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企業法務と弁護士の「これまで」を振り返る

この記事は法務系アドベントカレンダーの13日目の記事です。法務のいいださん(いつもnoteの記事を拝見しております!)からバトンを受け取りました!


はじめに

私は68期の弁護士で、独立して5年目になりました。
弊所(一応リンクを設定しましたが、ホームページに何も書いていなくてすいません。。)は、主にIT業界(SaaSやシステム開発系)、エンタメ業界(アニメ、ゲーム、映画、音楽)のベンチャー企業やクリエイターを中心に法務面のサポートをしています。

ここ最近、都内において企業法務(ここでは、広い意味で企業にまつわる法務一般を言うものとします。)の分野で独立する、ないしは独立を考えている同世代の弁護士が増えてきたように感じます。

個人的にこのような状況はワクワクします。企業法務の分野で、若い世代の小規模事務所同士が、案件ベースなどで協力し合う機会が増えてくるのかなぁなどを考えているわけですが、そんな折に思うのが、
今後、企業法務の分野において、弁護士はどのように活躍していくことになるのか?」
ということです。

残念ながら現時点でこの点についての答えをもっているわけではありません。
そこで、上記の点は今後の検討対象として、今回は、その前提としてそもそも弁護士がどのように企業法務に関わるようになり、現在にまで至るのかをざっくり整理してみました。

弁護士法の制定

弁護士法が定められたのは明治26年(1893年)になります。
(それ以前は代言人に訴訟への関与が認められていました。なお、江戸時代では公事師(という訴訟関係人を泊める旅館の経営者)が訴訟に関与していたようです。)

「職業史としての弁護士および弁護士団体の歴史」によりますと、当時の弁護士法では、弁護士の職務は裁判所における訴訟行為とされていたようです。訴訟外の法律事務が禁止されていたわけではないようですが、やはり弁護士といえば訴訟というイメージであったようです。

その後、弁護士の活動はしばらくの間、訴訟が中心であったようで、「日本の企業法務をめぐる伝統的条件とその変容」において、企業との関係においても戦前の弁護士の活動は訴訟代理が中心であったであろうとの指摘がされています。

渉外事務所の誕生

戦後になると、まずは海外の弁護士(準会員)を中心とする法律事務所が外国企業や日本企業の渉外法務のサポートをするようになったようです。そして、1960年代には日本の弁護士を中心とする法律事務所も渉外法務の領域を手掛けるようになったとされています。(日本の企業法務をめぐる伝統的条件とその変容」参照)

このように、戦後において、それ以前の弁護士=訴訟という考えが拡張され、主に渉外事務所の文脈の中で企業法務が発展していきました。

インハウスの発展

では、インハウス(企業内弁護士)はどのように発展していったのでしょうか。
日本の企業法務をめぐる伝統的条件とその変容」では、1960年代以降、大企業を嚆矢として法務専管部門を設置する企業は多く現れたものの、弁護士を雇用する企業は非常に少なかったとされています。
また、「組織内弁護士の実務と研究」でも、1990年代までの日本に組織内弁護士はほとんど存在していなかったとされています。
その要因は、当時の弁護士数の少なさにあったようです。
しかしながら、その後の弁護士数の増加もあって、年々インハウスの数は増えていき、2023年6月末時点のインハウスの数は3184名となりました。

ちなみに、インハウスが発展すると外部の法律事務所への依頼が減少するのかといったらそうではなく、それぞれの役割が明確化され、外部の法律事務所には専門性の高い案件や社内で抱えるには負担の大きい案件が依頼されているといったことはよく指摘されているところだと思います。

近年の傾向

近年、上記とは別の文脈で企業法務に携わる弁護士が増えてきていると思います。

すなわち、スタートアップの盛り上がりです。
この盛り上がりを受け、スタートアップ向けのサービスを提供する法律事務所が増えるようになりました。これらのサービスを提供する上では、必ずしも事務所が大規模である必要はありませんし、特定の事項の専門性というよりは、特有のスピード感をもって様々な法的事項を対処することができる能力が必要とされます。
ここで、若い世代の弁護士が、小規模な事務所でありながらスピード感をもって企業法務に携わることが多くなったように思います。

さらに、これまでの「外部の法律事務所」 OR 「インハウス」という二択から、その中間的な選択肢が出てくるようになりました。
すなわち、外部の法律事務所がインハウスの外注を受けるといったものです。インハウスを雇用するよりも当該サービスを利用するほうがコストが低く、通常の顧問よりは社内に入り込む点でメリットがあるよう設計されています。
また、インハウスでありながら、法律事務所に所属して弁護士業務も行うといった形も見受けられるようになりました。
こういった新しい選択肢の誕生も、企業法務に携わる弁護士を増やすことになった思います。

まとめ

これまで述べたとおり、企業法務は戦後の渉外事務所のもとで発展し、インハウスもここ20年程度の間に発展していったものでした。この流れにおいては、外部の弁護士が企業法務を中心的な業務として行う上では、一定、事務所の規模感や専門性が要求されていたように思います。

他方、スタートアップの盛り上がりにより、弁護士がスタートアップの法務に携わる上では事務所の規模感や高度な専門性というより、スピード感をもった幅広い対応力が必要になり、この点で企業法務に関わる弁護士が増えました。

そして、これからのお話ですが、近年、スタートアップだけでなく、フリーランスの活躍が期待されています。今後、弁護士がフリーランスの事業に対して法務のサービスを提供する機会も増えていくであろうと思います。

このような流れの中で、
「今後、企業法務の分野において、弁護士はどのように活躍していくことになるのか?」
という最初の問に戻っていくるわけですが、

最初に申し上げたとおり、答えはでておりませんので、引き続き考えていきたいと思います(^^)

お読みいただきありがとうございました!

明日はChief Oniku Officerこと重松先生のエントリーです!(あのお肉のお店いってみたい…)

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