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真夜中のエンタメ談話室 Vol.01 【前編】

泊まれる演劇のクリエイターを中心に、今気になっているエンタメ情報や制作の裏話などをClubhouseでお届けする深夜ラジオ企画『真夜中のエンタメ談話室』。

今回はその初回の前編をお届けします。スピーカーはSCRAP所属で泊まれる演劇でも脚本・演出を務めるきださおりさん、劇団ノーミーツの広屋佑規さん、泊まれる演劇の企画・プロデュースの花岡直弥です。


『花束みたいな恋をした』にどハマりしてるきださん

(冒頭はきださんと花岡の2人で、泊まれる演劇とホテル、そして今話題の映画『花束みたいな恋をした』のお話。)

きだ:広屋君来るまで泊まれる演劇の話しましょうか...。じゃあ花岡君、『花束みたいな恋をした』見た?

花岡:泊まれる演劇の話じゃないんですね(笑)いや、まだ見てないです〜。見た方がいいんですか?

きだ:う〜ん、でも花岡君が花束みたいな恋をしたかどうかによるんで。人によって刺さるかどうかは違うと思う。私は有村架純にめちゃくちゃ共感したな〜。

花岡:へぇ・・・。すごく個人的な話なんですけど、つい最近割と長く付き合ってた彼女と別れたばっかりなんですけどそれでも楽しめます?

きだ:マジでwwそれは見たら死ぬかもしれないwww

花岡:(見たら死ぬんだ...)

きだ:絶対死ぬ死ぬ(笑)やめた方がいいかもしれない...(笑)


泊まれる演劇の誕生と、きださんとの出会い

きだ:それじゃあエンタメの話に戻しましょうか。今日は何の話する?

花岡:特にテーマは考えてなかったんですけど、先日泊まれる演劇のオンラインシリーズも全部完結したので、今まで話してこなかった裏話的なこともできればな〜って思ってます。

きだ:イマーシブと裏話って相性悪いもんね。

花岡:そうなんですよね。ただ一旦シリーズは終わったのと、最近いろんな人から「どうやって作ってるの?」って聞かれることが多くて。細かいお金の話は冷めちゃうのでしないですけど、裏話もできたらなぁって思ってます。

きだ:じゃあ質問!泊まれる演劇やってるのと通常のホテル営業やってるのでどっちが儲かるの?

花岡:いきなりですね(笑)コロナ禍ってのもありますけど、オンラインでもリアルでも今は売り上げ的には泊まれる演劇の方が大きいかもですね。1回の公演でも最大100人とか観に来てくださるので、ホテルの客室数よりも全然多い数字なので。

きだ:確かにそれは大人気ホテル...!

花岡:そうですね。あと一応補足しておくと、僕はエンタメ業界の人間ではなくてHOTEL SHE, KYOTOっていうホテルに勤めているホテルマンなんですよ。

きだ:そうだよね。そんなHOTEL SHE, の泊まれる演劇で私は脚本と演出をさせてもらっています。

花岡:いきなりTwitterのDMで「脚本やってください!」ってオファーしちゃたんですよね。泊まれる演劇をやるぞってnoteで告知をしたんですけど、その時点では役者さんも脚本家さんも演出家さんも決まってなくて。とりあえずやるって言ったけどどうやってやろうか悩んでました(笑)

きだ:でもそれは逆に勇気があるな〜って思いました。私はリアル脱出ゲームや体験型イベントをビジネスとしてやってたので、作っていないものを「やる!」って言えなくて。でもSNSで先に宣言だけしちゃう良さもあるなぁって思ったし、私もそんな軽やかさを取り戻していこうって思った。でも正直、note読んだ時はてっきり出来てるのかと思ってたけど。

花岡:てっきり全然出来てなかったんです(笑)それどころか演劇やエンタメに人生で関わったこともなかったし、脚本家さんと演出家さんの違いもわかってなかったし、未だによくわかってないかも。


ホテルと物語の関係性

きだ:でも泊まれる演劇はSleep No Moreを観て、やろうと思ったんだよね?

