死刑囚
幾千年の昔、死刑囚が死刑執行人に言いました。
「俺は何人も人を殺したせいで今から死刑になる。生まれてこの方人に迷惑しかかけねえ人生だった。こんなことなら生まれてこなきゃよかったのになあ」
死刑執行人は言いました。
「生まれてきたものはしょうがないだろう。」
「はあ。お前は偉いよ、俺みたいな極悪人をこの世から消し去ってさ。いいよな、お前には十分生きる意味がある。俺の人生って何の意味もなかったなあ」
「いいや、そんなことはない。私の代わりは誰にでも務まる。私が死んだところで世界には何の影響もないんだ。皮肉なことだが、極悪人の死には意味があり我々のような平凡な人間の死には全くもって意味がないのだ」
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