私的偏愛録 其の十九 植田正治

 毎年、年が明けると「今年は何処へ行こうかなぁ」なんてぼんやり考えたりする。近年、遠出する目的はお笑いライブに行くか、美術館にいくかくらいなので、「えいえい!」と重い腰を上げなければ新幹線に飛び乗らなくなってしまった。
 そんな、毛布にくるまりながらぬくぬくとお笑いの配信を観ている今のわたしには、暖かくなったら行きたい場所がある。
 鳥取県の伯耆町にある植田正治写真美術館である。
 鳥取砂丘で撮られた数々の写真たちは、モノクロームということも相まって、どこか非現実的で非日常的である。でも、そこには確かな日常が存在している。「ボクのわたしのお母さん」をこの目でいつか観たい、と思い続けては、古本屋で植田正治関連本を漁る日々が、わたしの日常でゆるやかに続いている。
 去年はとうとう行き方まで調べた。あとは新幹線に飛び乗るだけである。どの季節の大山を見ることができるか、楽しみにしながら春を待っている。
 

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一度は行きたいあの場所

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