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お母さんになった記念日

春の嵐の日だった。

薄暗い病院。
頼りになるのはたった一人の看護師さんと
凄腕の助産師さんだけ。

院長は…
どうしても外せない仕事で病院を離れた
夫の戻りをまだかまだかと待ち侘びるだけ。
前々日の夜から続く微弱陣痛中の私は
もはや夫の戻りなんてどうでもいいとすら
思っていた。
お腹痛いし、腰も痛いし、お腹空いたし。

知り合いが一人もいない地に嫁いだので、
近隣の産婦人科を調べて選ぶこともなく
義母も義姉妹も利用したこの産婦人科
1択だった。
だからと言ってはなんだけど
驚くことばかり。
古い、暗い、人が少ない。
(閉院が近いことは後から知った)

予定日を10日以上過ぎ、
「もう帝王切開にしよう」
と言われて覚悟を決めて来院した手術日に
「緊急で子宮筋腫の手術が入ったから
 明日の夕方に来てください。明後日切ろう」
って?

その夜から2晩3日の戦いが始まった。

一度帰宅したその夜、微弱ながら陣痛が
始まり、翌夕をまたず朝一で病院へ。
結局、子宮口が開き始めたから切開は回避し、
そのまま入院。

1日目 手術できなくなり帰宅
    夜に微弱陣痛が始まる
2日目 朝一に病院に行き、子宮口の
    開きを確認。微弱ではない陣痛を
    腰痛と闘いながらひたすら待つ
3日目 子宮口の開きは進むが陣痛が弱い
    子の向きが出口に向かっていない?
    (生まれた後にわかる方向音痴)
    夫、仕事に向かう
    (大安日=納品日)
    院長、夫の帰りを待ち侘びウロウロ
    (先生…鬱陶しいです)
    子宮口の開きは十分。破水。
    微弱続きに耐えかね陣痛促進剤を打つ。
    「ご主人、間に合うかな」
    (先生、それはもういいです‼︎)
    夫も戻り、激しい陣痛開始。
    ほぼ押さえ込み状態でお腹を押され
    やっと外に出てきてくれた娘‼︎

髪、ふさふさじゃ〜ん‼︎

人生で1番しんどかった数日なんて
もうどうでもよくなった日。
誕生日おめでとう。

今日は私がお母さんになった記念日。


追記:
他に妊婦さんも患者さんもおらず、
2階の病室にいるのは私と付き添いの夫だけ。
1階には看護師さんが一人だけ。
「何かあったらボタンを押してください。
 すぐに来ますから」

微弱ながらも陣痛の間隔が早くなり
腰の痛みもひどくて、朝方4時ごろ堪らず
ボタンを押す。
押す。
押す。

こ、こないじゃん(泣)

様子を見に夫が階下に降りてみると
ブザーに気付かないほど爆睡中の看護師さん。
よかった〜いてくれて。
誰もいないのかと思ったよぉ〜。

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