見出し画像

Unexpected Needsを満たす_Physician Scientistの挑戦5

Do not start from "WANTS". Let's start from "NEEDS".

以前のブログでも引用したが、うちのクリニックの院長オリジナルフレーズで、僕も常日頃肝に銘じている言葉だ。患者さんはunmet needsをたくさん抱えており、医療というのは結局unmet needsをどれだけ埋められるかという事である。ところが、巷には自分が埋める事の出来るunmet needsのみを埋めて(自分が診ることのできる病気だけを診る)あとは知りません、というお医者さんが山ほどいる。高度な専門医療を提供する大学病院や国立センターならまだしも、総合的に患者さんを診るべき立場のお医者さんほどこう言う傾向が強い。それは僕からするとそれは"WANTS"ベースで動いており、患者さんの"NEEDS"を満たしているとは言わない。三流のお医者さん、だ。

一般的に良い先生と言われる先生は、自分の診ることの出来る病気だけでなく、患者さんのunmet needsを見極めてそれを埋めるための労力を惜しまない。例えば自分で調べて的確な治療法を見つける、あるいは自分で診るのではなく適切な専門医や療法士さん・看護師さんへ橋渡しをする。どちらも素晴らしいことと思う。訪問診療の現場では特に後者の橋渡し役、地域医療のHUBとしての役割が期待されており、それを満たすと患者さんのunmet needsが満たされ、「良い訪問医」として認識して頂けることとなる。ところが、これだけではまだ二流、と個人的には思っている。

話は変わるが少し前、「美人すぎる〇〇」というネット記事をよく見かけた。このフレーズや記事自体は性差別的要素が含まれており好きではないのだが、非常に重要な示唆がある。「期待されていないこと = Unexpected Needs」を満たす、ということである。〇〇する人には美しさは求められていない(とんでもなく失礼な話)が、美しさを兼ね備えていれば人々の注目を集める。つまり、人々に驚きや感動を与えるためには「期待されていること」を超えて行かねばならない、ということだ。

では我々訪問医にとっての「期待されていないこと = Unexpected Needs」は何か?

これはそれぞれのお医者さんが考え続けて自分で見付け、それを満たす過程で自分自身のオリジナリティを出して行くべきだと思っている。その過程で重要になって来るのが逆説的ではあるが、"WANTS"である。まず患者さんのunmet needsを満たした上で、自分のやりたい事ベースで自分自身を高めて行く。その先に期待を超える結果がもたらされ、それが患者さんに還元される。こういうサイクルだ。僕自身の場合、まずは高度循環器専門医療を提供する大病院の外来通院には少なくとも負けないレベルの循環器医療を提供したい。そして自分自身の"WANTS"である基礎医学研究を続けたい。訪問診療1年で二流の条件である、unmet needsを満たすためのハードワークは出来ていると思うので、明日から始まる新しい年度は皆さんに「期待されていないこと = Unexpected Needs」を少しでも満たして訪問診療の新境地を開いて行きたいと思っています。

院長の言葉に少し付け足します。

Do not start from "WANTS". Let's start from "NEEDS" and go beyond the "EXPECTATIONS".



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?