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社内研修で使える【身体拘束は本当に必要か?!】について

こんにちは、とも(@tomoaki_0324)です。

今回は、身体拘束は本当に必要ですか?という内容についてお伝えします。

☑ 筆者(とも)

記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。

日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。

高齢者虐待防止又は身体拘束廃止研修の資料として役立つ内容になっています。

ぜひ最後まで目を通してみてください。


身体拘束は本当になくせないのか

「身体拘束は本人の安全確保のために必要じゃないの?」
「 スタッフ不足で常に見ているわけにはいかないから、身体拘束廃止は不可能ですよ」 といった考え方はありがちです。
 
でも実はこうした問題は、職員の工夫によって改善することが大いに可能です。

"事故防止"という観点

「身体拘束は本人の転倒や転落事故を防ぐ面から必要だと思う」という意見は多いですが、身体拘束による事故防止の効果は必ずしも明らかでなく、逆に、身体拘束によって無理に立ち上がろうとして車いすごと転倒したり、ベッド柵を乗り越え転落するなどの事故の危険性の方が高いです。
 
そして何よりも問題なのは、身体拘束によって本人の筋力は確実に低下し、その結果、体を動かすことすらできない寝たきり状態になってしまうことです。
 
仮に身体拘束によって転倒が減ったとしても、それは転倒を防止しているのではなく、「本人を転倒すらできない状態にまで追い込んでいる」と考えることもできます。
 
私たちは介護現場で働く限り、事故防止の観点は必須です。
 
でもその方法は"身体拘束"だけではありません。
 
まずは、転倒や転落を引き起こす原因を分析し、それを未然に防止するように努めることが先決です。
 
例えば、夜間徘徊による転倒の危険性のある場合には、適度な運動によって昼夜逆転の生活リズムを改善することで夜間徘徊そのものが減少する場合も多いです。
 
そして事故を防止する環境づくりも大切です。
 
入所者やご利用者の動線にそって手すりをつける、足元に物を置かない、車いすを改善する、ベッドを低くするなどの工夫によって、転倒や転落の危険性は相当低下します。

"スタッフ不足"という観点

また身体拘束を廃止できない理由としてよく出るのが「スタッフの不足」。
 
この問題を議論する前に、まずは「私たちはどのような介護をめざすのか」を具体的に明らかにすることが先決です。
 
その理念から、身体拘束廃止に果敢に立ち向かう決意を責任者や職員全体で行うことが必要です。
 
少人数の職員体制でも、身体拘束を廃止している施設や病院は多くあります。
 
そうした介護現場では、

  • 食事の時間帯を長くすることで各人のペースで食べられるようにして自力で食べられる人を増やす

  • トイレ誘導を行いオムツを減らす

  • シーツ交換作業に時間がかからないようなシーツの改善

 
などさまざまな工夫によってケアの方法を改善し、身体拘束廃止を実現しています。
 
一度そのような施設を見学してみるのも良いかもしれません。

身体拘束をめぐる各国の努力

身体拘束が問題となっているのは日本だけではありません。
 
米国においても身体拘束は大きな問題でしたが、身体拘束に対する規制を実施してから、事態が改善されつつあります。
 
また、英国ではこの20年間近く身体拘束は規制され、ほとんど行われていません。
 
ペンシルベニア大学のEvans博士、Strumpf博士らは身体拘束に対する以下のような一般的な問題に対して、研究文献を用いて反証しています。

問題1:老人は転倒しやすく転倒すると大きなけがになってしまうので、拘束す今べきである。

ここでは、身体拘束によって転倒事故が逆に死亡事故などに重大化したことを報告した文献をあげています。
さらに、「看護者の『身体拘束は効果的である』という考え方が、身体拘束という行為に直結する」とも述べています。
例えば、身体拘束しない方法を教育されているスコットランドの看護者はほとんど身体拘束はしていません。
身体拘束に対する考え方は、その看護者の経験、価値観、高齢者に対する姿勢及び受けた教育により形成されます。
また、身体拘束によって生じる弊害を多くの文献を用いて説明され「弊害が大きいと知りながら身体拘束する、という看護者の道徳とは何であろうか」とも述べています。

問題2:拘束しても老人にはそんなに苦痛ではない。

Evans博士、Strumpf博士が1998年に行った、拘束された経験のある高齢者へのインタビューがあります。
「私は自分が犬になったように感じ、夜中、泣き明かしました。この経験を話すだけで泣けてきます。」スコットランドの看護者の人員配置は米国と同じであるにもかかわらず、米国と比較して拘束を行っている割合が低いことや、ケアスタッフを増やすことなく拘束を減らした例も多くの文献で示されています。
また、拘束された患者のほうが観察の時間が増えて、結果的に看護の必要度が増加し、ケアの費用も多くなるという研究結果もでています。

このように、スタッフが足りないから拘束するというのは、逆に人員不足に拍車をかけることになる可能性を秘めています。

おわりに

私の働く施設でも「これは身体拘束にあたるのか、どうなのか?!」というケースはたびたび生じます。
 
例えば、

  • 車いす座位では座位姿勢が不安定で、前にずり落ちてくる為、ベルトを使用してはどうか

  • ペグ周囲を無意識に掻いてしまうためクッション等で触れないようにしてはどうか

  • 職員を呼ばず、すぐに立って歩こうとされるため、歩行器を少し離れた場所においてはどうか

等です。
 
その都度、徹底して職員間で議論しています。
 
もちろん拘束せざるを得ない場合が生じた際は、適切な処置をとることができるよう委員会や書類の整備等の準備をしています。(今のところありませんが…)
 
最も怖いのが『気づかないうちに身体拘束をしていた』というものです。
 
定期的に研修をすることで、「これは身体拘束にあたるのではないか?」と職員が考えられるような文化を気付いていきましょう。
 
参照元:厚生労働省「身体拘束ゼロへの手引き」(pdf)

それではこれで終わります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今後も、管理職又はリーダーであるあなたにお役立てできる記事を投稿していきますので、スキ・コメント・フォローなどいただけると大変嬉しいです!

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