花岡:いや、でもスタートタイミングではSleep No Moreもまだ観てなかったですね。

きだ:そうなんだ(笑)じゃあなんでやろうと思ったの?

花岡:元々エンタメや演劇に興味があったわけではなく、ホテル空間だったり宿泊体験を面白いものにしたいっていうのがきっかけだったんです。一般的に旅や観光が第一目的としてあって、ホテルってその繋ぎの場所だと思うんですけど、ホテルっていう場所が旅の目的地になるようなコンテンツを作れたらいいなと。なので演劇やイマーシブシアターをどうしてもしたい!って感じじゃなくて、あくまで宿泊体験をアップデートする手段としてスタートしましたね。

きだ:でもすごくリンクしてたのは、私もその当時ホテルにすごく興味があって、星野リゾートにインターンしようとまで思ってた(笑)素敵なホテルって入口から出口まで物語体験がデザインされるし、例えば「ここに椅子が会ったらこんな気持ちになるよね」とか「ここでこのサービスしたら嬉しいよね」って考えられてるじゃないですか。だから一時期、体験イベントに行くより色んなホテルに行く方が楽しいなって思ってた。星野リゾートが求人出してたら転職してたかもしれない(笑)

花岡:それは色んな人が悲しみますよ(笑)でも僕もホテルのフロントに立っていて、例えば卒業旅行でくる若いお客さんだったり、初々しい感じで恋人同志のお客さんだったり色んな方がいらっしゃるんですけど、一晩だけだけど色んな物語が生まれる場所だなって思ってました。やっぱり非日常な空間であることは間違いないし、他人と家以外の場所で一晩を過ごすって普通ないじゃないですか。チェックアウトする時にお見送りする時の寂しい感じは、物語が終わる瞬間と似てますよね。

きだ:ね。もしかしたら付き合ったり別れたり、なにかしらあるよね。

花岡:そうなんです。なのでさっききださんが仰っていた通り、ホテルってすごく物語性がある場所だなとは思ってました。でもそれってホテルマン側からわかる魅了なので、どうにか伝える方法はないかなぁってぼんやりと考えていた時に、泊まれる演劇のフォーマットとピタッと合った感じですね。

きだ:でもどうして私に声かけてくれ他の?私も演劇出身の人間ではないので。

花岡:そもそもホテルっていう本来劇場ではない空間を使うので、いわゆるステージ演劇っぽい表現にはしたくなかったんです。なので演劇業界の作家さんだったり俳優さんに拘ってなくて、過去作に出演頂いている方もミュージシャンの方だったり、SNSでコメディ動画をアップされている方だったり、舞台初挑戦な方にも敢えてオファーしています。そうすると「普通舞台だとこうだよね」っていう固定概念がない状態で制作をスタートできるし、セリフのナチュラルさも没入感を生む上で相性が良かったりする。同じ理由で脚本/演出家さんも、きださんのように体験型コンテンツを作っている方だったり、テーマパークのアトラクションのプロットを作っている方にお願いしてきました。

きだ:なるほど、舞台とお客さんっていう明確なラインを作りたくないんですね。

花岡:そうなんです。例えばチェックインからチェックアウトまで物語は続いていて欲しいので、本当を言うと公演時間も決めたくないんですよね。それってホテルだからこそできる演出だし。

きだ:いや〜そうだよね〜〜〜!!

花岡:ただ、今は興行的な事情で一日に複数ステージを開催しないといけないので公演時間も決まっちゃってるんですけど。でも理想は「あれ?泊まれる演劇来たけど普通に客室に通されたぞ。もう始まってんのかな?」とか、「この人は出演者なのかお客さんなのかわからない...」ぐらいの曖昧さの方が、本当は面白いんじゃないかってずっと思ってます。

きだ:そうだよね。でもシームレスな体験を作りたいっていう理想と、ビジネス的な問題はどこかで解決しないといけないよね。

花岡:そうなんです。そのためにはロングランに耐えうるコンテンツをちゃんと作らないといけない。あとキャパシティにも依存するので、やっぱりコロナが収束しないと難しいのかなって思ってます。きださんも以前のぞき見カフェを自主企画で制作されていたと思うのですが、今後もリアルイベントを制作される予定はあるんですか?

