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仕事のはなし。

私は普段ホテルマンとして働いている。
いや、女性だからホテルウーマンというのだろうか?
しかしホテルウーマンと自ら名乗る人はあまり見かけないし、どうしてもホテルマンというワードの方がしっくりくるのだが、やはり「マン」と付くと男性を表しているように思うので少し違和感が残る。

少し気になって検索してみると、どうやら最近は「ホテリエ」という言葉があるらしい。フランス語から来ているようだが、これなら男女問わず「ホテルで働いている人」を表現できるようだ。なるほど。

世の中には数えきれないぐらい多くの仕事がある。
きっとどの仕事にも良い面、悪い面がそれぞれ存在すると思う。
悪いと言うと少し語弊が生じる気がする。
悪いと言うかデメリットとと言うか、良くは思わない、我慢しなければならない面だ。

ホテルの仕事で我慢しなければならないことは、
シフト制なので働く時間がバラバラなことと、休みが基本は平日なのでカレンダー通りの休みの人とは予定がほとんど合わないことだ。
とは言っても土日に休み希望を出すこともできるし、休みが平日ならどこに出掛けても週末より人が少ないので、人混みが苦手な私は割と気に入っている。
残念ながら予定を合わせる友達も殆どいないので、デメリットに感じる事はほぼない。
強いて言えば、部署によっては働く時間が本当にバラバラなので(例えば営業時間の長いレストランとか)、生活のリズムを整えることが難しいことぐらいだろうか。

逆に私がホテルで働く上で気に入っているところは、本当にいろんな人に出会えることだ。
観光客の家族連れから、記念日を祝うカップル、出張中のサラリーマン、1人でパソコンを持ち込み長時間作業をしている男性(何故かこういう人は男性に多いように思う)、親子には見えない少し怪しげな若い女の子と中年の男性、近所に住む常連のお婆ちゃん等。
「この人みたいな心の広い人間になりたいな」と思えるような人に出会えることもあるし、
「絶対にこんな人間にはならないぞ」と反面教師のお手本のような人に出会うこともある。
日々ホテルに訪れるいろんな人と関わることで、自分はどうだろうと客観的な視点で己を振り返ることが出来るようになれた気がするし、自分を成長させる手助けをしてもらっているように感じる。
もちろん自分を成長させてくれるのは上司の存在も大きいのだが、長くなりそうなのでこの話はまた今度。

あとは純粋にこの仕事が好きなのだ。
お客さんに自分を覚えてもらえると、自分の存在を認めてもらえたような感じがしてとても嬉しい。
知り合いに声を掛けるように「あら、こんにちは」と挨拶をしてもらえたり、友達同士のやりとりのようにおすすめのお店なんかを教えてもらえたりすると、胸がきゅーっとなって全身がむずむずして、体温が1.2度は上がるような感じがする。

もちろん良いことばかりではないし、嫌な気持ちになることも多々ある。
でもどんなに逃げ出したくなっても、結局は自分の働いているホテルが好きだし、ホテルが好きで来てくれるお客さんのことも好きなので、いつも「もうやめよう」の気持ちよりも「もう少しだけ」の気持ちの方が勝ってしまうのだ。
星野源さんのエッセイに登場するタクシー運転手の清水さんの言葉、

「人間、好きなことしてなきゃダメだよ」

本当にその通りだと思う。
働く理由なんてきっと人それぞれだ。
好きなことをしたくて選んだ人、お給料で選んだ人、将来を見据えて選んだ人、やむを得ずに選ばなければいけなかった人。
私は好きなことじゃなければ、仕事なんてきっと続けられなかった。
今の仕事をいつまで好きでいられるかわからないけれど、顔も知らない清水さんの言葉を心の中で反芻しながら、今日も私は通勤電車に乗る。

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