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ハーモニカライフ Web版

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『ハーモニカライフ・Web版』は、トンボ・ファミリークラブの季刊誌『ハーモニカライフ』内のコラムにWebオンリーのコーナーを追加してお届けいたします。 読者投稿コーナーも募集して…
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#ハーモニカ

【コラム】何のために練習する?【ハーモニカアンサンブル】

家での合奏の練習は、1人だしつまらない!なんて声をよく聞きますが、独奏の練習と合奏の練習では、そもそも意味合いが違います。 独奏は練習せずに上達しなければ、発表会等で自分が恥をかくだけのことですが、合奏では自分が練習をサボれば、仲間に迷惑をかけますし、そもそも合奏にもならなくなります。 なぜなら、合奏は〝足し算〟ではなく、〝かけ算〟なので。例えば5人のアンサンブルで、4人が抜群に上手くても1人が練習をサボっていれば、演奏は簡単にゼロになりますし、間違いだらけで耳障りな不協和音

幸福に欠かせない第一の財宝【コラム】

われわれ老人は、自分のことをどうにかするだけで手一杯だ。自然が与えてくれた楽しみは、老いとともに次第になくなっていくのだから、人為的な楽しみで自分を支えていこうではないか。モンテーニュはウィットに富んだ言い方で、老年の楽しみのあり方を『エセー』でそう提言する。 一方、ショーペンハウアーは『幸福について』という処世術箴言集のなかで、人は金銭や土地といった財産(第二の財宝)や名誉や地位(第三の財宝)といったものを追い求めがちだが、第一の財宝ともいうべき人の在り方、すなわち人柄や

【ハーモニカ仁義】NAMM2024の巻【仲村哲也】

今年もお陰様で、ロスアンジェルスで開催されるNAMM2024のリー・オスカー/トンボハーモニカブース出店に伴い、毎年恒例のデモ演奏に参加させて頂きましたッ! 今回は、皆様ご存知の千賀太郎さんも日本から参戦で、祝ナムデビューです。 リー・オスカーさんは、太郎さんが確か7歳の時にリリースしたアルバムをプロデュースしたこともあり、今回の再会を心待ちにしていた様です。 コロナ禍もスッカリ治まり、今年のNAMMショーは以前の活気を少しずつ取り戻した様で、沢山の来客に恵まれました。

「赤とんぼ」の町で酒盃を交わす

「赤とんぼ」という歌がいつも心にあって、昔を思い出したりするたびに頭のなかで歌っている。幼少時に仰ぎ見た赤トンボの乱舞がよほど心の深みに働きかけているらしく、ハーモニカで高校時代に吹いたのも、東京に下宿して、夕暮れの上野公園のベンチで吹いたのも「赤とんぼ」だった。 作者の三木露風にとって、「私に詩思を与えたのは、故郷の山川である」というほどに龍野の自然は作品のふるさとであったし、五歳にして別れた母の面影を懐古する場所でもあった。龍野というまちに一度行ってみたい。その思いは龍

【ハーモニカ仁義】高原でハーモニカを演奏するの巻【仲村哲也】

山登りなどで標高が高くなると、大気圧が下がり空気の密度が下がって、チョッと歩いただけでも息切れしますヨネ。そういう状況でもハーモニカを吹かなければならない時もあります。 以前のロード(演奏巡業生活)で、最初にコロラド州へ行った時、アスペンという名のデンバーからおよそ車で約3時間半を要する街を訪れました。 到着したらすぐステージへ。 旅行気分はありません。 我々は、時差まで移動時間に費やします。 アスペン(Aspen) は、コロラド州の西部、ロッキー山脈の山中に位置する都市

【複音ハーモニカ講座・最終回】マンドリン奏法(応用編)

前回の練習はいかがでしたでしょうか。 マンドリンの弦を弾くような音色になりましたでしょうか。 今回は、実際曲中でのマンドリン奏法(M)を意識した練習法をご紹介いたします。 曲中では(M)で数小節続く事もありますが、ほんの一小節のみの場合もあります。また、他の奏法や強弱が入っている曲も多いので、以下の練習をやってみましょう。 ① まず(M)を入れず、メロディーのみ吹いてみてください。 ②(M)を入れて吹いてみましょう。(M)の時、即座に吹き方を変えられるよう、ゆっくり練習し

【コラム】続・コンクール、参加することに意義がある!

