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団塊の秋 (祥伝社文庫) (日本語) 文庫

本書は、元経済企画庁長官の堺屋太一さんが書いた小説である。引退した団塊の世代が自分の人生を振り返る。

大学の卒業旅行で出会った7名が、数年に1回に交流し、お互いの近況を確かめ合う。当たり前だが、皆同じように年を取って、引退していく。

登場人物は全員が一流大学を卒業しており、団塊の世代の中でも上流な人たちだと思うが、下記のような話が出てくる。

・ニュータウンに買った住宅は、高齢者ばかりで、ローンを組んで買ったものの、値下がりしている。

・1991年までは日本は冷戦構造に守られており、日本経済はバブルに沸いたが、その後は、ずるずると後退し、団塊の世代の給与や生活にも大きな影響を与えた。

・団塊の子どもの世代になると生涯未婚者が増え、親として悩む。

・東日本大震災の影響で、大学院博士課程まで出したのに、専門が原子力であるために、仕事がない。(高等教育を受けさせても、新卒一括採用を是とする日本の会社は雇ってくれない。)

・孫に会いたくとも、里帰りを子どもたちがしないため会えない。また、保育の環境が整っているため、親からの生活面でのサポートを期待していないため、近くに住んでいても孫に会えない。

・その他、会社人生でのキャリアの悩み方、身の振り方。実力があっても業界が冷え込んでしまって、子会社に出向になる、等。

団塊の世代の話ではあるものの、現代の共通した悩みであり、経済(生活)の話も数値とともに出てくるので、自分の人生のシミュレーションに役立った。自分の人生を考えたい人にはおすすめである。

団塊の世代は人口としては1年あたり250万人程度いるはずである。(47~49年生まれなので、750万人にもなる。)20年以内に多くの人は鬼籍に入ってしまうはずであり、彼らがいなくなると、人口が増加しない限りは、日本経済は大きく落ち込むだろう。

人口が多く競争が激しかった世代であり、とかく元気な人たちが多く、面白い人が多い世代だと思う。


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