![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75636033/rectangle_large_type_2_ca8da2f04d8c28e84f712e1c518a4033.jpg?width=800)
いつもそこにいる、桜の木
駅前で人を待っていた。
早めに着いたので、満開の桜が見えるベンチに座って。
通り過ぎる人たちの全てが満開の桜を見上げて立ち止まり、8割くらいの人が写真を撮っていた。
みんな微笑んでいて、この瞬間はとても幸せそう。
見ている私も、ほっこりしてくる。
私は通勤でほぼ毎日ここを通り、この桜の木を見ている。
満開に咲き誇り春の暖かいエネルギーを人々に届け、注目されている姿に、子供の成長を喜ぶ親のような気持ちになり、日々の桜の姿を思い出していた。
緑色に輝く葉桜になった姿。
秋にその葉も落ちて枝だけになった姿。
冬の寒さのなか小さな蕾がポツリポツリと出てくる姿。
寒い日と暖かい日を繰り返すごとに蕾がゆっくりゆっくりと膨らんでいく姿。
そして、暖かい日が続き少しずつ咲き始め一気に満開になっていく、その全ての姿を。
満開になって注目されている桜は、そうではない時も、自然の流れに合わせて日々の変化をおこしながら、そこにいる。
花が咲くことも、満開になることも、桜の木にとってはもしかしたら日々の変化の一つに過ぎないのかもしれない。
満開の桜は美しい。
満開ではない時は、また来年満開に咲くために準備をしていると思っていた。
でも違った。
どんな姿にも、どんな時にも、美しさは宿っていた。
その瞬間瞬間が、素晴らしい。
私が気付いていないだけだった。
今日の冷たい雨で桜の花は散り始めている。
これから段々と葉っぱが出て、キラキラ輝く美しい葉桜になる。
これからは全てを愛でていこうと思った。
ここにいてくれて、ありがとう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?