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22歳白血病患者が考える「ゆたかさ」とは

この記事に興味を持って頂き、ありがとうございます。Tと申します。
私は現在大学院生で、タイトル通り白血病と診断され、現在抗がん剤治療を行っています。

この記事を書こうと思った経緯

私は2020年5月20日に急性白血病と診断され、現在抗がん剤治療を行っております。若年層(0~39歳)で白血病に罹患する割合は10万人に2~3人(参照:がん統計'19 公益財団法人がん研究振興財団)と推定されており、その確率は僅か 0.00003%

つまり私は、現在他の人が滅多に経験しないような稀有な体験をしております。そして、こんな稀有な状況にいる私だからこそ、一風変わった視点から「ゆたかさとは何か」を捉えることにより、皆様にその考えを共有することが出来るのではと考え,執筆致しました。


結論:「ゆたかさ」とは「書き換え力」

早速、結論から申し上げます。私が考える「ゆたかさ」は「書き換え力」です。一見「ゆたかでない状態」に自分がいたとしても、「書き換え力」により「ゆたかな状態」へ換えることが出来れば、人生における困難や逆境を含めた人生全てを「ゆたかな状態」にすることが可能となると考えるためです。

このように端的に説明させて頂きましたが、余りに抽象的すぎるため、私の事例で順を追って説明させて頂きます。直近で私が「ゆたかでない状態」となったエピソードを2つ紹介し、その後「書き換え力」を用いてそれらを「ゆたかな状態」へ変換した、という構成です。

エピソード①:「ゆたかさ」を失う(part1)

私は、今年3月に大学を無事卒業し大学院へ進学しました。4月から新たな環境で自己研鑽に励めることの喜びと、新しい仲間に出会える嬉しさで心が満たされておりました。

その矢先で遭遇した、人生最大の困難

白血病と診断された5月20日、人生丸ごと奈落の底へ叩き付けられる感覚が体を巡りました。さらに、完治には長期間(半年~1年)の治療が必要で長期休学は避けられないこと、その治療法も決して楽な道のりでないことを知ると、

留年せずに勉学に勤しんだ努力が無駄となった挫折感
描いていた大学院生活を一瞬のうちに奪われた喪失感
これから始まる、長く苦痛を伴う治療に対する絶望感

これらの負の感情で心は溢れてしまいました。

終いには「どうして自分がこんな病気に」、「何か自分は悪いことでもしたのか」という怒りがこみ上げ、この時の私は明らかに「ゆたかでない状態」であったと言えます。

エピソード②:「ゆたかさ」を失う(part2)

幸いなことに、今まで私は人生で大きな挫折を経験することなく過ごしてきました。周囲の人にアドバイスを求め、それを堅実に実行に移してきたからと考えています。

しかしながら、この人に頼る習慣を幼少時代から継続した結果、私は大きな問題を抱えることになりました。それは、

「本当は、自分が何をしたいのか分からない」

ということです。自分の人生を決定づけるような重大な決断の時に、周囲の人から「君には○○が向いている」や「君の考えは甘い。○○の方が良い」等の助言を頂くと、盲目的に信じてしまう傾向がありました。

この事実に気づいたのは、就職活動に取り組んでいた大学3年~4年の時。面接で「あなたの理想は何?」「うちで何がやりたいの?」と問われる度に、一貫性の無い回答ばかり行い、自分自身について全く理解していなかったことを思い知らされました。この時の私は、

優柔不断すぎる自分に対する無力感
今まで自己理解を怠ってきたことに対する後悔

という負の感情が形成され、「ゆたかでない状態」にあったと言えます。

余談ですが、就職活動で多くの学生が同じような経験をしていると感じました。


エピソード③:「書き換え力」で「ゆたかな状態」へ

これまでの話を整理すると、私は2つの要因により「ゆたかでない状態」状態にありました。その要因とは、次の2つです。

22歳という若さで、白血病を罹患したということ
人に頼りすぎる習慣により、自分を全く理解していないこと

私は、この2つの要因を組み合わせ「書き換える」ことにより正の感情を形成し,自分が「ゆたかな状態」となるようにしました。それは、

「白血病の罹患が、自身をより深く理解する時間を与えた」

ということです。この書き換えにより、私は「白血病を罹患した」という一見絶望的な事実に対しても、自分が抱える大きな問題を解決するチャンスが生まれたと捉え、「正」の感情を形成することが可能となりました。具体例として、

「自分を全く知らない」という問題を解決できる期待感
闘病生活中に自分がすべきこと即ち使命感
自己理解により自分の理想へと近づく充実感

等が挙げられます。

もしも、私が就職活動後に「自分について深く考えたいので休学したい」と訴えても、誰も賛成などしないでしょう。かといって多忙な学生生活の中で、今まで怠ってきた22年分の自己理解に必要な時間は、到底確保できるとは思えません。しかし私は、白血病の罹患で生じた治療期間によりこの時間を極めて合理的に入手することができたのです。

白血病の治療法の1つである抗がん剤治療は、その副作用により身体的にも精神的にも辛い治療法と言われています。故に、入院生活中は原則として個室で過ごし、周囲の人からも「治療に専念すべき」との助言を頂きました。これは、抗がん剤治療の性質から、私の「人に頼る習慣」が発動せず、周囲の干渉が無い環境で長期間生活できることを意味します。

これらに気づいた時、私にとってこれほど長期間、自身を理解するのに適した環境はないと考えるようになりました。

以上のことから、私は「書き換え力」により白血病を宣告された直後と比較して明らかに「ゆたかな状態」となり、比較的充実した闘病生活を送ることが可能となっております。

これに加えて、私にとって夢や理想を確立することは自身に生きる原動力を与えることを意味します。闘病生活中にこれを確立させることが出来れば、この生活は私が充実した人生を送るために必要不可欠な期間だったと考えることができます。

全ての治療を終えた後に、「この病気にかかって心の底から良かった」と思えるようになること、これが私の最終目標です。

以上、「書き換え力」を用いて「ゆたかな状態」へ書き換えた、私の事例を紹介させて頂きました。

総括:皆様に伝えたいこと

私たちがどれだけ「ゆたかさ」を保つように努力をして生きてきたとしても、思いもよらない形で「地獄」はやって来ます。私の白血病もそうですし、今回の爆発的な流行は、その最たる例でしょう。激動の時代が到来すると叫ばれる中でも、私たちが「ゆたかさ」を保ち生き続けるために何が必要なのか。それは、「地獄の中でも'自分なりの天国'を築く力」でありそれが「書き換え力」であると、私は考えます。


以上、ご一読頂きありがとうございました。
読み難い箇所も多々あったかと思いますが、この記事が皆様のゆたかさを少しでも向上させることができれば幸いです。







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