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【春秋一話】 11月 郵便サービス変更を効果あるものに

2021年11月15日 第7118号

 NHKの大河ドラマ「青天を衝け」が話題だが、10月6日の放送では新政府による改革の一環として前島密が郵便制度を提案し、翌明治4年に実施される場面が放送された。その郵便創業から150年の今年、郵便制度は大きな節目を迎えた。
 郵便配達は創業当初から土曜、日曜に関わらず毎日配達されていたが、1968(昭和43)年に日曜日の普通郵便の配達が休止された。
 この年は郵便番号の導入もあり、機械化など業務の効率化が図られた年である。本年10月2日(土)から始まった土曜日の配達休止はこの時以来の大きな変更となる。
 働く環境を改善しサービスを安定的に続けるため、郵便法で週6日以上となっていた配達日が去年の法改正で週5日以上に変更されたことから土曜日の配達が休止された。
 これまでは普通郵便を週に6日配達し、加えて夜間や休日に速達やゆうパックなどの配達を行うための要員が必要だった。
 社員の勤務時間は週40時間であるため、週2日の休日、さらに有給休暇などもあり、必要人員の配置は職場での重要な課題であった。
 週40時間の適用は正社員だけでなく非正規社員にも適用されるので、今回の土曜日配達休止により普通郵便の配達を担当する非正規社員については土曜、日曜に休暇を充てることができる。
 現在のような人手不足の中では配達要員を採用しようにも応募者がいないというが、このような人手不足にも対応できることとなり、外務社員の働き方だけでなく将来にわたる安定的な配達業務の確保にも資することとなるだろう。
 日本郵便は、土曜日に出勤している約5万5000人の配達員のうち約4万7000人の再配置が可能になり、約500億円の収益改善効果があると公表している。
 一方もう一つの大きな変更は、来年1月以降に始まる送達日数の繰り下げである。郵便法の改正により普通郵便の送達日数制限を現行の「差出日から原則3日以内」から1日繰り下げて「原則4日以内」とすることとなった。
 1984(昭和59)年2月に、鉄道中心だった輸送方法を自動車便による輸送体系に変更し、同時に同一都道府県内において翌日配達、その他の府県宛はできる限り翌日配達、それが困難な地域においては翌々日配達という体制が確立された。その後の様々な輸送体系の見直しにより翌日配達地域は拡大され今日に至っていた。
 今回の送達日数の繰り下げはこれを見直すもので、普通郵便の翌日配達地域はなくなる。このことにより、主に郵便内務の業務の流れが大きく変わり、これまで深夜帯中心だった流れが、日中帯中心に変わる。普通郵便以外は翌日配達体制が維持されるので全てが変わるわけではないが、特に地域区分局などでの深夜帯の従事者が少なくなる。
 また、早朝に業務が集中していた配達局においては作業が前日の日中帯に移行することになる。
 早朝の労働力として頼らざるを得なかった短時間の非正規社員を日中帯に移行することにより、安定的な雇用が可能となり、管理者が早朝から夜間まで業務に従事することもなくなるのではないだろうか。
 今回のサービス変更は地域区分局、集配局などいわゆる単マネ局のオペレーション、マネジメントに関わるものであるが、コロナ禍を契機に変わってきた世の中の変化とともに、社員にとっての働き方改革だけでなく管理者にとっての働き方改革にもつながることだろう。
 利用者にはサービスダウンとなる変更だが、日本郵便社内においては効果的に活用し、現代の日本の経営課題でもある後継者人材の育成につなげるなど実のあるものとなることを期待したい。
(多摩の翡翠)

カワセミのコピー


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