新しい格闘技興行の"未来"が見えてきた 『Breaking Down』感想
◆「1分間最強」という"未来"
実戦は1分以内に決着することが多いというコンセプトから「1分間最強の男を決める」というテーマが売りの『Breaking Down』。最初にこのルールを見たときに頭をよぎったのは、お互い様子を見ながら手を出さない「お見合い」と、金網への押し付け・グラウンド状態になったままお互い動かない「塩漬け」の懸念であった。
しかし、それは結果から言うと杞憂であった。事前に指示があったのかもしれないが、ほとんどの選手がアグレッシブに攻撃を仕掛けており、塩漬けが発生しそうになるとレフリーがすぐにブレイクを促し、飽きさせない試合を展開していた。
それでもKOや一本の決着は数試合で、ほとんどは判定での決着だった。実際は、実力が一緒ならば、1分以内で倒されることはなく、結局組んでからの投げられて抑え込まれる、もしくは介入が多そうなので、こういう判定決着は「人が止めた」という見なしなのかもしれない。
◆興行としての"未来"
「金を払ってまで見るアマチュア格闘家の試合は何が面白いのか」という意見も散見されるが、つまるところ、まだ彼らは無名なだけで、個人的には「プロデビュー1戦目」という意味で捉えている。(総合格闘技の試合3戦未満の選手も参加資格を所有しているが)
ただし、このようなアマチュアばっかりが参戦しても、さすがに集客力は見込めないと思うので、今回で言うと、菊野克紀選手のような有名なプロ格闘家や、シバター選手のような有名You Tuber、みなみかわ選手のような芸人+格闘家など、話題性のある人も参戦するのが望ましい。これからも、無名の格闘家(アマチュア)と、このルールで戦ってみたい有名人が参戦するという両軸でいいと思う。
◆異種格闘技の"未来"
空道や合気道の選手など道着を着用した選手も参戦し、しっかりと自分の格闘技スタイルを表現しているのは良かった。ルール上、グラップラー系格闘家が不利かなとは思ったが、柔道がバックボーンだった選手が活躍していたこともあり、打撃慣れさえしていれば、バックボーンによる有利不利はあまり感じられないように思えた。
打vs投、MMAvs武道というのは好きなコンテンツである。出来ることならば、次回は中国武術を中心とした神秘的な格闘家の参戦に期待したい。やはり期待するのは、未だ見ぬ強豪である。
◆オーバーエイジの"未来"
オーバーエイジという35歳以上の参加枠を設けたのも面白い。
35歳以上ということは、かつて90年代半ばのK-1や、00年代初期のPRIDEに夢中になった世代であり、どこかプロを目指しつつも、時が過ぎて他の職業をやりつつ、練習だけはしているという選手も多いはずだ。もしくは、昔とった杵柄という形で武道をやっていた、ヤンチャなことをしていたという選手も応募した気もする。
また、普段は畳の上やマット、四角いリングで練習しているが、金網(ケージ)という特殊な環境で戦うというのも憧れにあったのかもしれない。
このように、『Breaking Down』は体力的に20代よりは衰えているが、1分間だけ戦うならばなんとかなるかもしれないという、良い意味で参加の敷居が低い格闘技でもある。きっとオーバーエイジ枠による先生・達人レベルの選手も見てみたい。
◆『Breaking Down』の"未来"
AbemaTVのPPVとして1200円の配信はちょうど良かった。実況はプロレス・格闘技実況でおなじみの清野茂樹氏、解説は大沢ケンジ氏で、想像していたよりも遥かに格闘技の中継であった。
ただ、試合開始してからはテンポが良かったのだが、試合開始前の前フリPVや何度も繰り返される紹介はさすがに辟易とした。このあたりは改善の余地があると思う。
また今回は、グラウンド状態の取り決めがやや不明瞭で関節技での決着が少なかった。ルールとしてグラウンド状態が10秒制限なのは理解できるが、あと数秒で関節技が極まっていたような試合もあり、ブレイクせずに関節技の見なしとして一本入れても良かったのではないかという試合もあった。
次回大会は9月の開催が予定されているが、「1分間最強」というスタンスは変更せず、ルールのアップデートに期待したい。
また、現在の様々な状況が落ち着いたら、有観客かつ大きめの箱で選手16名参加によるワンデートーナメントが見たい。
最低でも15試合あるし、選手側も最大で4分(4試合)なのでそこまで負担もかからないだろう。決勝戦前に、1回戦で破れた選手同士によるスペシャルマッチや、Youtuberや格闘家芸人のチャレンジマッチなども入れれば、興行的にも充分面白いものが見せられると思う。お見合いが発生したら両者失格になるルールになれば(決勝は無制限ラウンド)、試合もよりアグレッシブにもなるはずだ。
◆補足:『巌流島』の"未来"
異種格闘技イベントと言えば、『巌流島』である。2019年5月大会以来、まったく音沙汰が無くなったが、今回の配信であらためて異種格闘技の面白さに気づいたファンもいるのではないかと思う。
もはや定期的に開催を促すツイートをすることで、「島の守り手」となっている。まるで、どこぞの土地所有者の如く、みんなが他場所への移転を承認している中、「ワシは動かん!」と変に意固地になる頑固ジジイのようだ。
異種格闘技イベントが『巌流島』から『Breaking Down』に取られてしまうのではないかと、"第一島民"として危惧しているのだ。
『巌流島』特有の「転落」というルールは他格闘技には無い面白さがあると思うので、是非とも再開して欲しいところだ。決してこちらは"過去"にはしてはならない。
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