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不安なまま、楽しい

1人でも十分楽しい。1人で中華だって、映画だって行ける。
でも、たまにね、ほんのちょっと、寂しくて、消えたくなる夜があったりする。バイト帰り。駅のホームで、べたべたしているカップルに遭遇した時とか。

もしも遠距離恋愛をしていなかったら、どんな風に過ごしてただろう。

遠距離が始まって、もうすぐ1年。
恋人がいない日々が日常になった。最初は寂しくて、毎日泣いていたのに、今はあっけらかんとしている。

彼は太平洋を渡った先、カナダのモントリオールという町で暮らしている。
優しくて、素直で、柔くもろい人だ。
穏やかで、家族思いで、心配性。
留学先で、羽目を外すような人ではないので、彼のことは信用している。
ただ、ちゃんとご飯を食べてほしい。夜はゆっくり寝てほしい。たまには野菜も食べてほしい。
最低限の生活を送ってくれたら、十分だ。

1年前から、私たちの時間は止まった。何しろ、できることが限られている。1年間、私たちがしてきたことと言えば、ビデオ通話、交換日記、アニメ鑑賞。

他愛もないことができなくなった。一緒に出かけたり、手をつないだり、横並びで座ったり、雪見だいふくを1個ずつ分けて食べたり、些細なことだけど、そういう小さな積み重ねがなくなった今、ほんの少し寂しい。

コロナ禍の厳しさと比べたら、どうってことないのかもしれない。
ただ、コロナ禍が落ち着いたこの世界で、ぽっかり取り残されたような気持だ。

正直言うと、だんだん「好き」という感情が薄まってきた。
代わりに、安心感や信頼で結ばれている。
家族のような、友達のような、実家の猫のような存在。安心感を分け合う相手と言えば伝わるだろうか。

彼が「ときめく相手」かと聞かれたら、たぶん違う。夏の甘い恋は永遠に続かない。きっとこの先、冬の寒さに耐えなきゃいけない。周りの大学生が羨ましくなって、もう遠距離やめたいなと思う時もあるけど、結局、周りの人は関係なくて、自分たち次第なんだと思う。

読んでくれた方へ
遠距離を始めたこの年は、悩むことが多かったです。友人や家族に話を聞いてくれる人はいても、「カナダか、遠いね、時差14時間か…」で終わってしまうので、相談という相談ができませんでした。あと3年続くのかと思うと気が遠くなります…
遠距離の先輩とかいたらいいなと思って、書いてみたんですが、ここまでくると異色かと思います。先輩、いたらいいな…
とりあえずエンタメとして受け取ってくれたら嬉しいです。

これからも強く生きます!

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