きだ:2020年はほとんどオンラインイベントを作ってきて新しい開拓地が見つかって凄く楽しかったんだけど、2021年はオンラインで得た知見を使ってリアルな場でコンテンツを作りたいなとは思ってます。でも緊急事態宣言が今後どうなるかによって告知ができない可能性もあって、隠し球をたくさん秘めてるって感じですね〜。

花岡:隠し球...!!それらはイマーシブシアターと呼ばれるものなんですか?

きだ:実は私がやりたいことと、イマーシブシアターの定義がちょっとずれてはいて。泊まれる演劇で作っているのは明確にイマーシブシアターなんだけど、世の中的にイマーシブシアターという言葉が独り歩きしちゃってる部分もあるなぁと。なので一回世の中に投げてみてから、これはこう言うものだねって定義付けしてもいいのかなって思ってます。そんなフワッとしたものをたくさん作ってます。

花岡:へえ〜!でも謎解きではないんですよね?

きだ:そうですね。謎解きも作ってはいるんですけど、7:3のうち、7は謎解きじゃない感じになるのかな。

花岡:今のお話を聞いて、僕も究極的に泊まれる演劇で作りたいものは明確なイマーシブシアターじゃないのかもって思いました。一般的に”イマーシブシアター”っていう単語から連想されるのってSleep No Moreとかホテルアルバートだと思うんですけど、これらって物語性がはっきりしているし、ストーリーや演技に重点が置かれてる。でもさっきの公演時間の話もそうなんですけど、例えばお客さんがある空間の中で時間や方向感覚を失って迷子になりながら体験するとか、参加者が陥ってしまう心理状態から体験を設計することに興味があります。

きだ:確かにホテルなら出来ますよね。道端で急に誰かに手を掴まれたら通報しちゃうけど、ホテルの中だったらギリ許せちゃうかも。『このホテルの中で何が起きるかわかりません』って契約書サインしてもらって、体験内容がシークレットなホテル作れないですかね?

花岡:それはうちでやりましょう(笑)HOTEL SHE, KYOTOは多分日本一寛容なホテルなんで。


今エンタメで伝えるべきもの

ここで広屋さんが合流し、また『花束みたいな恋をした』の話に。

広屋:お二人とも飲まれてる感じなんですか?

きだ:私はさっきまで女友達と『花束みたいな恋をした』の話で盛り上がって飲みまくってました!没入型エンタメを作る人なら絶対に見た方がいいと思う!

花岡:そういう感じなんだ。

きだ:とにかく現実と物語の境界が曖昧になるような演出がめちゃくちゃ散りばめられてるんですよ。もうね、私たちが有村架純に感情移入できる日が来るとは思ってなかった!!(笑)花岡君もまさか自分が菅田将暉に共感できると思ってないじゃない?

花岡:思ってないけど失礼ですねw

きだ:wwwいやでも観終わったら「俺、菅田将暉かも」って言い出すと思うのよ。

広屋:それはすごい...もはや観ない方がいいのでは(笑)

きだ:物語の最後に”これはきっと私たちの物語”って出るんですけど、花岡君も広屋君も私も、『あなたの物語体験』を作りたいと思うんだよね。それを体現している映画がまさにこれです!あとこの映画は1人で見に行ってください。少なくとも恋人とは行かない方がいいです。1人で観に行って、反復して、3日くらい経ったタイミングで人と話すのがいいと思います。

広屋:そんな時間の経過も大事なんだ...。

きだ:下手するとこの物語の登場人物って、「この人会ったことある!」って思えるほどリアルなんですよ。

花岡:登場人物の人間性とかが「あの人に似てる〜〜〜」ってことですよね。

きだ:そうそう!でも今日は『花束みたいな恋をした』を語る回ではないので、そろそろ私たちのエンタメの話しましょうか(笑)ノーミーツのビバラバ面白かったですよ!

