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箱夢の話集 第四集

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ショートショート
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#はる

【SS】焚火の輪

宵闇に焚火が燃えている。 そのまわりを村人たちが囲み  歪んだ大きな人の輪になっている。 …

Tome館長
8か月前
15

【エッセイ】言わぬが花

「言うも花、言わぬも花。  同じ花なら、言うてまえ」 というわけで  皆さん勝手に喋ったり…

Tome館長
9か月前
18

【童話】歌姫

古き良き音楽の都。 ここで歌姫は美しい産声をあげた。 父は骨董品の蓄音機。 母は由緒あるパ…

Tome館長
10か月前
17

【語り】天の渡し

天の川を小舟で渡っていた時のお話です。 風はなく、ほとんど波もありませんでした。 川面に…

Tome館長
11か月前
14

【怪談】約束

約束通り、彼女は現れた。 「会えて嬉しいわ」 彼女の笑顔は透けていた。 その向こうに景色が…

Tome館長
1年前
16

【独白】防波堤の記憶

ひとり僕は防波堤に立ち  水平線を眺めていた。 いや、もっと近くを眺めていたかもしれない…

Tome館長
1年前
17

【SS】世界びっくり箱コンテスト

こちら、私がおりますところは 毎回びっくり死の犠牲者が多数出ることで有名な 「世界びっくり箱コンテスト」のメイン会場であります。 箱を開けたら蒸気機関車が飛び出すオーソドックスなタイプのものから ミニ・ブラックホールを閉じ込めた最先端技術の応用作品まで 世界中からありとあらゆる心臓に悪そうなびっくり箱が集結しました。 私は仕事柄、スペアの人工心臓を半ダース用意しましたが もう2個しか残っておりません。 やはり今回も不意打ちビックリが主流でありますが 箱を開けたら自分の死

【神話】火の神

突然、火の神が燃えあがった。 よりによって水の女神に恋をしたのだ。 でも、火の神は水の女…

Tome館長
1年前
16

【怪談】木のない森

見上げたら、めまいがした。 鬱蒼とした枝葉が邪魔をして 空がちっとも見えやしない。 様々…

Tome館長
1年前
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【怪談】踏んだ朝

(ああ、踏んじゃった!) 出勤途中、いやなものを踏んでしまった。 近眼乱視のくせにメガネ…

Tome館長
1年前
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【SS】つる草

森に分け入った若者が道に迷った。 歩き疲れ、すっかり希望を失い  ここで死ぬのだ、と若者…

Tome館長
1年前
17

【SS】ひなげしの花

ひなげしの花咲く丘の上、 空高く跳び上がる少女たち。 みんなみんな 頭に風船をつけている。…

Tome館長
1年前
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【SS】おもいで川

おもいで川はいつも暗く深く澱んでいる。 土手に立ち、ぼんやり眺めていると 壊れた人形や別れ…

Tome館長
1年前
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【SS】古井戸

もう誰も住まない古い屋敷があった。 もし住んでいるとしたら幽霊くらい。 高い塀に囲まれ、庭は広かった。 その荒れ放題の庭の片隅には古井戸。 石造りの丸く暗い穴。 どんなに深いか想像もできない。 小石を投げても落ちた音がしない。 穴に叫んでも木霊は返ってこない。 身投げする者もいた。 心中とか。 死体は見つからなかった。 黄泉の国へ通じていたのかもしれない。 なんにせよ この古井戸はもうない。 穴は塞がれてしまった。 屋敷も壊されてしまった。 今ではもう それが