見出し画像

「B to Ext.E」で循環サイクルの内側へ

2017年10月16日に企業の新規事業・イノベーション創出に取り組む方々が集まる出島空間として、Innovation Space DEJIMA(以下、DEJIMA)は東京都五反田にオープン。今日でまる3歳を迎えました。当時所属する組織ヘッドの「出来上がったモノに責任を持つSIモデルを築かないと、国際競争に勝てなくなる」という言葉に共感しつつ、 DEJIMA設立を大きく後押しして貰ったところが非常に大きい。

同業他社、各業界の事業会社が出島型組織やスペースを作り出していたため、DEJIMAは特段先行していたわけではない。ただ、自社アセット(製品やサービス)の外部開放を軸足にした「Innovation Lab」というコンセプトが多かったため、DEJIMAは「Corporate Innovation Space」と自己分類し、オリジナルコンテンツの実装に注力してきた。
SIerという業態は基本的には顧客のために個別にインテグレーション(組み合わせ・組み上げ)、テーラーメイド開発(個社対応)をして納品するビジネスモデルのため、アセット開放のようなことがしにくい背景がある。また、販売代理店契約しているITベンダーのプロダクト展示のようなショーケースでは、先述の「出来上がったモノに責任を持つSIモデルを築かないと」という目的を達成できないのでショーケース化も避けたかった。

そもそもSIerとは何か。20代に北米で仕事をした時に現地でこの言葉が通じなかったときに日本特有のビジネスモデルであることに衝撃を受けた(米ではIT Service Companyと言わないと理解してもらえない)。SIerは企業の情報システムを内製開発を主流とする時代からの反動的なニュアンスが名称にも反映されているが、Wikipediaを引用するとこんな説明がされている。

日本において、システムインテグレーターはパッケージソフトウェアやSaaSの販売、アプリケーションサービスプロバイダなどを行う場合もあるが、カスタムメイドの受託開発が圧倒的に多い。つまり下請け(協力会社)を組み合わせて1から作るのが、日本のシステムインテグレーターである。あえて説明すれば垂直統合的である。海外ではソフトウェアパッケージに業務形態を合わせるという考え方が主流であり、ユーザー企業が直接ITエンジニアを雇う場合が殆どであるため、システムインテグレーターの隆盛は日本特有の現象である。

最近日本の情報システムの発展、DXの壁を孕んでいるのはSIerであるなど、各種メディアなどでもSIer叩きで賑わっており、内製開発万歳いう声が強まる印象にやや違和感がある。スピード感を重視してリリースしながら成形・改良しているようなSaaS型サービスや新規事業であればマッチするが、基幹系の重厚長大な保守体制が必要なシステムを内部で抱えるリスクはシステムだけの話ではなく、経営戦略の話。さらには企業体の目線だけで答えを探そうとすると、楠さんの指摘する個人の雇用問題に起因していることも見逃してしまう危険性もある。

単一企業がその企業枠を超え、外の企業と混ざりあることでIT業界、社会の抱える課題の本質にはじめて近づくことができる。社会課題ドリブンな事業開発の着火剤の存在。
そしてもうひとつは企業が個人と雇用を中心とした価値領域というBtoB/BtoEでは触れ合いきれない機会をプロデュースすること。終身雇用では労働組合などのBtoE的なアプローチでカバーできるはずだが、Eは外のE(External.E)である必要性が急速に高まっているのではないか。

B to Ext.Eの必要性は人生100年時代の到来、終身雇用終焉の影響だけでなく、ひとりひとりが複雑化した社会を生き抜く中で、多様な経験を経ないと生き抜くことができないことことの打開の道ではないか。

少し話を変える。かねてから指摘されてきた東京一極集中の問題に対して、COVID-19で着火された都市と地方の関係変化の胎動。このタミングでこの問題解決の糸口を見つけなければいつ見つけるのだ、というのはその通りだと思う。ただ、What思考は都市とWho思考の地方では、ベースラインとなる価値観が異なる。これは企業と個人の関係に非常に共通項が多い。自分もコミュニティ活動を始めたとき、What思考だった自分は「このコミュニティは誰のため、何のため?」「目的やゴールは?」などと明確に定義しようとしたことがあった。COVID-19で地方と都市の関係が大きく変化し、地方に新しい価値が創出されるのは密回避の観点からも自明であるがWhat思考な層にWhoの価値を何度唱えても響かない、ということはより注意したい。ただWhatとWhoは局面によってどちらも必要だとすると、多拠点生活やデュアラーの必要性(人が機能をブリッジする世界)が証明できるのではという気もするし、領域の奥深さを感じる。

BもE or Ext.Eと多様化・複雑化していることで、生き抜く各々がストレスを抱える機会も増えるわけで、結果的に精神疾患が増えている統計も無関係ではない。総人口が減っているのに感情障害を抱える患者数は右肩上がり。人と企業の関係性変化によって不平不満を個人が企業にぶつけるような単純な話ではく、SNSなどのITサービスとの付き合い方がネガティブに働いてしまった悪例である。企業と個人の関係のグランドデザイン。それは楠さんが指摘する雇用問題がアメリカのようになったらまた変わりそうとは思うものの、いまの転換期だからこそ最大限、変化の波に自ら乗ることで体感をし、経験し次の世代に繋げたい。

一番最初に立ち入ったのはテクノロジーの世界。最初にSIerに入ろうと思ったのは色々な(多様な)ビジネス(企業)に触れ合えるから。飽きっぽい自分にはマッチするし、理系出身の知識も活かせるのではないかという考えからだったが、コミュニティデザインやイノベーションスペース企画運営に携わるとか思わなかった。まだまだ知らない領域がずっと広がっている世界に触れられるのであれば、こんな幸せなことはない。エネルギーを貰いながらその熱源に対しても還元するギバーの精神で、循環型サイクルの内側の一部になっていきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?