広屋:無事先週終わりまして。ありがとうございます。

花岡:作品もすごく面白かったですし、プロデューサーとしてもすごく羨ましかったです。

きだ:それはどういうこと?

花岡:1年経ってオンライン演劇の世間からの見え方も変わってきたじゃないですか。そんな変化の中でテーマパークっていうリアルな場所で1カットで撮影したり、あと色んな権威ある大人の人たちとやってるのも興行的に羨ましかった(笑)

広屋:半年くらい前にピューロランド側からお話をいただいて、是非一緒にやりませんかって。僕も元々はOut Of Theaterっていう街中でミュージカルやるってプロジェクトをしてたんですけど、いつかテーマパークとかで仕事したいって思ってたのでめちゃ嬉しかったですね。それで実際に足を運んでピューロランドの現状を知るんですけど、でもそこで演ってるショーのクオリティがめっちゃ高いんですよ。なんならここ数年で観たライブエンタメで一番なんじゃないかってくらい。それをピューロランドの中だけで公演するのは勿体ない!っていう気持ちと、あとはキャラクターが発信することでメッセージがちゃんと届くんじゃないかって可能性に突き動かされた感じですね。

きだ:ちょうどその公演を観た日に、家の内見をしたんですよ。リモートワークも長くなりそうだし、そろそろ住環境も変えようなと思って。で、不動産屋さんと内見したんだけど、夫の年齢や年収は聞かれるんだけど私の発言は流される感じで。透明人間になったような感覚。ちょうど去年の夏に泊まれる演劇『STRANGE NIGHT』っていうイマーシブシアターをやったんだけど、それはお客さんがあるトラブルで透明人間になっちゃうって話で、身振り手振りで話しても全部キャラクターに無視されるっていう設定で、まさにそういう感じだなって。その内見の件もあって、これまであまりやってこなかったけど、私たちもエンタメで真剣に伝えていかないといけないことってまだまだあるなぁと思って、とりあえず住宅展示場でイマーシブシアターやりたい(笑)

※きださんは不動産業界や担当者に対して意見を述べている訳ではなく、「悪意のない思い込み」や「それによるコミュニケーションの不具合」はどこにでもあるもの、それって無意識の中で生まれるものだから生きていく上で皆で気をつけていかないといけない!という考えの元での発言です。

花岡:たしかにエンタメや演劇の制作に携わっていると、業界的にも過去の慣習が残りやすいってのもあるかもしれないですが、振り返るとストーリーや表現の面白さを優先しすぎて、真剣に考えないといけない部分を曖昧にしてたこともあったなって思って。今後社会性のあるテーマで作品を作っていきたいって訳ではないんですけど、世の中に出した時に違和感が生まれそうな表現は「面白いからいいっか!」ではなく、細かいところまで真剣に向き合っていかないとですよね。

広屋:ノーミーツは過去の作品も含めて物語から作っていくので、毎回「今どういうテーマの作品を作るべきか」って話から始まるんですよね。今回のビバラバでは今花岡君やきださんが言ったような、社会の問題を内包したようなテーマを選んで作品を作っていこうって流れはあったなぁと思います。あと、リアルな舞台だと良い会場を抑えようとすると数年後だったりするけど、時代の流れや価値観の変化って本当に早いから、数年後の上演だと遅かったりするんですよね。それがオンラインだと場所性がないから、リアルな舞台と比べても『今』というテーマを捉えやすくなるのかなとも思いますね。

きだ:泊まれる演劇で作っていた『MIDNIGHT MOTEL』も一年前のコロナ前の脚本とは大きく変わっていて、それはコロナ以前と以後で届くものって大きく変わってるからなんですよね。そういう身軽さも大切にしていかなとですよね。

広屋:そうなんですよね。身軽さも大切にしつつ、どこかでフルスイングで打ちたいって気持ちもある。難しいですよね。


リアル/オンラインのエンターテイメント

広屋:お二人に聞きたいんですけど、泊まれる演劇も一旦オンラインの作品は終わりにして、これからはリアル公演に切り替えていく感じんなんですか?

