手術室...2016.7.11

 2016年7月1日。右乳房切除+センチネルリンパ節生検。

 昔はどうだったか知らないが、いまや手術室へは自分の足で歩いていくのが常だ。今回もそう。担当看護師と並んで、まるで今日の天気について話すような軽い調子で、手術前に確認しておくべき事項をすり合わせながら歩く。

 そうして手術室の前へ着くと、扉がスッと開かれる。

 手術室に足を踏み入れると、なんとなく高揚する。肝臓の手術のときもそうだったけれど、このかんじは嫌いじゃない。明るく広い空間の真ん中に小さな手術台があり、麻酔科医が待ち構えている。まわりにはありとあらゆる機器が取り揃えられていて、ついワクワクしてしまう。手術台に横になるなり、麻酔科医が説明とともに手際よくあれこれと身体に機械を取り付け、点滴のラインを確保する。

 手術中、わたしのバイタルを管理するのは麻酔科医だ。彼らがわたしを生と死のギリギリの境界へと導き、手術中はつねにその位置をキープしてくれる。その高度な技術に反して、彼らはほとんど目立たない存在だ。だからわたしは目一杯の敬意を込めて、「麻酔科の先生、今日はどうぞよろしくお願いします」と告げる。その言葉を聞いた麻酔科の女医は、貫禄のある堂々とした様子で「任せてください」とニッコリ笑った。

 そうしてわたしは、主治医の登場を待たずに無意識下へと落ちていく。次に目がさめるときには、すべてが終わっているんだ。

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