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切迫流産に関する正しい知識

こんにちは。


この記事は、切迫流産についての記事になります。


妊娠されている方は「流産」と聞くと少し不安になってしまいますよね。しかし「切迫流産」は「流産」とは意味が異なります。


切迫流産の定義は「産婦人科用語集(日本産婦人科学会編)」によると「妊娠が確認された状態で、胎児や付属物が排出されておらず少量の出血がみられた状態」のことです。


少し難しいのでざっくりとまとめると、「切迫流産とは、妊娠した状態で出血がみられ、流産のリスクが正常よりも高い状態」を意味します。


今回の記事では、妊娠初期に出血が見られた時の以下の疑問に対して解説していきまます。

・ 切迫流産の病態について。
・ 切迫流産に対する治療方法について。
・ 妊娠初期に出血が見られた時の対処法について。

では早速、見ていきましょう。

切迫流産の病態について

切迫流産とは。
妊娠反応が陽性で病院に行くと、まず『経腟超音波検査』を行います。経腟超音波検査で赤ちゃんが育つ丸い袋(胎嚢)と赤ちゃん(胎芽)が見えると、正常に妊娠している(異所性妊娠ではない)と判断します。

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正常な妊娠が確認された後で出血がみられると、お腹が痛い状態があるかないかに関わらず、この状態の事を総じて『切迫流産』といいます。


妊娠初期の出血は、約2〜4割の妊婦さんが経験しているとの報告もあります。また一概に性器出血とはいっても、ナプキンに少し血が混じった程度から、サラサラとした血が続く程度まで様々です。


ナプキンに少量の出血が付着していたり、茶褐色のおりものがみられる程度でしたら、流産のリスクはそれほど高いとは考えられません。


しかし、通常の生理以上の出血が持続してみられたり、強い腹痛を認める場合には流産に至るリスクは高くなると考えられます。


なぜ妊娠初期に出血するのか。

皆さんは『胎盤』をご存知ですよね。

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『胎盤』はお母さんと赤ちゃんを繋いでいる臓器で、赤ちゃんは『胎盤』を通してお母さんから栄養をもらってます。


この『胎盤』は妊娠初期では『絨毛』と言います。(『絨毛』が成長して『胎盤』になるイメージです)


この『絨毛』ができる過程で、お母さんの子宮の筋層の壁に絨毛が入り込み、胎盤が形成されます。その際に出血がみられる事があります。
妊娠初期の出血の原因の一つが以上の原因があると言われています。


しかし、妊娠初期に出血がある=切迫流産だからと言って必ずしも『流産』に至る訳ではありません。


実際に妊娠初期に出血がみられた妊婦さんと、みられなかった妊婦さんを比較して、流産率が変わらない、という報告もあります。(約90-95%の切迫流産の方が正常の妊娠の経過を辿るとも言われています。)

妊娠初期に出血がみられた時の対応方法

結論から言うと、少量程度の出血なら慌てずにあまり心配する事はありません。


但し真っ赤な血がサラサラ続く時は、流産の可能性も否定出来ないのでかかりつけの病院に電話してください。


とはいえ、大事な赤ちゃんがお腹の中にいるのがわかっていて出血した時、心配になるのは当然です。

では実際に夜間や休日、出血下時にはどの様にしたら良いのでしょうか。
対応としては、

通常の生理の時の出血よりも多い。
・強い腹痛をみとめる。

これらの場合には、緊急の場合もあるので夜間・休日でも病院へ連絡し受診してください。


出血もナプキンに付着程度の少量で、腹痛もほぼない場合には翌日またはあらかじめ予約していた受診日に受診し、それまでは安静にする、という対応で問題ありません。

まとめ

以上、切迫流産の病態から対処方法まで解説させて頂きました。
切迫流産についてのまとめですが、

・日常生活の動きで流産率を高めることはない。
・少量の出血があっても9割以上は正常妊娠に戻る。

ことも同時に抑えておいてください。
また、妊娠初期の出血の対応としては

出血もナプキンに付着程度の少量で、腹痛もほぼない場合には翌日またはあらかじめ予約していた受診日に受診し、それまでは安静にする、という対応で良いでしょう。

それでも心配であったり、症状がよくならない時には、我慢せず病院に電話してください。


また、心配である場合には「産婦人科オンライン」に相談するのも1つですね。

この記事が妊娠初期の出血で悩んでいる妊婦さんの解決の一助となれば幸いです。皆さんがより良い妊娠生活を過ごせる様にと思っています。

今までお話していた内容はあくまで『正常妊娠』の場合です。
子宮の中に『赤ちゃんが確認できていない』様な場合には『異所性妊娠(子宮外妊娠)』等、その他の病気の可能性もあるので、注意してください。

