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アプリをいらない子にしない為に

Webとアプリ

モバイルアプリの開発に携わっているとよく議題に出てきたのがWebとの差別化をどうするか?というテーマです。初めに書きますがスペースマーケットはアプリをより良くする為に頑張っている会社です。ご挨拶が遅れましたがこんにちは。Androidエンジニアの毛塚です。僕がアプリ開発を始めた時は最初からアプリでしか提供できないコンテンツでしたので以前は正直あんまり考える機会のないものでした。

とりあえずタッチポイントを増やそう、みたいな文脈で生まれたプロダクトだと特にこういった命題が付いて回りやすいのではないでしょうか。一応アプリは出しているけれどもWebで充足できているからアプリの存在意義があまり無く機能的にはブラウザで十分、そしてアプリへの習熟度が高いエンジニア(PdMやデザイナーも同じくですね)の採用が比較的難しい事などからコストの割にリターンが薄い状況となってしまい、結果的にビジネス上の判断としてはあまりコストが掛けられないという悪循環に陥ります。

アプリでしかできない事

ですので打開策として「アプリでしか提供できない価値」を模索する事になるのですがそもそもその価値とは何でしょうか?これについては僕も繰り返し考えてきました。以下の5点におおよそまとめられるのではないでしょうか。他にももしあればぜひぜひ教えてください。

・プッシュ通知など場所を問わずどこでも素早く情報を得る事ができる
・(基本的には)ブラウザより快適に操作する事ができる
・ハードウェア(カメラ/マイク/センサーなど)とのシームレスな連携ができる
・位置情報を扱える事でより適切な情報を提供する事ができる
・アプリ間連携により他サービスとの相互送客できる

他にもOSに準拠したデザインガイドライン(HIG/MaterialDesign)に沿ったUI設計による操作性の向上などもあるかと思いますがユーザーにとってそれが価値かどうか悩ましく思い、今回は除外しました。が、あるあるの失敗としてWebとの機能差があってはならない思想がアプリのUIに悪影響を与えて操作性を妨げるケースがあるので場合によっては価値と言ってもいいのかもしれませんね。

上記をベースにドメインに紐づいた提供価値が上乗せされ、そのアプリの価値としましょう。スペースマーケットの場合、機能的価値としてスペースの閲覧/検討/予約ができる事でしょうか。やや特殊かもしれないのがスペースの利用というオフラインとの接点がある事です。更にスペースの利用中の体験向上にも貢献できればアプリならではの価値提供のヒントになるかもしれないと個人的には思っています。どちらかと言うと情緒的価値との相性が良さそうな印象です。

ホーム画面をリニューアルした話

先日ですがアプリの顔とも言えるホーム画面をリニューアルしました。機能的価値の1つのである「スペースの閲覧」にフォーカスを当てた施策です。素早く快適にという観点では以前は出来ていなかったAPIからのデータを極力キャッシュ化する事と画面の表示タイミングとずらす事(起動のタイミングで先にデータを取得しておく)に加えてRecyclerViewPoolの共有やAsyncListDifferで表示コストの軽減などで以前より体感速度を向上させる事ができました。カルーセルにViewPagerを挟んで実装した為に

HomeContentRecyclerAdapter
  ┗ HomeContentCategoryRoomItemViewHolder
     ┗ HomeCategoryRoomPagerRecyclerAdapter
        ┗ HomeCategoryRoomPagerItemViewHolder
           ┗ HomeCategoryRoomRecyclerAdapter
              ┗ HomeCategoryRoomItemViewHolder

の三層構造になってどこに何があるかわかんなくなっちゃってめちゃくちゃ混乱したのはまた別のお話(Viewpager2が入るだけで一気にややこしくなりました)。また、今までに無かった視点として「直近でスペース利用を予定していないユーザーにも見るだけで楽しんでもらえる」ように特集ページへの導線強化やホスト/ゲストのストーリーを伝えるnoteの記事への導線が追加されました。スキマ時間になんとなくカタログを眺めるような感覚でそのスペースを利用した時の自分を想像しながら見てもらえると嬉しいなあと思っています。

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その他にも季節に合わせてアプリアイコンを桜に変更する情緒的価値の提供も新たな試みでした。こういった新たな価値の模索を今後も続けていきたいですがあくまで機能的価値を損なわないように意識しないとなんだかよくわからない機能がごてごて付いた何がしたいか分からんアプリになりがちなので気を付けたいところです。これは後述するビジネスサイドのバランスが取れずにKPIが不健全に設定されてとにかく手を動かせ状態になった時に起こりがちです。

アプリの価値を追い求める組織とは

ところで、アプリでしか提供できない価値を実現する為に必要な組織とは何でしょうか。組織の比喩として挙げられる2つの型、ポジションがおおよそ変わらない野球型組織とポジションが目まぐるしく変化するサッカー型組織がありますがアプリ開発においては圧倒的にサッカー型組織が有利だと思います。理由は技術とトレンドのサイクルが非常に早い事です。こういった環境では脳みそを増やす事は無駄にはならないのではないかと思います。あくまでチームで課題を見つけ解決に向かえる事、その為にチームで議論ができる事が重要です。そして僕たち私たちアプリエンジニアはアプリならではの価値提供に貢献できる可能性は高いですが一方で僕たち私たちは求められなければ言われた事だけを遂行するマシーンに徹する事もできるので職域に囚われない柔軟な組織マネジメントが求められます。

ビジネスとのバランス

もう1つ組織の話としてビジネスとのバランスは非常に重要だと考えています。時として邪悪なKPI(ユーザー視点で)はアプリの価値を落としますが割と遅効性の毒である事が多く、一時的にKPIは達成するのですがじわじわと(本当にじわじわと)アプリの価値を下げていきます。だからと言ってビジネスの成功がなければアプリの生存価値そのものが問われかねないのでエモみだけでアプリを育てる事もできません。要はバランスおじさんも要はバランスと言うでしょう。要はバランスです。

健全なKPIが設定されているかビジネスサイドと開発サイドが相互に検証できる立場にあるべきでいつどんなタイミングでもおかしいと思ったら旗を立て直せるべきです。少なくとも自分は「CVR向上の為には何をしても構わない」とか「誰かの思いつきで好き勝手に開発が進む」といった環境では成功と言える体験を得られませんでした。

アプリの価値とそれを生む為に必要な組織とは何だろうと考えてきましたが個人的には新しい技術に触れられる事より書籍やイベント参加費用を負担してくれる事よりもましてや端末購入補助制度よりも(それらはあって当然として)プロダクトの成長に寄与できているという実感こそ大事な福利厚生ではないかと思いました。「Webとアプリの差別化がいまいちできていない」状況で組織的に「アプリの価値を追求できない」状態はそのアプリもそれに携わる人達も「いらない子」になってしまいます。そしてこのような状態では技術的にチャレンジをしてエンジニアとしての成長を期待できる環境ではない確率が高いと思われます。

まとめ

まとめというほどのまとめでもないのですが、プロダクト自身が持つ課題と組織が持つ課題は表裏一体です。これはアプリに限った話ではないかもしれません。ただ、スペースマーケットではこれからもっとアプリに力を入れていくぞという意味で「魂を込める」というパワーワードが生まれるような会社ですので少しでもご興味持って頂けましたら軽い気持ちで一緒に魂を込めませんか?


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