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映画『コール・ジェーン』オンライン試写会参加レポート

「女性たちで社会を変えようと闘った 映画『CALL JANE』パレットーク読者限定オンライン試写会」に参加したので、そのときの感想やレポートをご紹介します。

※このレポートでは人工妊娠中絶(中絶)について触れる箇所があります。読みすすめたくないと感じたら、無理をせずページを閉じてください。

2024年3月に公開される映画『コール・ジェーン』

映画『コール・ジェーン 女性たちの秘密の電話』は、アメリカで2022年10月に公開された映画。
日本では、2024年3月22日に全国公開されます。
Palettalk(パレットーク)のInstagramで募集をみて、今回の試写会に申し込みました。(Palettalkはジェンダーやセクシュアリティについて実体験に基づくマンガで毎週発信しているメディアです。)

「選択の権利としての人工妊娠中絶を描いた実話を基にした映画」で、私にとっては「人権」、そして「今の社会の実情」について改めて考えるきっかけとなりました。
一見ヘビーなテーマですが、軽やかな笑いもあり、鑑賞後はとても前向きな気持ちになりました。公式ホームページにあった「社会派エンタテインメント作品」という紹介が、まさにピッタリ当てはまるなという印象です。
劇中にはたくさんの曲が使われていて、それも気分をあげてくれました。公開後はサウンドトラックをチェックして、何度も聴いてみたいなと思います。

中絶に反対?

妊娠発覚後、主人公ジョイが中絶を希望しますが、その理由は予告編でも登場します。妊娠が原因で「うっ血性心不全」を発症したため、妊娠・出産には命と健康の大きなリスクをともないます。
しかし、1960年代のアメリカにおいて中絶は違法。スーツに身を包んだ男性たちがテーブルを囲み、「反対」「反対」「反対」と結論づけるシーンは衝撃的でした。中絶を反対された後、その人にどんな未来が待っているのか?ひと時も想像していないようにさえ感じられます。
今回感想を書くにあたって『中絶がわかる本 MY BODY MY CHOICE』ロビン・スティーブソン(アジュマブックス)に目を通し、このシーンを頭の中で反芻しました。

中絶を選ぶ理由は人それぞれです。子どもを育てる余裕がないとか、他の誰かの世話をするために中絶を選ぶ人もいます。子どもがいると仕事ができなくなるとか、学校に行けなくなるとい思う人もいます。なかには、単に子供がほしくない人もいます。
中絶する人々には ー年齢や宗教、国籍、信念、生活状況がまちまちでもー 共通点が一つあります。それは、現在妊娠していて、その状況を望んで理ないということです。

『中絶がわかる本 MY BODY MY CHOICE』ロビン・スティーブソン(アジュマブックス)

映画の全編を通して「良し悪しをジャッジしない」というメッセージが感じられました。出産するのか、中絶を選ぶのか、決めるのは妊娠している本人であり、他者が決めるものではないという考えが根底にあるのだと思います。
「すべての人が自分の身体についての選択を自由にできる」という権利、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖の健康と権利:SRHR)について知るとより理解が深まります。

日本の現状について

「1960年代の昔の映画なのだから、現代の日本とは関係ないよね。」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、日本国内には今も多くの課題が残ります。

母体保護法の中で、「医師は(中略)本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。」という表記があります。
つまり、結婚している人はパートナーの同意を得られなければ中絶を選択できないということです。さらに、未婚の場合は同意書が必要ないはずなのに、医師から同意書を求められ中絶ができなかったという実例もあります。
出生時に医師から女性と判定された方が、妊娠したとき、そしてその妊娠を望んでいないとき、中絶を選択するために果たして同意書は必要でしょうか?
そもそも今の日本において、妊娠を希望しない方が、妊娠しないという選択ができる環境が整っていると言えるでしょうか?

また、中絶にはいくつかの方法があり、妊娠からどれぐらいの日数が経過したかによって選択肢は異なりますが、経口中絶薬という薬を飲む方法も存在します。
1980年代から様々な国で承認されてきましたが、日本で承認されたのは2023年4月。このレポートを書いている2024年2月から数えると、承認からまだ1年も経っていないのです。
他の諸外国と比べて、なぜ、ここまで承認が遅れてしまったのでしょうか?

こういった疑問を通じて中絶や権利について考えると共に、一人の人間が、人の権利のために何ができるのかについて問う必要性を感じます。

劇場公開情報とクラウドファンディング

SRHRをはじめ、人権に関する知識がまだまだ十分に浸透しているとは言えない日本において、映画『コール・ジェーン』が公開されるのは革新的なことだと思います。
この映画の公開まで多大なる努力をされてきた関係者の方々に敬意を表すと共に、公開前の試写という貴重な機会をつくってくださった方々へ感謝を述べたいと思います。

2024年3月22日には、全国約34館の映画館で公開されます。公式サイトから上映劇場を確認できますが、全ての都道府県で公開されるというわけではありません。
そこで、映画『コール・ジェーン-女性たちの秘密の電話-』に描かれるテーマ「女性が選択する権利」をより多くの人に届けるため、全国の劇場での公開拡大を目指したクラウドファンディングが実施されています。
今作も含め、洋画の版権買い付け・配給を行なっているプレディオのみなさんによるプロジェクトです。合わせてご覧ください。

次に観たい映画

最後に、次に観たい作品を2つ紹介して終わりたいと思います。
2024年はいろんな映画を観られますよう!

・映画『未来を花束にして』
今回参加した試写会の中で、参加者の方より紹介のあった人権に関する映画です。

・映画『キャロル』
映画『コール・ジェーン』の監督・脚本をつとめたフィリス・ナジーが、脚本を執筆した作品です。


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