ダズーの花
幾千年の昔、頭が天に届きそうなほどおっきな人間がいました。人々は彼を"巨人のダズー"と呼んでいます。ダズーは人間達と親しく、毎日人間に食べ物を取ってきてあげていました。そして時にはその大きな肩に人間の子供を乗せて、散歩をしたりもしていました。ダズーは他の巨人とは違って、とっても優しい心の持ち主でした。
そんなある日、ダズーは空を見上げていると、突然声がしました。
「なぜお前は人間なんかと仲良くしているんだ?」
ダズーは驚きました。姿形も見えず、ただ耳に入ってくるこの声に、ダズーは畏怖の念を抱いたのです。ダズーはすぐさま跪きました。
「お前達巨人は僕達にただ忠実であれば良いのだ。」
ダズーは答えました。
「おっしゃる通りでございます。もう二度と、人間には近づかないと誓います。」
「それではお前の心臓に鎖を突き刺そう。もしここから先お前が人間と接触しようものなら、その鎖がお前の心臓を蝕み、必ず息の根を止める。」
ダズーは涙を堪えました。そうして、ダズーは人間の前から姿を消したのです。
とある日、ダズーが仕事をしていると、遠くから自分を呼ぶ声が聞こえてきました。人間の子供達です。
「ダズー‼︎どこにいるの?いたら返事して」
しかし、ダズーは答えません。
「ダズー‼︎どうして私達の前からいなくなっちゃったの?」
しかし、ダズーは答えません。
「ダズー‼︎ごめんなさい。私達、ダズーに嫌なことしちゃったんだよね?」
しかし、ダズーは答えません。
しばらくすると、子供達の泣き声が聞こえてきました。ダズーは耳を塞いで走り出しました。涙を拭い、目の前にある大きな山の頂上まで走りました。するとそこには、太陽に照らされ、凛と輝く一輪の花が咲いていました。
子供達は涙が枯れる程泣き喚きました。そして、1人の男の子が「帰ろう」と言ったその時でした。目の前に、ダズーが現れたのです。「ダズー‼︎」子供達はダズーに飛びつきました。しかし、ダズーは何も答えず、手に持っていた花を子供達に渡しました。そして口を開きました。
「いつか、…立派な大人になるんだよ。」
その時でした。ダズーの心臓に、激しい痛みが轟きました。ダズーはすぐさま子供達から逃げるように走り出しました。
命の続く限り、ただひたすらに走り続けました。そうしてダズーは北の果ての広い氷の地にたどり着きました。そして、大きな氷の陰に座り込み、しばらくしてダズーの心臓は、動くのをやめてしまいました。
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