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最近のこと -山にこもる-

先月なかば、4日間にわたり山にこもった。
こもったと言ってもキャンプではなく、埼玉県の山中にあるコテージに滞在していた。

思えば今年は年始から走り続けていて、自分の時間をとることもままならなかった。
なので、一人きりで自然の中に行き、オフラインの時間を楽しもうと思ったのだ。

コテージがある施設は、スマホの電波が入らない。
Wi-Fiは使えるが、せっかくなので4日間スマホを断つことにした。
スマホを使うのは、写真を撮るときと音楽を聴くときだけ。

この施設を訪れる人は、ほとんどが車でやってくる。
コテージには小規模なログハウスしかなく、食事やその他サービスは一切提供していない。素泊まり専門の施設なのだ。
なので、各々食材を持ち込み、バーベキューをする。

しかし私は、麓の駅から1時間以上かけて山を登り、施設に完全にこもることにした。
一番近いスーパーまでは20km以上あるから、買い物は不可能。
なので、レトルトのご飯や缶詰を背負って山を登った。

秋だというのにまだ暑く、麓ではこの季節なのにセミが鳴いていた。
しかし山の上は肌寒く、荷物を下ろして数時間ゆっくりしていると、気が抜けたのも手伝ったのか、喉が痛くなって風邪をひいてしまった。

せっかく出かけてきたのに寝たきりではかなわない。
私は断食して風邪を治すことにした。
おかげで風邪は重くならず、一日で治ってしまったが、食欲がわかず二日間食べなかった。
結局、重いレトルト食品のほとんどに手をつけず、また背負って下山するはめになった。

自然の中にいて、ネットもつながらないとなると、本当にゆっくりと時間が流れるのを感じる。
コテージの展望スペースからは、遠くに都心のビル群が小さく見える。
普段自分がそこにいるのを思うと、なんだか俗世と切り離された不思議な気分になった。

私は普段本を読む方だが、最近は忙しくてめっきり読書に集中できなくなっていた。
本に集中するには、時間も環境も整っている必要がある。些末な用事があると、どうしても集中が途切れてしまう。それがストレスでもあり、悩みでもあった。

ケトルでお湯を沸かし、コーヒーを淹れ、それを片手にひたすら本を読む。
考えたことをノートに書きつける。
そんな時間がとても贅沢で、咳や鼻水と闘いながらも、少しずつ自分の時間を取り戻せたような気がした。

不思議なことに、なにかを目的とせずに、ただゆっくり過ごすことで、心は穏やかになり、優しい心持ちになれた。
滞在期間中、持ってきた本を5冊、すべて読んでしまった。

山を降りれば、あっという間に日常に戻る。
忙しない時間の中で気が立つこともあるだろう。
だからこそ、自然の中で自分だけの時間を過ごす機会をもとうと再認識したのだった。

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