見出し画像

海辺の丘まで

海辺の丘まで

亡母の郷里は駿河湾に面した海沿いでした。一両編成の機関車で向かったものでした。横浜からずいぶん遠い気がしました。今、思うと、隣県なのに笑ってしまいます。すぐそばの海はいつも輝いていて遠くにきれいな山がみえました。そうなんです。それは富士山だったのです。その山は海の向こうの外国にあると思っていた私は少し大きくなってから、大恥をかきました。
 野辺の送り、とは、お葬式のことですが、大好きな海の思い出です。
静岡県の御前崎灯台の花火も楽しかったです。後年、職場の親しい友人が御前崎に嫁入りしたのですが、あの田舎に?ト言った私は現代の御前崎を知らなすぎると、また笑われました。


海辺の丘まで

入日の浜辺を子供らは 
はしゃいで転げて行きました
やさしかった父さんの
野辺の送りも知らないで
海は静かに ないでいた

黒い着物のかあさんは
なみだをそっと ふきました
白い包みの父さんは
野辺の送りになりました
海辺の丘まで 参ります

二艘 並んだ 朽ち船が
はるかな沖を眺めてた
漁師だつた父さんの 
野辺の送りは 哀しいと
波が涙を  はじいてた




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?