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その自転車の乗り方、間違ってます!

 自転車は道路交通法上、軽車両に位置付けられています(同法第二条第一項第十一号イ)。すなわち、自転車は歩行者と異なる通行体として法律では扱われます。 
 しかしながら、高度成長期を得た日本では従来、自転車は車道を走行する自動車にとって邪魔な存在であるとしてと同時に、自転車が車道を走行することの危険性から例外的に歩道での通行が推奨され法整備された結果、自転車は歩行者の延長であるという誤解が国民全体に根深く浸透してしまいました。
 その一方で、現代では自転車と歩行者との事故が頻発する中で、再び自転車は軽車両として厳密に認識すべきであるという警察の意向により、自転車専用レーンを設けるなどして自転車に極力歩道を走行させない流れとなっています。
 しかしながら、上述した自転車は歩行者の延長であるという認識は国民の中で想像以上に根深く再教育もされないままの状態です。人の死に直結し得る自動車の運転に比べて自転車に対しては警察の取り締まりも緩く、重大な事故が起きた場合にだけ一時のニュースとして認識されるのに留まっています。
 筆者は自転車に乗ることを趣味としていますが、高級なロードバイクに乗るような人ですら違反行為が目に付くのが残念でなりません。ロードバイクは高速巡行を可能にするため違反行為は他人または自らの危険を招きかねません。
 そこで本稿では、筆者が普段良く目にする危険行為を以下に挙げ、自転車での危険行為を道路交通法および東京都道路交通規則を参照しながら再確認します。

車道の左側を走行する

 自転車は車道の左側を走行しなければなりません(道路交通法第十八条)。自転車専用走行レーンにも進行方向が示されているにも関わらず平気で逆走する自転車をときどき見かけますが、これは大変危険な違反行為です。自動車でいえば本来左側通行なところを右側通行するのと同じです。

車道走行中に車両用信号を無視する

 上述の通り自転車は軽車両に位置付けられており、車道または自転車専用レーンを走行する際は当然車両用信号に従わなければなりません(同法第七条)。例えば、歩行者が歩行者用信号が青信号で横断歩道を渡ろうとしているとき、車両用信号が赤になっていることは自明ですから、自転車も自動車と同様にこれに従って停止しなければならないところ、平気で無視して横断歩道に侵入してくる自転車をときどき見かけます。これも事故を招きかねない大変危険な行為です。

停止線で停止しない

 軽車両も含めて車両は停止線の手前で停止しなければなりません(同法第四十三条)。停止線を無視してこれを超えて信号待ちすることは違反です。
 また、歩道を走行する際にも止まれの指示に従わなければなりません。

歩道を爆走する

 歩道は歩行者優先です。歩行者が側を通る際は特に気をつけて徐行しなければならないとともに歩行者の進路を妨害するような自転車の運転も違反です(同法第六十三条の四第二項)。

歩道を走行する際に車道側でない場所を走行する

 自転車が歩道を走行する際は車道側を通行しなければなりません(同法第六十三条の四第二項)。従って、歩行者がいる場合は歩行者の右側を走行するのがルールです。ただしそれでも、歩行者が前を歩く場合は歩行者の動きを見ながら慎重に徐行して通り越す、または必要に応じて一時停止をして危険を回避しましょう。

歩道歩行中の歩行者にベルを鳴らして道を開けさせる

 これは高齢者に良く見られ、自身の存在を事前に伝えるという善意の意図かとも思われますが、危険が差し迫る非常事態時以外にベルを鳴らすことは違反です(同法第五十四条第二項、第六十三条の四第二項)。上述の通り自転車は歩行者の付近では徐行しなければならず歩行者の通行の妨げになってはいけません。

イヤフォンやヘッドフォンで両耳を塞いだ状態で走行する

 近年、ワイヤレス型のイヤフォンやヘッドフォンが普及して非常に便利になりました。高性能な製品には周囲の雑音を消すノイズキャンセラー機能を有するものもあります。しかしながら、両耳を塞いで自転車に乗ることは大変危険です(東京都道路交通規則第八条第一項第五号)。視覚と同様に環境音の検知は、周囲の状況を察知するのに必要です。自動車が近づく音や子供の遊び声など危険を察知するのには聴覚から得られる情報はなくてはならないものです。

混雑した商店街などでの走行

 特に夕方の賑わう時間に自転車で商店街を走行することは買い物客や歩行者にとって非常に危険です。実際多くの商店街が自転車を降りて通行するように求めています。自転車を降りて押すか迂回路を利用すべきです(同法第六十三条の四柱書)

夜間に点熱ライトのみで走行する

 LEDライトの普及によって自転車での夜間走行は飛躍的に便利になりました。多くの自転車用前方LEDライトには様々なパターンでの点灯や点滅を可能にする機能があり大変便利です。ただ夜間になると、多くの自転車が点滅モードにして走行するのを目にしますが、点滅モードのみでの走行は違反です。自転車の前方ライトは点滅ではなく点灯にすることが義務付けられています。従って、点滅モードを使用する場合は、もう1つのライトを用意してそちらを白色点灯モードにする必要があります。当然、前方反射板のみでの走行も違反です。
 尾灯についても赤色の点灯か反射板の使用が義務付けられており、たとえ赤色であっても点滅のみでの走行は違反です(同法第五十二条、第六十三条の九第二項、同規則第九条)。

傘差し運転と自転車スマホ

 片手での運転は法律で禁止されています(同規則第八条第一項第三号および第四号)。傘をさしながらの運転やスマートフォンを持って操作しながらの自転車の運転も危険です。特にスマートフォンの操作は視野も狭くなりがちなので注意が必要です。スマートフォンを自転車にマウントした状態での走行も同様で、周りの状況を見ながら運転することが大切です。

犬の散歩

 ときどき自転車に乗りながら犬を散歩させている人を散見します。リードが絡まる危険があり本人にとっても周りの歩行者にとっても大変危険ですから、今すぐ止めましょう(同規則第八条第一項第三号)。

大人の二人乗り

 昔ほどはないもののしばしば特に二人乗りを目にします。こちらも禁じられた行為であるには違いありません(同規則第十条)。

まとめ

 以上の通り、筆者がたびたび目にする危険な自転車走行を列挙しましたが、上記項目の複数が同時に該当するような場合もあります。これにより危険が増すことは容易に想像することが出来ます。さらに当然、自転車であっても飲酒をした状態で運転することも禁止されています(同法第六十五条柱書)。
 また特に近年、フードデリバリー事業が危険運転をより助長しているのは間違いありません。事業者にあたっては配達員に責任転嫁するだけでなく一歩踏み込んだ意識改革が求められます。
 今のこの残念な状況はいずれも単に一個人だけの問題というよりは警察や行政のここまでに至る取り組みや対策に問題があると言わざるを得ません。同時に、残念ながら今のところ劇的に改善される期待も持てません。
 自転車による事故の厳罰化というのも一つの対策かもしせん。ただしこれも自分ごととして捉えられなければ意味はなく、よって、国民全体の意識が少しでも変わっていくことを切に願って止みません。

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