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「伝わらないこの感覚」の解説、伝わるといいな😄翻訳のbackstage


 前回の翻訳のbackgroundクイズに挑戦していただき、考えてくださったnoterさん、ありがとうございました!少し解説が長くなりますが、お付き合いいただけたらと思います。

 「伝わらないこの感覚」の翻訳で、日本語の内容を理解した上で、一番自然な流れで英会話するとしたら・・・という会話表現をショーン先生がつくってくれました。

A: Excuse me, would it be possible to have a smaller lunch for tomorrow?
B: Yes, we can do that, but may I ask why?(原因究明の質問が必要)
A: Well, it was too big for us.
B: Oh, I see. But it's okay if you don't finish it. You can throw away the leftovers.
(原因判明→解決策の提案「残してもいいし、捨ててもいいよ」)
A: Oh no, we don't want to do that. We don't like to waste food. We're Buddhists.
A: Ah, I see. I didn't know that.

うん、確かに英語だとこういう会話になる。納得。

日本語では
①そもそも日本語は文脈に依存する言語なので、詳細に渡って説明することが少ない。(色々と省略している)
②お客様の指示や要求に対して、スタッフは「承知しました」と返答することが多く、理由の説明を求めない傾向にある。

英語では、
①文脈に依存する傾向が低い言語なので、省略しないで細かく説明する。
②お客様から何らかの問題が指摘された場合、「なぜですか?」と聞き、必要があれば更に質問をして、原因究明に努める。

 上記のような違いがあるため、日本語の会話を、そのまま英語に直訳していくと、英語の会話を成立させるための情報が不足した状態になってしまいます。その結果、会話の流れが不自然になってしまいます。

 元々の日本語のセリフを直訳していくと、以下のようになります。

A: We'd like a smaller amount of lunch tomorrow.
B: Why is that? Just leave as much as you wish.
A: We can’t eat it all.
B: Then, just throw it away.
A: We don't want to waste food.
B: Why not?
A: It's because we are Buddhists.
B: Now, I get it.

 最初の、「明日の弁当は少なくして」「(量が多かったんだね、じゃあ)残せばいいよ」というやりとりが、high-contextの日本語では成立しますが、low-contextの英語では成立しません。
 「どうして?(量が問題だね!)残しなよ!」という流れにならず、"May I ask why?"とお客さんに尋ねて、返事を待ちます。その背景には、「味が気に入らない?」「何か食べ物に問題があった?」「宗教上の理由で食べられない食材ばかりだった?」「体調が悪くて食欲がない?」という様々な可能性がある中で、「量が多かったんだね」と理由を断定する決め手に欠けるからです。

以上のような理由で、訳はこうなりました!(説明が長すぎる!w)

A: We’d like a smaller lunch for tomorrow, please.
B: Is something wrong (with the food)?
A: We can't eat it all.
B: 丁寧な表現 It's okay to throw it away.
(少しぶっきらぼうな店員さんならば、Then, just throw it away.になりそうです )

 実を言うと、私とショーン先生の英訳を受けて、ミヲリさんが「どうして?」という日本語を加えてくれたんです。そのおかげで、不自然さが少し消えました!
 以前の影のお話のように、日本語を英訳することで、マンガの絵やセリフに影響を与え合うことがあり、「これが作品づくりの面白さ、化学反応みたい」と、大変興味深いです。皆さんにも面白さが伝わっていたら、とても嬉しいです☺️

イラスト 成冨ミヲリさん 
「伝わらないこの感覚」より抜粋

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