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ハレの日のはなし。


いつもよりも早く家を出た日は、決まってどこかでモーニングをする。

通勤途中でいつも電車を乗り換える、比較的大きめの駅でモーニングに最適の場所を探す。
今日の気分はサンドイッチだけど、少し甘いものも食べたい気もする。


お手頃価格のモーニングが食べれらるチェーン店と迷った末、駅ビルの2階にある、コーヒーメーカーが経営している小さな喫茶店に決めた。


ここのお気に入りポイントは、モーニングでもワッフルを注文できるところ。
サンドイッチよりも甘いものを食べたい気持ちが勝ってしまった。
バターが乗っただけのシンプルなワッフルと、フルーツの付け合わせ、ミルクティーを注文して席に着く。

今日は天気が良いので窓際の席に座り、ワッフルが来るまでなんとなく外を眺めてみる。


ちょうど目の前が横断歩道で、みんな信号が青に変わるのを待っているところだった。


通勤途中であろう暗い色味のスーツを纏ったサラリーマン達の中に、1つだけパッと明るい色が視界に入ってきた。
何かと思えば、それは袴を着ている女の子だった。
大正時代を思わせるレトロな柄の素敵な袴。

あの柄かわいいなぁ
今日この辺でなんかイベントとかあったっけ?
、、、あ、そうか。卒業式か。

そう気付くのに少し時間がかかってしまった。
社会人になってから、どうにもこういう季節柄のイベントに疎くなってしまったように思う。

慣れなさそうにちょこちょこ歩く女の子を眺めていたら、袴を着ることに憧れを抱いていた、大学生の頃の自分を思い出した。

私の通っていた大学はキリスト教系の大学だったので、卒業式に袴を着ることを禁止されていた。
(別に私は無宗教なのに)


同じ大学に通っていた姉も、

「袴が着たかったのに!」

と怒りながら、当日は綺麗な刺繍の入った黒いワンピースを着て卒業式に出席していた。
(確か黒色の服で来るように指定されていた気がする)

自分も卒業式には姉と同じような黒いワンピースを着るのかなぁなんて当時は思っていたが、残念ながら途中で大学に行くことをやめてしまったので、その想像が現実になることはなかった。

大学をやめたことは私は良かったと思っているけれど、唯一の心残りが袴を着るチャンスを逃したこと。

とはいっても、頑張ってその大学に通い続けていても、袴は着られなかったのだけれど。


この春ご卒業されるみなさん、おめでとうございます。
平和とは言い切れない世の中になってきましたが、
いつ何が起こるのかわからないのが人生。
どんなことが起こっても、悔い無く素敵な人生を送れますように。

もう春はすぐそこですね。

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