風と炎と〈上〉 (日本語) 単行本

GWで自粛ウィークとなっているので、読書くらいしかやることがない。

元カルビーの松本社長がビジネスマン必読の書と勧められていたのでブックオフにて購入読了。

本書は、バブル崩壊後の92年に堺屋太一さんが産経新聞に連載されていたコラムをまとめたものである。先日、著者の「東大講義録」を読んだが、内容としては重複する部分も多い。難易度としては、こちらの方が難しい。昔の新聞はこういった硬派なコラムを載せる余裕があった。今であれば硬派過ぎて読者がついてこない、と言われそうだ。

本書は、20世紀の終わりにこれからの時代(21世紀)を見通すために、人類の始まり(アフリカ)からのそれぞれの文明の隆盛と衰退を解説している。

・20世紀はドイツに代表される官僚啓蒙主義体制が第一次世界大戦で自由主義陣営に敗退、右翼全体主義が第二次世界大戦で同じく敗退した。最後に「科学的共産主義」が敗退した。自由主義が共産主義に勝ったのは、官僚が計画した需要でなく(国民服等)、ひたすら消費者主権であり、私有財産を認めていたからだと著者は考えている。自由主義は無駄も多いが柔軟性がある。

・20世紀後半にローマクラブは成長の限界を叫んだが、古代から人類は成長(資源)の限界に何回もぶつかっていた。結果、成長論より分配論が社会を支配した。人口と生産力の不均衡が発生した結果、家族の崩壊と性道徳の退廃が起きている。(ローマ帝国、中国の漢)現代にも当てはまりはしないだろうか。

・日本が短い期間に工業化に成功したのは、徳川時代中期にできた石門心学以来の「勤勉の哲学」があったから。物財が豊かなことを幸せを感じる近代社会では物財の生産に熱心に携わることが社会のために正義であった。しかし、歴史の全期間を通じて見れば、ごく珍しい思想である。

歴史を勉強すると当たり前に思っている価値観も相対化して見ることが出来る。たまには歴史の本も読んでおきたい。


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