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組織エンゲージメントと向き合うこと

今日は真面目に、「組織エンゲージメント」について自分なりの考えを書いてみようと思います。

はじめに

「エンゲージメント」というワードは、色々な組織で出てくるワードだと思います。エンゲージメントに関する本が出版され、エンゲージメントを可視化/改善するためのサービスも多く出ていきます。組織のエンゲージメントを改善することが、事業の成長に繋がる、というような記事もたくさん出ています。

私は以前、人事として「組織のエンゲージメントの改善」という仕事に取り組んできました。そして現在では、「エンゲージメント」に関するサービスを一部扱っています。組織内のエンゲージメン改善とエンゲージメントに関するサービス提供、どちらも行ってきて感じたことは、
「エンゲージメントを可視化/改善することは非常に覚悟のいる意思決定である」ということです。

なので、軽い感覚で「うちもエンゲージメントの改善に着手しないといけ無いからね〜」という方に対しては、すぐの計測をお勧めしていません。

「なぜエンゲージメントの改善に着手するのですか?」
「一度改善に動き出したら、中途半端に止めず、最後までやりきることは出来ますか?」

まずはこの2つを聞きます。
エンゲージメント改善において、一番やってはいけないことは、
「やると言ったのに何もしない」ことです。

エンゲージメント改善は大きく分けると
・可視化
・改善
この2つのアクションからなります。

可視化をしたら、歩み続けなければなら無い

可視化をするということは、
「臭い物の蓋をあけることにもなる」と同義だと思っておくべきです。
そして、一度蓋をあけて閉めることはおすすめしません。

どのサービス/手法を使って可視化するかに影響は受けますが、
エンゲージメントを取ると、従業員のいろんな想いが見えてきます。
取った結果の中には、「すぐには変えられ無い物」「組織として変えられ無い物」も当然あります。例えば、給料や福利厚生など。

ただ、従業員は「正直に答えてください」という案内に従って正直に答えます。可視化をすると現場が抱く期待があります。

「これでこの組織は変わるんだ」


組織改善のためにエンゲージメントを取る、という案内で取っていたらこの期待は当然です。そして、従業員はこの「変わる」を自分に都合良く捉えることがあります。

「自分が不満に思っていたここが変わるんじゃないか」
「今まで不満だと思っていたこの部分が変わるんじゃないか」

こんな期待を抱きます。そんな中で、「自分が期待していたこと」が変わらなかった時、現場はこう思うのです。

「アンケートをとっても、そこから何もしない、何も変わら無いってことは、うちの組織はいつまで経っても変わろうとはしないんだな」と。

可視化をしたら、そこで止めるということは基本してはいけないことだと思っています。なので、可視化の時から改善活動まで、絶対にやるべきだと思う事があります。

エンゲージメント向上に取り組む時にやるべきこと

①何のためにエンゲージメントを計測するのかを組織に伝えること

エンゲージメントアンケートの内容にもよりますが、まずは何のためにエンゲージメントを取るのかを必ず従業員に伝えましょう。
ここが抜け落ちていると、従業員は自分の考えで、「こう変わるんじゃないか」や「こうなるんだろうな」と解釈する可能性があるからです。

②回答の仕方を詳細に伝えること

エンゲージメントを取る際には、基本的に1人ひとり用意したアンケートに答えてもらうことが手法として最も多いかと思います。
その際には、従業員は「指定が無ければ、質問を自分の主観で答えることがある」ということです。どういうことか。

例えばこんな質問があるとします。
「あなたの上長はあなたの話をよく聞いてくれますか?」
この時、「上長」が従業員の主観で答えられることあるのです。
組織図が複雑だったり、上司がよく変わるような組織体制を取っているところだとこういうのはよく起こります。
・あなたの上長とは誰のことを指しているのか
・組織変更があった場合、今回のアンケートでは、どの時点の上長について答えて欲しいのか。
こういった説明はしておくべきです。
こういう細かいことをしておかないと後で、
「あのアンケートはこういう意味で捉えていた、だから違うんだ」
というような、可視化したものが違う、という声が上がってきて、改善が進まなくなります。

③何を変えて、何を変え無いかを明確に伝えること

結果が出た次は改善です。
ただ、中には「すぐには変えられ無い物」や「経営上の理由で当分変えられ無い物」などもあるはずです。
① で伝えたことが「エンゲージメント取得の目的」であるのであれば、
その目的に達成のために、「何をするか」と「何をしないか」を伝えることと同義です。

例えば、エンゲージメントを取った結果
・上司と部下のコミュニケーション
・福利厚生
この2つが組織全体で大きな課題になっていそうだとします。
この時、「福利厚生」は変更内容として様々な理由ですぐん改善に着手出来無いとします。
その際は、
「上司との部下のコニュニケーションの部分に関しては、〜〜という方法で改善活動を行っていきます」
「福利厚生の部分に関しては、経営状態を考えて今すぐには大きな変更をしません。」
言い方はもっと考えるべきですが、必ず宣言をした方が良いと思います。
この宣言が無いと、従業員は「自身の期待」が叶うことを信じ続けます。

勿論、中にはそれでも納得しない人がいるかもしれ無いですが、「当初の目的の達成のために決めたこと」という部分がぶれていなけば、それで良い、と思うことも必要です。何かの事情で出来無いことを、考えても出来る見通しが立たなかったものを、いつまでも考えていても仕方ないです。
であれば、まずは「変えられることから変える」と決めたことを必ず変えることに力を注いだ方が、結果としてよくなる事が多いと感じています。

④変えると言ったことは必ず変えること

ただし、変えると言ったことは、必ず変えるために着手することです。
従業員は変化の「プロセス」と「結果」の2つを見ています。
変えるために何か変化は周りで起こっているか、変えるといったことが、結果的にどういう変化を生み出しているのか。変えるといったことは、必ず変えるように動きましょう。出来無い理由は色々出てくるかと思いますが、とにかく変えるために動くのです。ここは、理想は現場単位で動いて改善が出来ればベストですが、改善アクションと結果>改善方法だと思って良いと思っています。

1番の悪は「変えると言ったのに変わろうとしないこと」だからです。

その他

根気強く継続的に取り組む

取得内容や方法によって、どれくらいの期間で取るかなどは変えるべきですが、定期的にエンゲージメントの計測を続けましょう。改善結果を可視化することは、急に取らなくなると、「エンゲージメント改善はやめたのか?諦めたのか?」と従業員は不安になる可能性があります。もし、取らないことになったのであれば、それはそれで必ずその理由を伝えましょう。

大規模組織の場合、マネジメントレイヤーの伝達能力が鍵を握る

小さな組織の場合、取り組む理由から変えること、変え無いことまで全てトップが伝達をして、伝えることは可能です。ただ、大きな組織になると、トップの言葉は意図通りに下に届かなくなります。下に行けば下に行くほど。
普段から現場のメンバーを見ているマネジメント層が、トップの意志と意図を汲み取り、現場で使われる言語に変換して下に伝えるこが出来なければ、失敗する確率は非常に高いです。大規模組織の場合、時間と労力をかけて、トップからマネジメントレイヤーに①〜④を徹底的に伝える必要があります。ここの伝達力に自信がなければ、まずは組織全体のサーベイ改善の前に、マネジメントレイヤーの育成が先だと私は考えます。
それくらい、しくじってはいけない部分だからです。

組織エンゲージメント向上に着手するということは、
着手を決めた人間が、それ相応の覚悟を持って取り組まなければならないです。あまり時間をかけたく無い、とりあえず可視化だけしてみようか、という状態であれば、私はエンゲージメント向上に着手することはお勧め出来無いです。

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