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漫画『HUNTER×HUNTER』からボクシングを学ぶ

『HUNTER×HUNTER』は、冨樫義博による日本の漫画作品。
その主人公ゴンの修行(実戦練習)のシーンを、ボクシングの試合やスパーリングに置き換えて、実戦練習をする時にどういった意識で挑めば良いのか?その方法を考えてみたい。

ちなみに今回の内容を知れば、感情のある人間と人間が戦うことで、理論や能力の値だけが勝敗を決めるのではないことが理解できて、ボクシング観戦がより面白くなると思います。
「なぜそこで攻めなかったのか?」「なぜそこでクリンチで逃れなかったのか?」
など、真の理由が想像できるようになります。


主人公ゴンの実戦練習の目的
【現状把握と課題】
才能も能力もあり、攻撃の時の思い切りも良いが、経験不足による実力不足。自分の長所と短所に気づけていない。
「必殺技:ジャジャンケン」 一撃必殺の右パンチ 一撃KOできる威力 タメとモーションが大きく攻撃に時間がかかる

【実戦練習で達成したい内容】
自分の技の特徴(長所・短所)を自覚して、対戦相手に対してどうすれば通用するのかを学び身につける。

一撃必殺のジャジャンケンをフェイントに使いやがった!!

主人公ゴンは必殺技ジャジャンケンを使おうとするが、タメとモーションが大きく攻撃に時間がかかるので、打つ前に出鼻をくじかれ必殺技その物が打てず、効果的な攻撃がまったく当たらず劣勢だった。

文字通り、手も足も出ずに負けが濃厚になった瞬間に、まさかの主人公ゴンがジャジャンケンのタメに入った。
通用しないのにジャジャンケンのモーションに入ったゴンを見て観戦していた仲間は、もう思考停止してヤケクソになったのかと驚き、対戦相手もゴンの期待外れの行動に落胆し怒りの表情でジャジャンケンを潰しにいった。

その瞬間!
ゴンの口から相手を挑発する発言が飛び出す!

ゴン「やるなら殺す気でこい!」


相手は驚いて動揺し、一瞬動きを止めてしまう。すぐにジャジャンケンを潰しに動くが反応が遅れたせいで焦ってしまう。ギリギリ何とか間に合い、出鼻をくじく拳がゴンに届いたと思った瞬間!!

ゴンが消える!

なにぃ!消えた!?
一撃必殺のジャジャンケンをフェイントに使いやがった!!

ゴンは相手のサイドに回り左フックを当てることに成功。
手も足も出なかった相手に必殺技ではなかったが、ついに1発クリーンヒットを取ることに成功する。

格闘技の心理的要素

ゴンがとった作戦は、攻撃までに時間がかかるジャジャンケンの弱点を逆手にとった敵の心理を利用した作戦だ。

モーションの大きいゴンのジャジャンケンは、野球で例えるなら直球ストレートの打ちやすい、いわば狙い球の1つ。打ち返さなければならないど真ん中の絶好球。

とはいえ剛速球ゆえタイミングを間違って見逃すと三振アウト!
「打てる!打たねば!」その思いが筋肉に必要以上の力を入れさせる。それが力みとなる!来たと思う瞬間、余計な力が入る。

それはボクシングでも同じことが言える。選手が意図して抑えなければエネルギーは力んだ箇所へ集まり、打とう!放とう!とする瞬間さらに動きが大きくなる。選手が未熟ならば、あるいは熟練者でも平常心を失っていればエネルギーがよどんだり、または逆に素直に流れ過ぎたりする。

エネルギーの流れが動き表れるので、対戦相手からすれば攻撃の瞬間が容易に察知できる。

人間同士の戦いでは、いかに相手の心理に影響を与えるかが重要になってくる。
心の動きがエネルギーの動きに直結し、身体の動きに表れる。

戦いの中でこれらを無意識に学んだゴンが、相手の心理を上手く利用した結果フェイントは見事成功する。この作戦はジャジャンケンの威力を知っている者ほど効果がある。ゴンが技を出そうとする瞬間、技の破壊力を知っている者ほど「来る!」という恐怖心が、自身の平常心を削る。

モーションが大きくタメの長いジャジャンケンは敵に知られてしまったら使いにくい技だと思っていた。それが弱点だと。
違った!デメリットを逆手に取れば、いくらでも応用が利く!
相手をしっかり観察して相手の動きに対応して、自分の身体もよりうまく操れるようになれば、相手からすればタメのモーションがフェイントかジャジャンケンかを判別するのが限りなく困難になる。

動きが読まれにくくなり、攻撃が当たりやすくなる。

相手の心理を利用した戦略

僕、トミコーチこと冨田も相手の心理を利用した戦略を立てて戦います。
1ラウンド目に徹底してカウンターを打ち込みます。それも狙ってますよ!と言わんばかりに顔の表情やフォームなどで、あえて相手にわかるように表に出して狙います。

そうすることで4ラウンド目以降などスタミナが切れてきた時や、ダメージを受けて一気に攻められるとヤバイ時などに、1ラウンド目と同じカウンターを狙ってるような顔の表情やフォームをするだけで相手の追撃が止まります。
相手からするとチャンスなのか、罠で誘われてるのか判別できなくなる。

1ラウンド目で相手に与えた心理的投資額を、自分が苦しい時に回収する作戦です。

こういった心理的な作戦が勝敗に影響するんです。

井上尚弥選手なども試合開始早々の1ラウンド目に相手のガードの上からでも良いので、一撃必殺の強いパンチを1発だけ打ち込みます。
そうすることで、相手に「これをくらったらKOされる」と恐怖の心理を植え付けます。
すると、今回の主人公ゴンの実戦練習と同じような効果が出せて、戦いを有利に自分のペースにもっていくことが可能になるんですね。

試合では、身体テクニックや技の駆け引きだけでなく、こういった心理的な駆け引きも行われてるんです。
そしてこれらは実戦の経験値が少ないと身につかないんです。経験値によってのみレベルアップする能力なんです。

当てないマスボクシングは、身体テクニックや技の駆け引きのレベルアップには効果があるが、殴る!殴られる!気絶するかもしれない。病院に搬送されるかも知れない。死ぬかもしれない。といった恐怖などの心理的要素が絡まないので、本当のボクシングの経験値は積めないんです。
戦闘能力のレベルは上がりません。
「型」が上手くはなるかも知れないが、真に強くはなれないんです。

ボクシングなど格闘技をされている人で本当に強くなりたい人は、スパーリングをたくさんして経験値を積み上げましょう!

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