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キャラクターと触れ合う系VRの課題

KuMA Advent Calendar 2022 6日目の記事です.

どうでもいいですが私,"Calendar"のつづりを間違えていて,昨日までずっと"Calender"と書いてました(たぶん全部修正しました.気付いてた人いますか?).英語って難しいですね.「アバター」も"avater"じゃなくて"avatar"だし,「うぉーたー」は"water"なのに,「ギター」は"guitar"です.なんでやねん! LとRの違いが分かる人はこれもわかるんですかね?
とりあえず,ghoti に乾杯.

これまでのアドベントカレンダーでハードルをあげてしまうような難しい話をしすぎた気がするので,今日はもうこれくらいで終わってもいいかなとも思いましたが,一応本題に入ります.「キャラクターと触れ合う系VRの課題」について私が感じていることを書きます.

VRを利用してバーチャル空間のキャラクターや物体と触れ合うという研究やアプリケーション開発は昔からよく行われています.IVRC2021でKuMAが出した「夢のもふもふ」もその一つで,HMDをかぶってVR上のもふもふパンダと触れ合うという体験になっています.

また私が個人で作成した「バーチャルなでなで」は,立体視ディスプレイに表示されたキャラクターと触れ合え,手に振動フィードバックをするというものです.※初音ミクのアバターは私が作ったものではありません


こういったアプリケーションで実際にバーチャルの動物やキャラクターと触れ合っているような感覚を得るためには,現実空間と同じように「自然」に感じられる動きや反応のシミュレーションが必要になります.私は,現在のVRではこの部分がまだまだ全然実現できていないなと感じています.

たとえば「夢のもふもふ」では,VRのパンダの位置と現実空間のもふもふクッションの位置が完全に一致していないと「VRでパンダに触れているけれどその感触はない」という状況になります.これは,「プレゼンスが剥がれる」と呼ばれているような状態です.体験者はここで,「これは本物のパンダなんだ」という気持ちを失ってしまいます.また,体験者はHMDを被っているため,現実世界で布団やクッションに飛びこむときのように,完全に顔をパンダのもふもふに埋もれさせることはできません.同時に,このようなことをしようとしたとき,特別な処理がなければ,VRではパンダの内側にカメラがめり込んでしまい,裏世界がみえるような状態になってしまいます.

「バーチャルなでなで」でも,「今初音ミクに触っているはずで,そこにミクがいるはずなのに,さらに下に手を動かすことができる」という状況が発生してしまいます(=ミクの頭に手がめり込むような感覚).現実世界で誰かの頭をなでているとき,当然,頭に手をめり込ませることはできません.これも,プレゼンスが剥がれてしまう一つの大きな要因になるでしょう.
(バーチャルなでなで ではあえて手の座標は取らず回転角のみを取っているため,実際にはそこまでめり込むような感覚はありません)

「ずれる」「めり込む」「感触がない」「ハード上の制約がある」このような問題を工夫してうまく解決することができれば,よりよいVR体験をデザインすることができるでしょう.実際,IVRCで受賞するような作品は,難しい問題に対して上手な解決策を提示できているな,と感じさせるものが多いです.

一方でVRは,かならずしも現実世界の情報をそのまま再現すればよい,というわけではありません.「VRでしかできないこと」,「VRだからこそできること」,「本当にVRでやる意味はあるのか?」・・・そのようなことも考えながらVR作品を作っていければいいなと思います.


最後に,関連しそうな話のリンクを載せておきます.
VRで何か作ろうと考えている人にはぜひ一度見てほしい内容です.

Tachi_Lab -存在感と臨場感「臨場感と存在感とは何か」

INFORMATION SOMATICS LAB -けん玉できた!VR

文研NHK放送文化研究所  VR=バーチャルリアリティーは,"仮想"現実か~"virtual"の訳語からVRの本質を考える~

稲見 昌彦 (INAMI Masahiko) -VR作品をこれからつくりたい方へ

ITmedia NEWS  -「頭をなでる」「ビンタ」「ハグの拒否」などアバター同士の接触を滑らかにするVR技術、東工大が開発


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