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【ハーモニカ仁義】海外でのレコーディング現場の巻 後編【仲村哲也】

録音現場では、一度楽曲を聴かせてもらい、瞬時にどんな演奏を要求されているかを読み取る術(スベ)を学び、その洞察力を鍛えられます。その後は、すぐ録音ブースへ入れられ、ヘッドホンをつけられ「Rolling!/ハイ、どーぞ」(笑)

私は、一発で決める意気込みで望みます。

1番良いのは、やはり繰り返しパンチイン(オーヴァーダヴィング等)を一切しないで1stテイクで決めて、キャッシュを握りしめ、何事もなかったヨ~に立ち去るコトです。


忍者のヨ~にパッと現れ、任務を成し遂げ、ス~ッと居なくなるのが最高な出来だと思っていますッ。

しかしながら、そのアーカイブとして2ndテイクも録りますヨ。勿論、楽曲の感情移入に添った演奏を心がけますし、出来るだけスムースに時間をかけずに先方の要求を満たすのが最重要と思っています。雇い主様あっての私ですから。

とは言え、私はいつも録音直前に、「今聴いたこの楽曲から、インスパイアされたハーモニカフレーズを私なりの解釈で演奏しますから、全て録音して後から好きなところを編集して使って下さい」と言ってしまいます。

それを気に入ってもらえれば、その日の現場製作者御一同様が納得してくれるまで、何曲でも何時間でも御奉仕致しますッ。
でも終了後、支払いを後日と言われる場合は、もらえないと思ったホーが良いですネッ。

(2023.10 ハーモニカライフ102号に掲載)

仲村哲也 (TEX NAKAMURA)
-Profile-

1980年代始めまで、自己のバンドでエレクトリック・ベースを担当していたが、1950年代のサウンドに取り憑かれ、アップライト・ベースに転向。
1983年に、FENから流れてきたJ ガイルズ・バンドの「ワーマージャマー」に衝撃を受けハモニカを手にする。
妹尾隆一郎氏に師事し基礎のテクニックを収得。その後は、「F.I.H.ハモニカコンテスト」入賞、アポロシアターのアマチュアナイト・チャンピオンシップに出演(日本人初)するなど、数年の間にトップクラスのハーピストとして活躍する。
以後国内でスタジオミュージシャンとして数多くの録音に参加。1992年渡米。
西海岸人気ファンクバンド「WAR」にリーオスカーの後釜として抜擢され、年間平均100本ワールドツアーに13年間参加。Tex NakamuraやWeeping Willow(咽び泣く柳)の名で、現在も米国ロサンゼルスを拠点に幅広い音楽性と美しい音色で活動中。

●オフィシャルWebサイト
http://blueslim.m78.com/nakamura_tetsuya.html