前回に続いて、コンクールにまつわるお話を…。 私が唯一出場したことのあるコンクール、1995年の国際ハーモニカフェスティバル、トリオ部門で準優勝できたことはもちろん嬉しかったのですが、1番楽しかったのは、いろいろな方と交流ができたことで、準優勝はただのおまけみたいなものでした。 同じトリオ部門で第5位だったのが、フランスのハイファイ・ディクソンズ(HIFI DIXON'S)。 オジョイメイよりもはるかに上手いのでは⁈と思った実力派でしたが、コンクールで演奏したのが、日本で

【コラム】「六甲おろし」を演奏した日w

阪神タイガースが巨人に4対3で勝って18年ぶり6回目のセ・リーグ優勝を果たした。18年間、一心不乱に戦ってリーグ1位の悲願が達成された9月14日、選手たちの胸にはさまざまな想いが去来したことだろう。 その晩はコンサートの打ち上げで、テレビのニュースは観られなかった。翌日、新聞で歓喜する人たちの写真をみて自分ごとのように嬉しくなった。というのも、優勝を決めた日の数時間前、「第25回コアハーモニカコンサート」があり、コンサートの締めくくりに「愛川ハーモニカアンサンブル」は阪神タ

【ハーモニカ仁義】海外でのレコーディング現場の巻 後編【仲村哲也】

録音現場では、一度楽曲を聴かせてもらい、瞬時にどんな演奏を要求されているかを読み取る術(スベ)を学び、その洞察力を鍛えられます。その後は、すぐ録音ブースへ入れられ、ヘッドホンをつけられ「Rolling!/ハイ、どーぞ」(笑) 私は、一発で決める意気込みで望みます。 1番良いのは、やはり繰り返しパンチイン(オーヴァーダヴィング等)を一切しないで1stテイクで決めて、キャッシュを握りしめ、何事もなかったヨ~に立ち去るコトです。 忍者のヨ~にパッと現れ、任務を成し遂げ、ス~ッ

【複音ハーモニカ講座】マンドリン奏法(実践編)

前回の入門編、『シングル奏法と三穴奏法』の練習はいかがでしたでしょうか。 今回は、実際マンドリンの様な音を出せるよう解説していきたいと思います。 ①まず、ハーモニカはくわえず、口をシングル奏法の形にします。 ②舌先を尖らせて、左右に動かします。(上下でも可)  この時「ポロポロ」と舌と口がこすれる音が出ているでしょうか。この音が出ると、よりマンドリンの音に近くなると思います。 ③その状態でハーモニカをくわえ、中音部のドの音を吹いてみてください。(舌がハーモニカのウッドには

【コラム】コンクール、参加することに意義がある!

コロナ禍で国内外のハーモニカコンクールも開催中止が続いていましたが、段々と再開されているようです。 コンクールへの参加は、プロ奏者になることを目標に優勝目指して出場する方もいれば、腕試しにチャレンジしてみる方もいて、出場する目的も様々です。 ハーモニカのコンクールは、事前に提出した録音での予選を経て、予選通過者が決勝ライブを行う形態が多いように感じますが、予選通過できなくても審査員の方々からアドバイスがもらえたり、決勝の舞台に立てたら、自信もつきますし、独特の緊張感も経験

【ハーモニカ仁義】海外でのレコーディング現場の巻 前編【仲村哲也】

自分のハーモニカ演奏に自信が持てるようになると録音したいと思うのは心情です。 勿論、自分自身の作品作りには、余念なく全神経を集中させて時間も惜しまず取り組んでいる事と存じます。しかしながら、人に雇われて、商業的に録音する場合はそうは行きませんヨネ? 日本国内での録音では、スタジオ代やエンジニア等の人件費などもあるので、決められた時間よりも出来るだけ早く最良のテイクを録って終わらせたいと言うのが雇い主の考えです。 ですから事前に楽曲資料をもらい、理解した上で予習してから先方と

【複音ハーモニカ講座】マンドリン奏法(入門編)

今回は、多くの独奏曲で演奏されるマンドリン奏法をご紹介いたします。 ヴァイオリン奏法と同様、その楽器の音を表現している奏法ですが、ただ真似ているだけでなく、曲によって多彩な音色を奏でる事が出来ると思います。 それは雨音だったり、小鳥のさえずり、小川のせせらぎや落葉が舞う様子など、様々な場面を表現できるとても魅力的な奏法です。是非、その曲をイメージした吹き方を目指していただけたらと思います。 マンドリン奏法は、シングル奏法または三穴奏法の口の形で吹きます。 まずシングル奏法と

【コラム】運慶の話、そして演奏すること

夏目漱石に「夢十夜」という夢の話を集めた異色の短篇があって、その一つに運慶が出てくる。護国寺の山門で、運慶が仁王を刻んでいるという評判がたって、散歩ながらに行くとたくさんの人が集まってしきりに下馬評をやっている。そもそもこの時代に運慶は生きてはいないのだが、そこは夢の話。 辻待ちをしている車夫が「大きなもんだなあ」と感心し、「人間を拵えるより余程、骨が折れるだろう」などと言っている。運慶は見物人の評判など頓着なく、鑿(のみ)と槌(つち)を動かして、一向に振り向きもせずに仁王