な森林伐採のせいで地域の気候が変化し、土着の農業が困難になってしまったことによる。
たしかに現在あの一帯は、乾燥しているが、かつてはそうでなかった。自然の乱開発のせいで肥沃な大地を失ってしまったのである。


持続可能な経済発展を目指す「エコ社会主義」へ

資本主義のもとでは持続可能な成長は不可能である、自然からの掠奪を強めることにしかならない。

ロシアの共同体が、資本主義的発展を経由しなくて良いどころか、コミュニズム的発展を西洋よりも先に


マルク協同体(持続可能性と社会的平等は密接に連関)

持続可能な農業を営んでいる協同体
ゲルマン民族は、土地を共有物として扱っていた。土地は誰のものでもなかったのだ。だから、自然からの恩恵によって、一部の人が得しないよう、平等な土地の割り振りを行っていた。
富の独占を防ぐことで、構成員の間に支配・従属関係が生じないように注意していた。

マルクスが求めていたのは
無限の経済成長ではなく、大地=地球を「コモン」として持続可能に管理することであった。

経済成長をしない循環型の定常型経済であった。

マルクスが最晩年に目指していたコミュニズムとは、平等で持続可能な脱成長型経済なのだ。

・マルクスが目指していたもの
1840年代〜1850年代
1. 生産力至上主義
「経済成長 あり」「持続可能性 なし」
1860年代
2. エコ社会主義
「経済成長 あり」「持続可能性 あり」
1870年代〜1880年代
3. 脱成長コミュニズム
「経済成長 なし」「持続可能性 あり」


マルクスによれば

コミュニズムにおいては、貨幣や私有財産を増やすことを目指す個人主義的な生産から、将来世界においては、「協同的富」を共同で管理する生産に代わるというのである。


黄色いベスト運動

気候変動対策として化石燃料税を導入しようとした「意識の高いエリート」マクロン大統領に対して、トラック運転手や農民といった低所得者層が反発したという図式でしばしば理解されている。
マクロン大統領が批判されたのは、化石燃料税を引き上げながらも、二酸化炭素排出量の多い富裕層に対する富裕税を削減したからであり、さらには、地方の公共交通機関を削減し、自家用車必須の生活を人々に強いてきたからである。


ジオエンジニアリング

いろいろ種類があるが、共通する特徴は、地球システムそのものに介入することで、気候を操作しようとすることにある。
成層圏に硫酸エアゾロルを撒いて太陽光を遮断し、地球を冷却しようとするもの、太陽光を反射する鏡を宇宙に設置するもの、海洋に鉄を散布して水中を肥沃化させ、植物プランクトンを大量発生させることによって光合成を促進するものなど、様々な技術が考案されている。


コモンズとは、番人にとっての使用価値である。

万人にとって有用で、必要だからこそ、共同体はコモンズの独占的所有を禁止し、協同的な富として管理してきた。商品化もされず、したがって価格をつけることもできなかった。
ところが、なんらかの方法で、人工的に希少性を作り出すことができれば、市場はなんにでも価格をつけることができるようになる。
土地でも水でも、本源的蓄積の前と後を比べてみればわかるように、「使用価値(有用性)」は変わらない。コモンズから私的所有になって変わるのは、希少性なのだ。
希少性の増大が、商品としての「価値」を増やすのである。

EX.例えば、みんながフェラーリやロレックスを持っていたら、スズキの軽自動車やカシオの時計と変わらなってしまう。
フェラーリの社会的ステータスは、他人が持っていないという希少性にすぎない。
逆に言えば、時計としての「使用価値」は、ロレックスもカシオも全く変わらないということである。
EX.「満たされない」という希少性の感覚こそが、資本主義の原動力なのである。


ネタニヤフ氏がサウジ訪問 イスラエル報道、米と3者会談か (日経 20/11/24)

【カイロ=久門武史】イスラエルのメディアは23日、ネタニヤフ首相が22日にサウジアラビアを極秘に訪れ、ムハンマド皇太子と会談したと一斉に報じた。国交はなく、事実なら訪問が公になるのは初めて。イスラエルとアラブ諸国の国交正常化が進むなか、アラブの「盟主」サウジが追随するかが焦点になっている。

イスラエルは今夏以降、アラブ首長国連邦(UAE)バーレーンスーダンと国交正常化で合意した。仲介したトランプ米政権は他のアラブ諸国に同調を促している。

サウジは2002年、アラブ諸国とイスラエルの和平案を提唱した経緯がある。イスラエルが1967年の第3次中東戦争で占領した地域から全面撤退し、パレスチナ国家の樹立を認めることを条件とした。

サルマン国王はこの原則を重視しパレスチナに寄り添う姿勢を示すが、「脱・石油」改革を率いる実力者ムハンマド皇太子はイスラエルとの関係改善に前向きとみられている。共通の脅威とみなすイランへの対抗で、イスラエル側と接近してきたとの見方が強い。

サウジはイスラム教の聖地を抱え、アラブのリーダーを自任する。仮に国交正常化に踏み出せば、静観の構えだったアラブ諸国が相次いで同調する可能性がある。サウジと親密なトランプ政権は、イスラエルと国交を結ぶ国の拡大に重ねて意欲を示している。


中ロ「インド太平洋」反対
東アジア首脳会議、成果文書巡り(20/11/25 日経)


【ジャカルタ=地曳航也】11月中旬にオンラインで開かれた東アジア首脳会議(議長国はベトナム)の成果文書をめぐり、中国とロシアが東南アジア諸国連合(ASEAN)によるインド太平洋構想「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」に関する文言を削除するよう求めていたことがわかった。ASEANは文書への記載を見送った。

中国の海洋進出に対しては別途、日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国が「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想の下、強く警戒している。類似の文言が国際会議の公式文書に入ることでFOIPの既成事実化が進むことを中国は恐れたとみられる。同様に米国と緊張関係にあるロシアが、中国に同調した可能性はある。

日米中ロやASEANなど18カ国が参加する東アジア首脳会議は14日、5つの成果文書を採択した。このうち参加国の関係強化を目指す「会議15周年に関するハノイ宣言」の事前調整で、中ロは文言に注文をつけた。

ASEAN外交筋によると、ASEANはハノイ宣言に2019年策定のAOIPを明記しようとした。だが中国はFOIPを持ち出して「インド太平洋構想は日米豪印による中国の封じ込めだ」と主張。ロシアも「インド太平洋という言葉は存在しない」と訴えた。

AOIPはASEANが「利害が競合する戦略的な環境の中で、誠実な仲介役であり続ける」と明記。インド太平洋地域の情勢安定のため、ASEANが中心的役割を果たす姿勢を打ち出した。

成果文書の採択には18カ国の首脳の合意が必要だった。日米豪印などは同宣言にAOIPの文言を入れることを支持していた。一方、20日に公表された議長声明は、中国と南シナ海で領有権を争う議長国ベトナムの裁量が働くこともあり、AOIPを盛り込んだ。会議から公表まで時間がかかっており、調整が長引いたとも考えられる。
















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