以下は更に詳しく、補足事項として切迫流産に関係する病態について解説していきます。興味のある方は続けて拝読されてください。

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補足① 絨毛膜下血腫について

妊娠初期に出血がみられた方に経腟超音波検査を行った時に、
赤ちゃんが住んでいる袋『胎嚢』の周りに「黒っぽい部分」が見えることがあります。

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この『黒く見える部分』を『血腫』と言って、この状態のことを『絨毛膜下血腫』といいます。つまり、『絨毛』の周りに『血まめ(血腫)』がある状態なんですね。


『絨毛膜下血腫』の頻度は妊娠全体のうち4〜40%とも言われています。


そう言われると『絨毛膜下血腫の時は流産しないか心配』になりますよね。
中には担当の先生から『絨毛膜下血腫』と言われた方もいらっしゃるかもしれません。

絨毛膜下血腫と流産率は以下の様な報告があります。

・『絨毛膜下血腫がみられたグループでは流産率が18.7%』
・『絨毛膜下血腫がみられなかったグループでは流産率が9.6%』


確かにこれは、『絨毛膜下血腫』の時には少し流産率が上がるかもしれない、という事を意味しています。


一方で「絨毛膜下血腫」の場合には治療方法として「安静」が効果があるかもしれない、という論文も報告されています。

・   絨毛膜下血腫でベッドで安静にしていた方の流産率は 6.5%」一方で、
・「絨毛膜下血腫で安静にしていなかった方の流産率は 23.3%」
  これは、
・「絨毛膜下血腫がある時の切迫流産には、ベッドで安静にしている事が
  流産の予防に繋がるかもしれない」とうことを意味しています。

この論文はRCTですので安静が必ず効果があるとは言い切れませんが、いずれにしろ絨毛膜下血腫を医師から指摘されたときには定期的に受診をする必要があります。


また絨毛膜下血腫があるからといって、必ず流産に至るわけではないので、過度の心配には注意です。

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補足②:切迫流産の治療法について

赤ちゃんの心拍が確認できた後に『切迫流産』と診断されると、使用できる薬物はいくつかありますが、

・ 流産を予防する確実な薬剤はなく、
・「安静」にしても確実に予防できると言えない。

というのが実際のところです。


切迫流産と診断された場合には「過度な運動や必要以上の身体の負担を避ける」以外に流産を予防出来る方法がありません。


しかし、インターネット上には必要以上に不安を煽る様な内容の記事が散乱しているのも事実です。


切迫流産には、母体の精神的ストレスも影響を及ぼす可能性が指摘されており、適切な知識を持ち、過度な不安を抱えることなく、担当医と相談しながら、現在の病態に上手に付き合っていく様にしましょう。

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補足③:最後に-実際に流産を経験されたという方へ-

この記事を読まれている方の中には、実際に流産を経験された方もいらっしゃるかもしれません。


現に『妊娠初期に流産する確率は、全ての妊娠のうち約10〜15%』と低くはない確率です。また女性の年齢と共に流産率も上昇し、40歳以上の流産率は25%以上とも言われています。


流産を経験した方の中には「流産に至ったのは何が原因であったのか。」と原因を考える方も少なくないと思います。


妊娠初期(妊娠12週未満)の流産の原因は50%-60%が「赤ちゃんの染色体異常」なのですね。


これは、流産を経験されたママには辛く聞こえるかもしれませんが、



「現代の医療では妊娠初期の流産はどうすることも出来ない。」という事を意味しています。


つまり、仮に妊娠初期に流産をされたとしても
「お母さんは悪いのではなく、仕方のないこと。」なのです。


妊娠初期に流産したとしても、決して自分の行動を振り返り後悔する必要はありません。


妊娠初期の流産は仕方のないことですので、ご自分を責める必要ありません


もし辛い思いをされている方がいらっしゃれば、この記事を読んで頂き、少しでも前向きな思いになって頂ければ、と思います。


最後まで拝読していただきありがとうございました。

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