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友人の話

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2014年10月の記事一覧

第73話 友人の話-手編みのマフラー

第73話 友人の話-手編みのマフラー

銀行員のコウダくんは手編みのマフラーをもらったことがある。

「いや、ぜんぜん恋バナ系やないねん」

期末や年末はどうしても仕事が立て込む。
帰宅が深夜になることも多い。

年の瀬が近いその日も、家路についたのは日付も変わろうかという時刻だった。

どうにか終電で最寄り駅につくと、そこからマンションまでは、徒歩で15分程度。
疲れた足を引きずり、真っ暗な街を歩いていると、心も体もしんしんと冷え込ん

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第72話 友人の話-死神の体臭

第72話 友人の話-死神の体臭

死が近い人には独特のニオイがある。

クリーニングチェーンの受付をしているホシミさんはそういう。

「古い香料とカビと干物を混ぜたような感じ。ミイラを嗅いでみたら、そんなニオイがするんやないか、って思う」
病気のニオイではなく、事故で死ぬ人も、自殺する人も同じニオイがする。

「せやから俺が嗅いでるのは、その人に憑いてる死神の体臭みたいなもんかもしれん」

客の持ってくる衣類のニオイで、ホシミさん

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