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ヴィッセル神戸今季初タイトル!両チーム全6ゴール独自解説

新たなシーズンの幕開けとなる富士ゼロックススーパー杯。今年は日本を代表する2つの港町同士の戦いとなった。15年ぶりに頂点に立ったリーグ王者横浜Fマリノス。クラブ史上初タイトルを獲得した天皇杯王者ヴィッセル神戸。お互いに新加入選手や新戦術など、新たなシーズンの意気込みを含めた一戦である。
さらにこの戦いにはVARが導入され、どのように試合に影響を与えるのか、そちらも大きな見どころの一つとなった。

両チームスターティングラインナップ

▼横浜Fマリノス

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新加入のFWオナイウ阿道がいきなりのスタメン抜擢。結果を残す事はできるのか。

▼ヴィッセル神戸

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こちらも新加入のFWドウグラスがスタメンに。ビジャの抜けた穴を埋める事ができるのか。

前半27分 ヴィッセル神戸 新戦力が挨拶替わりの先制ゴール〔横0-1神〕

このゴールのポイントは4つ。
①前線からのプレスがハマる
②古橋のイニエスタへのダイレクトパス
③イニエスタのチップキックパス
④ドウグラスのシュートを打つタイミング

①→横浜は最終ラインからビルドアップを図るも神戸のハイプレスにハマり、パク イルギュは仲川へのロングパスを選択。しかしこれはフェルマーレンが難なく跳ね返し、ボールは古橋の元へ。
②→古橋がダイレクトでパスを出すことでイニエスタに余裕を持たせる事ができ、攻撃のテンポを上げるスイッチになった。ワントラップしてからパスを出すと攻撃のテンポが遅くなりかねない。また古橋は後ろ向きの状態(ゴール方向が見えていない)、イニエスタは前向きの状態(ゴール方向が見えている)、この状況を瞬時に判断し、「ゴールにいかにスムーズに向かえるか」を先読みしたパスでもある。
③→敵をギリギリまで食い尽かすことによってドウグラスがフリーになる。自分のマーク(チアゴマルチンス)とドウグラスのマーク(畠中)2人が来たタイミングで2人の間の足の上を通すチップキック。これにはカバーの扇原も間に合わない。イニエスタらしいプレーだ。
④→しっかりボールの芯を捉えて蹴る事ができている。言い換えればボールにうまく力を伝えて強いキックができている。ボールのバウンド、自分の体勢、ボールを蹴るコース。全てを考慮してキックしている。そしてしっかり決めきる決定力。さすがの一言である。

前半27分 ドウグラス(ヴィッセル神戸)
[横浜Fマリノス0-1ヴィッセル神戸]

前半36分 横浜Fマリノス 前半のうちに同点に追いつく〔横1-1神〕

このゴールのポイントはただ1つ。
①マリノスFW陣のボールとゴールへの執着心

①→注目してほしい瞬間がある。バイタルエリアにボールがこぼれた所を山口蛍がスライディングでバックパスした時だ。ヴィッセルの最終ラインは完全に足が止まっている(=飯倉に任せた状態である)。それに対して、仲川は自慢のスピードで猛然とプレスをかける。さらに仲川だけではなく、エリキとマルコスジュニオールも走り続けている。ボールが上にあがってルーズボールになって初めてヴィッセルのDF陣は動き出すが時すでに遅し。待ち構えていたマルコスジュニオールが頭で押し込んだ。まさに仲川のボールとエリキ、マルコスのゴールへの執着心が産んだゴールと言えよう。

前半36分 マルコスジュニオール(横浜Fマリノス)
[横浜Fマリノス1-1ヴィッセル神戸]

前半40分 ヴィッセル神戸 一瞬の隙を突き再び勝ち越し〔横1-2神〕

このゴールのポイントは2つ。
①古橋のずる賢いプレス
②古橋の1タッチ目

①→マリノスが攻め立てる中、ボールを取った山口蛍はセーフティにクリアを選択。古橋は一人ボールを追いかけてプレッシャーをかける。ゴールをガラ空きにしてボールを拾ったパク イルギュだったが古橋のプレスをいなし、落ち着いてチアゴマルチンスにパス。古橋は続けてティーラトンへアプローチに行く体勢をとる(後にこれが重要になる)。チアゴマルチンスはゴールがガラ空きだったため、無理して前を向かずセーフティにパク イルギュへバックパス。そこをずる賢い古橋は狙っていた。ティーラトンへ行く体勢を取ることでチアゴマルチンスのバックパスを誘った。チアゴマルチンスが蹴った瞬間には古橋はパク イルギュへのコースに入っている。巧妙である。
②→さらにもう一つ重要なポイントがある。カットしてから普通に流し込んだだけに見えるが、注目すべきは古橋の1タッチ目だ。足元に来たボールをしっかり蹴りやすい位置にトラップできている。簡単そうに見えて非常にレベルが高い。いくらパスコースを読んだとしてもパススピードやバウンドまでは読めやしない。ましてやそれをあの至近距離でカットし、2タッチでゴールできるのはトラップで自分の懐におさめる意識が体に染み付いている証拠である。

