乃木誕ライブを観て~狭間の輝き~

 先に全体の話をちょこっと。総評としては、「4期生総決算」といった感じでしょうか。事実、番組も5期生にシフトしましたし、おそらく、4期生単独番組はいったん区切りでしょう。何より言いたいのは、個性が光っていたし、シンプルにみんなが自信を持ったように見えたのはとても感慨深いです。

 個人的に好きだったパフォーマンスの話は最後に書きます。


初めから「その先」を求められていた4期生

 背景からふわっと振り返ると、一応『NOGIBINGO!』内でなんとなくフィーチャーされるような流れは3期生にもあったものの、数年かけて、単独番組をがっつりしたのは、4期生が初めてだと思われます。この決断は想像以上に、勇気が必要だったと思われます。番組としての強度を確保するうえで、新メンバーだけというのはまあまあリスクです。

 しかし、そこであえて「さらば青春の光」という尖った芸人を組み合わせ、なおかつちゃんと番組が成立していたのは、間違いなく4期生がすでにアイドルとしてある程度完成していたエリートたちだったということでしょう。そしてそのことを運営も知っていた。

 そんな彼女らに与えられた番組は、よくあるただ名前を覚えてもらい、成長だけを見せる番組ではなく、モノとしての完成度を高めていく番組でした。

 押し相撲とか、妄想リクエストはメインでなかったけれど、その分、ちゃんと、より実務的に、本人たちの今後にしっかりつながっていく、時代に即したスキルを身に着けていく、とても有意義なバラエティーだったと思います。

(これは個人的な意見も含みますが、正直、今のアイドルシーンで粉にきれいに落ちられるかとか、リアクションとれることよりも、歌える、踊れる、演技できる方がはるかに「武器」になりますからね…。)

 もちろん、そうしたアイドルバラエティーをすればまた違った景色が見えて、今とは違うメンバーにスポットライトを当たっていたかもしれません。しかし、私は町ブラバラエティー的な『乃木坂どこへ…』、コントの『ノギザカスキッツ』、歌とダンスの『乃木坂スター誕生!』というこの三本の番組の方が、はるかに全員の個性を引き出したと思っています。

 そもそも、4期生はSing Out!のライブの中に単独公演があったり、初期からそれこそ「スター」が多かった(もちろん、乃木坂に入っている時点で全員スターなんですが)。それを踏まえて「アイドルのその先の訓練(コント・歌唱・ダンス)」をフィーチャーしたことは大きかったと思います。


『乃木坂スター誕生!』はただの「歌唱力向上プログラム」だったのか?

 まず、「歌唱力向上」という点から見ていきます。歌唱力という一点で見るならば、『乃木坂スター誕生!(以下 乃木誕)』で正直、全員がソロ歌唱に耐えうるレベルまでもれなく到達したか、と言われると私は少し疑問です。

 それなりにヘロっとなる人はまだまだ多いし、「歌うま枠」としてフィーチャーされているメンバーでさえ、コンディションにばらつきがあるのが事実です。好きな「歌手」があの安定感で歌ってきたら、もやっとすると思います。

(もちろん、そのラインを超えたメンバーもいるように感じます。しかし、それはそれで新たな悩みを生んでいそうだと感じたので、それは後程。)

 しかし、そんなこと以上に「ワンランク上の気持ちにみんなが強くなった」という筒井あやめさんの発言にもあるように、乃木誕の取り組みは大きな意味があったと言えるでしょう。

 金川紗耶さんの「歌う事が苦手でしたが、得意になりました!」というコメントにもある通り、特に気持ちの面ではきっとその影響は大きい。少なくとも、自信なく歌う人はいなくなったように思います。
 
 いわゆる「歌うま枠」にならなくても、ピッチが不安定ならば、それ以外のところで魅せる、あるいは自分の声色を生かす。全員が自分なりの強みを見つけていく様子は、単なる「歌唱力向上プログラム」というより、むしろ、一番愚直な「アイドルとしての総合力向上プログラム」だったのが一番興味深いポイントです。


歌手とアイドルの狭間で

 前の段落の冒頭では少々厳しいことも書きましたが、大前提として「全員のソロ歌唱が普通に通っている」という事実は、本当にすごいところで、全員の努力の結晶であることは間違いないと思います。ある意味、歌のうまさに関しては割り切っていたところが今まではありましたが、こういうことが目に付くようになったのは、全員がある程度のレベルを超えたからだと思います。

 残念ながら、普段の乃木坂46のパフォーマンスで全員の歌声がフィーチャーされる仕組みにはなっていない。そこで乃木誕という番組が存在することで、「あ、乃木誕でかましてた人だ!」と思ってもらえるのは、大きなチャンスにもなっていたでしょう。

 歌って踊るってアイドルの「基本の「き」」ですから、もちろん、普段の乃木坂46楽曲は当然うまくなる。その結果、大型の歌番組のオープニングで『明日、春が来たら』を歌ったり、TFTに呼ばれたりと、実際「アーティストとして」注目されることが増えました。

 しかし、「アーティストとして注目される」ということは、当然、ある種のチェックの目も強くなる。もっとメンバー単位の小さな話でいうなら、「あ、この人歌うまいじゃん」という「キャラ」がつくと、ぐんとファンや運営からの欲求も跳ね上がる。今日のEverythingの前の

「乃木坂の歌姫、久保史緒里さんです!」

という煽りとかはその顕著な例でしょう。

(彼女の場合は、それでもやってしまうからえぐいんですが。)

