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AI Governance Professionalのオンライントレーニング

IAPP(International Association of Privacy Professionals:国際プライバシー専門家協会)が用意しているCertification Programとして、Artificial Intelligence Governance Professional(AIGP)というものがあります。

私は、(1) AIガバナンスに関する知識の体系化、(2) 国際的な共通言語の獲得(これまで断片的に日本語でインプットしたものを英語で理解しなおす)の二つの目的で、IAPPが用意するAIGPのためのオンライントレーニングを受講しましたので、そのまとめをしていきたいと思います。

AIGP取得や、そのための学習について検討している方の参考になれば幸いです。またOnline Trainingの受講が難しい場合でも、参考コンテンツはお役立ていただけるかもしれません。


AIGP Online Training

概要

IAPPがAIGP取得準備として用意しているコンテンツは4種類あります。Online Trainingはそのうちの一つで、Webブラウザで閲覧できる学習用動画及び学習用コンテンツです。

なお、コンテンツの量としては、10時間~15時間程度で一周できる量です。AIGPの取得準備としてIAPPが提供しているものとして、Online Trainingのほかにライブ講座・対面講座がありますが、それらがいずれも2日間のプログラムであることを考えると、同等のコンテンツ量ということになるかと思います。

コンテンツ内容

基本的に、AIGPのBody of Knowledgeに沿ってコンテンツが用意されています。そのため、以下リンク先に記載されている内容について理解を深めることができるとご理解いただくのが良いかと思います。

https://iapp.org/media/pdf/certification/AIGP_BOK_EBP_FINAL-050724.pdf

詳細はリンク先をご覧いただければと思いますが、以下が含まれます。

  • AIの基本的事項

  • AIの開発手法やライフサイクル

  • AIが社会や人々に与える影響やリスク

  • AIガバナンス、AIリスクマネジメントの理論と実装

  • 現行のAI関連規制及び世界の法規制に関する議論状況

これらについて、あくまで”現時点の”情報を整理しているものであり、今後の状況変化に応じてコンテンツはアップデートされていくものとされています。

所感

コンテンツの詳しい内容をここで掲載することはできませんが、AIガバナンスに関して改めて体系的に学習するものとしては、悪くないコンテンツだと思いました。私が目的としていた2点((1) AIガバナンスに関する知識の体系化、(2) 国際的な共通言語の獲得)についても十分達成できたと考えています。

2022年末頃のChatGPTリリースをきっかけに急速にAI(特に生成AI技術)が進展・普及していく中で、企業としてもAIガバナンスも対応が求められているところだと思います。そんな中、様々なソースから断片的な情報をかき集めながら対応をしていかなければならないコーポレート部門 / ガバナンス部門としては、ナレッジの体系化ができることはありがたいと感じます。

一方で、IAPPが用意しているという特性上、ややプライバシー関連の解説と、そのほかの部分の解説で、”厚み”が異なる印象は受けました。もう少しプライバシーに直接関連しない部分についても踏み込んだ解説があると、コンテンツとしてより価値のあるものになるのではないか、という印象です。

参考コンテンツ

AIGPのOnline Trainingはその費用が比較的高額ですので、代替として以下の書籍や公開情報を活用することが考えられますので、参考までにご紹介します。

AIの基本的事項/開発手法

この点については「Q&A AIの法務と倫理」が参考になると思います。法務部を中心に、コーポレート/ガバナンス部門の方が”理解しておくべき”AIの基本的事項についてまとめてくれており、冒頭100pだけでも読む価値があるかと思います。


AI関連のリスク

この点については様々な書籍が出ており、どの粒度まで理解をするかというところはありますが、概略把握という意味では、「AIガバナンス入門」が最適だと思います。新書ですのでコンパクトですし、最初に読む一冊としておすすめです。

そのうえで生成AIについてもう少し踏み込んでということですと、「生成AIの法的リスクと対策」が網羅的に解説をしてくれており、これを読んだうえで個別事項について検討していく形が良いかと思います。


AIガバナンス/リスクマネジメントの理論・実務

これについては今のところ何か”正解”のようなものがあるわけではありませんが、各機関が出しているドキュメントの中からだと、以下が参考になるとされています。2010年代後半に様々な機関が発行した、AI開発・AI活用はこうあるべき、という”原則”に対して、直近はそれをどのように具現化していくかという”実装”にフェーズが移ってきていますので、その実装方法を検討する際の参考になるもの、ということになります。

アメリカ NIST AI Risk Management Framework

ISO/IEC 42001:AIに関するマネジメントシステム規格


AI関連規制

代表的なものとしてはEU AI Actがありますが、GDPRをはじめとするプライバシー関連規制やそのほか業法・知財関連規制についても把握しておくことが欠かせません。

EU AI Actについては、以下解説が分かりやすく、まず読むのには適しているかと思います。


以上です。AI関連規制については動向を追いかけるだけでも大変ですが、この記事が何かの参考になれば幸いです。

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