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2021初夢

「この場所の難点は、目の前の道路が一方通行のため、駐車スペースに行くためには遠回りしなくてはならないところです」

不動産屋が地図を見せながらぼくと妻に説明する。ぼくは妻が相続した土地をどう活用するか不動産屋に相談しに来ていた。

売るのであれば公示価格の2割増で売れる。自分の家を建てるか売るかは保留にし、ぼくと妻は不動産屋をあとにした。

妻とぼくは腕を組んで歩きながら駅を目指していた。

「あなたとは数ヶ月に一回しか会えないけど、あの場所に家を建てれば毎日会えるわね」

ぼくと妻は最近結婚したばかりだ。お互い再婚で、事情があって今は別々に暮らしている。

「スタッフたちもナオユキさんと会えなくて寂しがってるわ」

そう言いながら妻はぼくに笑顔を向けたが、対照的にぼくの表情は曇る。

「ぼくの名前はトモユキだよ」

ハッとした顔をして妻は組んでた腕を離した。ナオユキは妻の前夫の名前だった。

立ち止まる妻を無視してぼくは歩きだす。数歩進んで振り返ると、妻は美しい顔をクシャクシャにして泣いていた。

「ごめんなさい。私ったら、ほんとに……。でも信じて、愛してるのはあなただけなの!」

ぼくは急いで妻の元へ駆け寄り力強く抱きしめた。そして気づいた。職場に休む連絡をしていなかったことを。

慌てて職場へ電話する。電話に出たのは聞き慣れない声の女性だった。

「すみません。係長はいますか?」

電話の女性にそう告げると、いないと応える。

「じゃあ斉藤くんに変わってもらえます?」

ところが、女性の返事は「わかりません」だった。

「わかりません?わからないはずないでしょ?あなた誰?」

少し苛ついて電話に言うと、女性はたまたま訪問していた取引先の女性社員で、癖で電話に出てしまったと申し訳なさそうに応えた。

自分の会社でもないのに電話に出てしまう非常識さに驚きながら、良く知るパートさんに変わってもらった。

「連絡遅くなったけど、今日は採血で病院来てるので休みます」

本当は妻と不動産屋に来ていたのだが、何故かぼくはウソを付いた。連絡を済ませ、妻を見るともう機嫌は直ったのか笑顔でぼくを見ている。

ぼくと妻はふたたび腕を組み、美味しいランチを食べるため、店を探すことにした……。

ここで目が覚める。ちなみに、出てきた妻は実際の妻じゃないし、全く知らない人でした。


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