 あるメンバーに対して「このメンバーは歌えるメンバーだ!」とファンの意識が変わったとき、必ずしもそのメンバーの歌がそれに耐えうる精度とは限りません。また、そのきっかけがたまたま出た「ベストアクト」で、それを維持できるかと言われたらそれも別の話です。オタクの感想や思い出ってたいてい盛られるものですし。結果、なおさら、そうした「歌うま枠」の人たちは厳しい見方をされる。

 特に、最近まで「生田絵梨花」というとんでもない「超人」なのに「基準」とされてしまったメンバーがいて、そこと比較されるわけですからなおさらです。(あるいは前述の「久保史緒里」) 
 
 例えば、賀喜さんとかは、今日少し硬さが目立ったように感じました。ある意味、「歌うま枠」にされることは、「アイドル」という免罪符をはがされるのに近いところもある。それは相当なプレッシャーだと思います。
 
 逆に、後半の4期生ライブパートに関しては、一部のメンバーのそういう変な硬さも取れて、全員、いつも通りほんとにいいパフォーマンスしてたので、そういう緊張は確実にあったんだろうなと思います。(むしろ、いつもより温まっててよかった『I see…』の「浮かれた気分のステップ」)

アイドル?アーティスト?

 今に始まったことではないですが、特にTHE FIRST TAKEに出たり、MTVunpluggedが企画されたりと、最近特に「アーティストっぽい」扱いをされることが多いし、実績も残しつつある乃木坂46。それ自体はとても喜ばしいことです。歌手に限らず、舞台やドラマで、そういった専門とする人々がいるフィールドに食い込めるメンバーがたくさんいるのは本当に素晴らしいことです。

 しかし、そうしたことばかりに目を向けて、彼女たちの「アイドルとしての輝き」を見失っていないか、ということを今日のライブを見ながら考えていました。

 というのも、私自身が無意識に音を外した回数、へろっとなった回数を数えていたからです。

 「歌を見せに来たんだから、歌は完璧だよね」

という歌手に向ける目線で彼女らを見ていたわけです。


「安定感を欠いた歌手」なのか「うまいアイドル」なのか

 さて、今日の彼女らは、「安定感を欠いた歌手」なのか「うまいアイドル」なのか。

 大前提として、「どの分野のプロでもないことによる輝き」が彼女らにはあります。それは、それを「ある分野のプロより劣った何か」ではなく、「狭間の輝き」として見せられるだけの、人間的な魅力、カリスマ性があって成り立つ、非常に難しい仕事であると思います。ある意味、一番繊細で難しいかもしれない。

 それを、あるスキルだけを見て、その道のプロと比較し、単なる未熟、欠陥としてとらえるようになってしまっては、わざわざ彼女らを応援する理由はないし、もはやそれは彼女らのファンではない。

(もちろん、彼女らが手を抜いているとか言いたいわけではないし、彼女らのスキルが必ずプロにかなわないとかそういう話をしたいわけではないことはご理解いただけると思います。)


アイドルだからこその輝きを見る


 彼女らは、歌手でもなく、女優でもなく、大前提としてアイドルです。アイドルとして応援する。持ち上げすぎるわけでもなく、卑下もしない。まんま等身大のアイドルとして応援する。なぜならば、彼女らはアイドルだから。

 彼女らがアイドルであり続ける限りは(卒業するまでは)、彼女らがどれだけすごくなっても「アイドルとして応援する」ことに、「彼女らの仕事を舐めてる」とか、なにかしらの卑下も何もありません。

 つい、メンバーたちがすごすぎるから、我々もそうした目で見てしまいがちです。それに応えてくれるからなおさらです。たとえ私たちや世間や業界が、彼女らに求めることがどれだけ高くなっても、私たちはあくまで「冷静に」「ちゃんとアイドルとして目の前のメンバーの輝きを見る」ってことを忘れてはいけない気がします。

トトム


追伸

全部よかったですが、個人的なベストアクトをいくつか上げるなら、

☆ラムのラブソング- 遠藤 さくら
・プレイバックpart2 - 林 瑠奈
☆Timing - 掛橋 沙耶香
・夏色のナンシー - 清宮 レイ
☆CHE.R.RY - 田村 真佑
☆狙いうち – 樋口 日奈、山本 リンダ
☆Everything - 久保 史緒里
☆ツイてるねノッてるね - 伊藤 理々杏(阪口 珠美、吉田 綾乃クリスティー、佐藤 楓)
・心の旅 - 北川 悠理、掛橋 沙耶香
・フライングゲット - 清宮 レイ、矢久保 美緒、柴田 柚菜、林 瑠奈、佐藤 璃果
☆EZ DO DANCE - 弓木 奈於(金川 紗耶、遠藤 さくら、田村 真佑、松尾 美佑、DJ KOO)

と言った感じです。特に、『ツイてるねノッてるね』とかは、ほんとに歌声と曲がマッチしてて、好きでしたね。

久保史緒里さんは相変わらずすごくて。なんか最近、ちょっと平原綾香氏リスペクト入ってません?(声の重みというかトルクの出し方というか)

好き。

※※※※※※※※※

 先輩たち、バチバチにうまかったです。もちろん、準備する曲数が4期生たちに対して少なくて時間をかけられたみたいなこともあるかもしれませんが、それを引いてもすごかった。
 
ひなちまさんの『狙いうち』、声がすごかった。
久保史緒里さんの『Everything』、普通に聴き入ってしまった。
出てきた瞬間に拍手で迎えられるあなたはマジで女神でした。
ゴリゴリにぺこぱの煽りであげられたハードルを、ぴょーんと飛び越えぶっかますのもビビりました。最高。大好きです。
理々杏さんの『ツイてるねノッてるね』、最高すぎたのでCDくれ。

 4期生ちゃん、お疲れさまでした!アフター配信の全員のコメントが全てです。皆いい顔してたのでヨシ!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?