いわもとQ

 いわもとQとは、首都圏に住んでいる人の中でも知っている人は少ないと思いますが、立ち食い蕎麦屋です。店内に椅子はありますが、立ち食い蕎麦屋ということになっています。2か月ほど前でしょうか、全店舗閉店したのを知りました。店舗は移転を繰り返し、場所を転々としているのですが、晩年は新宿歌舞伎町、浅草、池袋、高田馬場の4店舗だったかと思います。

 初めていわもとQを訪れたのは13~14年ほど前になるでしょうか。安いけど美味しかったんですよねー。蕎麦も天丼も。他の立ち食い蕎麦屋に行く気がしなくなるほど、他の店より安くて、他の店より圧倒的に美味しかったんです。

 コンセプトは「ありえないお店を目指す店」。面白いですよね。何かもうビビビッと来て、私はこのお店で働き始めました。短い期間でしたが、辛く楽しい日々でした。唯一の誤算は、毎日のように変わる勤務時間帯と、深夜シフト→朝シフトの切り替わりに身体がついていけなかったことですね。生活のリズムが掴めず、深夜シフトの後で1日休んで朝シフトなんて休んだ気がせず(朝10時くらいに家について、寝て起きたら18時とか、朝シフトのため朝5時くらいには家を出るので、そのまま夕飯食べて寝るだけなので休みを満喫できない)みるみる体調が悪くなり、最後の方は身体が重ーくなって思うように動かなくなりました。

 当時は店内で出汁を取ってつゆを作って、機械でそば粉を捏ねてそばを作っていました。仕込み作業も多く、作業は誰がやっても均一の品質になるようなものではなく、それなりの熟練度を必要とするものでしたが、ここが「ありえないお店を目指す店」として譲れないこだわりなんだろうなー、と思っていました。が、いつの日からかセントラルキッチン方式を採用したようで、この時点からもう「ありえないお店を目指す店」ではなくなったのだと思います。

 いわもとQを辞めてから、いわもとQを訪れたことはありませんでしたが、2023年7月、たまたま新宿に用がありました。いわもとQに行きました。一人でオペレーションしていて、店内に客が増えてくると券売機を止めたり、停電してしまって復旧方法がわからないとか、ひどいオペレーションでした。蕎麦と天丼が出てくるまで、40分くらいは待ったと思います。そして味は、私がいわもとQで働いていた当時の方が美味しかったです。店を出ると「移転する」との張り紙がありましたが、いわもとQはそのまま全店舗閉店となりました。

 奇跡的に閉店前に新宿に用があったこと、何か運命的なものを感じてしまいました。約20年間に渡って東京で立ち食い蕎麦屋を経営し、4店舗まで増やしたこと、奇跡的なことだと思います。そのお店の従業員として僅かでも関われたこと、とても嬉しく思います。週末金曜日、土曜日の歌舞伎町店の深夜シフトはとても辛かったですけどね。

「転職は慎重にな」
と経営者の方に言われたことを思い出しました。今まさに、今の会社ではソフトウェアQAの仕事を続けられなくなりそうで転職を決意した所です。「慎重な転職か?しっかり考えたか?」と問われると、「YES!」とは言えないかもしれません。人間、大事なことは後から思い出すものですね。

 最後に、今の私の気持ちです。

 いわもとQよ!復活してくれ!


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