加えて、シュート直後の古橋にも注目して欲しい。ネットが揺れる前にゴールに背を向け、手を広げてセレブレーションをしている。野球で言う「確信歩き」のようなものだ。非常にかっこいい。

前半40分 古橋 亨梧(ヴィッセル神戸)
[横浜Fマリノス1-2ヴィッセル神戸]

後半9分 横浜Fマリノス 後半の早い時間に同点とし試合はまた振り出しに〔横2-2神〕

このゴールのポイントは2つ
①エリキのトラップ
②扇原のシュートで終わる意識
①→スローインからエリキが神戸のDFラインの裏でボールを受ける。この時ダンクレーが強く寄せに行っているが、それに慌てることなくファーストタッチでゴール方向にトラップしたことで、神戸ゴール前でのビッグチャンスとなった。
②→扇原のシュートを見てもらったら分かるが、足を少し早く振ってしまい、ジャストミートできていない。しかし、ゴール方向に蹴れたことによって、チップキック気味になり、見事ゴールイン。なんとしてでもシュートで終わるという意識がなければ、成立しなかったゴールだと考える。まさに執念である。

後半9分 扇原 貴宏(横浜Fマリノス)
[横浜Fマリノス2-2ヴィッセル神戸]

後半24分 ヴィッセル神戸 敵陣でパスカットした流れから三度勝ち越し〔横2-3神〕

このゴールのポイントは2つ。
①田中順也のオフザボールの動き
②ニア、ファー、マイナスの位置が取れている

①→蛍がインターセプトした時、田中順也は蛍の右側を走っているが、蛍の前を斜め左に走ることで、イニエスタのスペースを開けた(イニエスタからDFを遠ざけた)。このオフザボールの動きによってDFはこのあと後手の守備になってしまった。又この動きは一度ファーにいくことでニアへスピードを持ったまま走りこむことができる。
②→イニエスタがクロスをあげる直前の田中、古橋、蛍のポジショニングを見て欲しい。しっかり、ニア(田中)・ファー(古橋)・マイナス(山口)と綺麗にポジショニングできている。クロスを入れる際の基本的で理想的なポジショニングである。イニエスタのクロスはチアゴマルチンスに引っかかったが、こぼれ球をマイナスにいた山口が豪快に蹴り込んだ。

後半24分 山口 蛍(ヴィッセル神戸)
[横浜Fマリノス2-3ヴィッセル神戸]

後半28分 横浜Fマリノス カウンターの流れから今日3度目の同点ゴール〔横3-3神〕

このゴールのポイントは2つ。
①仲川のサイドチェンジ
②遠藤のトラップ

①→カウンター中のサイドチェンジの効果、それはDF陣の対応を遅らせることにある。仲川がボールホルダーの時、仲川のマークにフェルマーレン、そのカバーに大崎、エリキにダンクレーがついており、遠藤はフリーの状態。サイドチェンジをしたタイミングで、遠藤にダンクレー、エリキに大崎とマークをずらそうとしているが、明らかに遅れている。
だったら最初から仲川にフェルマーレン、エリキに大崎、遠藤にダンクレーがマークすれば失点を防げたのではないか。それはできない。何故なら仲川が万が一フェルマーレンをドリブル突破したら神戸は大ピンチである。現に試合を通して仲川へのカバーリングが徹底されていた。神戸は相当警戒していたに違いない。それらのリスクを踏まえれば大崎のカバーは大正解である。しかし、それを上回ったのが仲川のサイドチェンジと次に説明する遠藤のトラップである。
②→遠藤が走りながら、そのスピードを殺さない絶妙なトラップをしたことで全て決まったようなものである。ダンクレーは完全に遅れ、大崎は間に合ったように見えたがシュートを防ぐには至らなかった。あのロングボールのトラップとラストパスの必要最低限のタッチ数で勝負ありだ。
この仲川→遠藤→エリキのゴールシーンだが、ある試合の得点に類似している。覚えている方もいるだろうが、それはプレミアリーグ第12節リヴァプール対マンチェスターシティのリヴァプールの2点目である。アーノルド→ロバートソン→サラーの流れで決まったゴールは、アーノルドのサイドチェンジからロバートソンが2タッチでクロスを供給、サラーのヘッドで完結した。このゴールは今までで一番レベルの高いものだと考える。

後半28分 エリキ(横浜Fマリノス)
[横浜Fマリノス3-3ヴィッセル神戸]

最終結果
   横浜Fマリノス3-3ヴィッセル神戸
PK(横浜Fマリノス2-3ヴィッセル神戸)
優勝:ヴィッセル神戸(初)

最後に

ここまで読んでくれた方、本当にありがとうございます。伝えたいことを素直に書いていたら思いのほか、長文になってしまいました。
非常に面白い試合でしたね。どちらもゴールに迫るシーンがたくさんあって、目の離せない一戦だったと思います。PK戦も稀に見る攻防で、最後蛍が決めた時「良かった」より「疲れた」が余裕で上回ってました。神戸が地元と言うこともあり、ちゃっかり応援していこうと思います。4日後は待ちに待ったACL初戦ですね。ちゃっかりノエスタ行ってきます。その前に日曜日のシティ戦 !また、それらについても記事にしますね!それでは。