花岡:現時点では2月に上演した『ROOM 103』を最後にして、今後オンラインの単独公演をする予定はないんです。もともと泊まれる演劇はコロナ禍スタートのプロジェクトではなくて、HOTEL SHE, KYOTOにお客さんが宿泊する『MIDNIGHT MOTEL』が幕開けの予定だったので。オンラインのシリーズは必要に駆られて急遽始まったプロジェクトなんです。もちろん新しい表現方法として興味があったんですけど。ただやっぱり、僕らはホテルの人間なので、実際にホテルに宿泊しに来て欲しいっていう気持ちが大きいですね。

広屋:なるほど、ホテルに泊まる時に感情の昂りが最大になるようにしたいってことですね。で、いよいよきださんと作られている宿泊イベントの幕が開くと。もう結構準備は進んでるんですか?

花岡:はい、脚本制作だったり稽古も徐々にスタートしていて。あと実は去年のGWからオンラインで始めた『ROOM 101』から『ROOM 102』『ROOM 103』も全て『MIDNIGHT MOTEL』の前日譚になってるんですよ。どうせ『MIDNIGHT MOTEL』を1年先の2021年に延期にするんだったら、2020年に上演した時よりも何倍も面白いものにしたいなと思って。アベンジャーズ的な発想で、それまでオンラインの世界で見てきたキャラクターと、リアルな場所でようやく会える!っていう連続的な設計になってます。なのでROOM作品で登場したキャラクターがMIDNIGHT MOTELでも登場しますし、シリーズ作品の中にたくさんの伏線を散りばめていたりする。もちろん『MIDNIGHT MOTEL』単体でも楽しめるようにはしていますが。とにかくホテルに宿泊する一晩がお客さんにとって最も熱量が上がるといいなって思ってます。僕らは元々リアルありきのオンラインって感じでしたね。

きだ:私もずっとzoomで作ってきたんだけど、根本的なシステムから変えないとこれ以上面白くならないだろうなぁっていう壁が見えてきて。ただやりたいことはインターネットを舞台にその日その瞬間しかできない体験を作ることだなぁと思って、Twitterを舞台に参加者のツイートでドラマが動いていくっていうのをやったのが同時に8000人が参加した『オンラインパパラッチ』なんです。そこでの収穫が、必ずしも深いコミュニケーションが没入度を高めるわけではないってこと。その発見がとても大きく、『オンラインパパラッチ』が成り立つならあれもこれも成り立つんじゃないか!?って思い始めてきたところです。

花岡:8000人か〜〜〜〜すごいですね...!ちなみにその時ってテストプレイ(本番前に実施するインナー向けの通りリハーサル)ってどうしてたんですか?

きだ:そこはマジでギャンブルだったんですよ(笑)テストプレイも最大30人くらいでしかできなかったので、ゲームバランスは予想値でしかなくて。30人でこの展開ってことは1万人になるとこうなるだろう、みたいな細かい表を作ってましたね。あとはリアルタイムで対処していくって感じでしたね。

花岡:泊まれる演劇の『ROOM 103』でも何度もテストプレイして、それで前日まで何回も変えまくってたんですよね。僕らは自信を持って作った推理展開とかも「うわっ!5秒で解かれた!」みたいな(笑)それで難易度も何回も調整してようやく本番を迎えたんですけど。それを予測値でやる勇気はすごいですね...。

きだ:そうですね。ただ『オンラインパパラッチ』の場合は、失敗とかはなくて、ここまで行ったらここに分岐するっていう構造なので、どの結末に転んでも面白いものになるように作ってました。あと、きっとこの3人だと盛り上がっちゃう”マルチエンディングの美学”ってのがあって。私は基本的にはマルチエンディングにしないんですよね。やっぱり1回で100%のものを体験して欲しいので。今回は一度限りの祭りだからやっちゃおう!そしてどの結末になっても皆で笑おう!っていう気持ちでしたね。

広屋:なるほど。最終的に『オンラインパパラッチ』のお客さんの反響ってどうだったんですか?Twitterを巻き込みながら皆で真犯人を見つけようっていう構造やダイナミックさは凄く面白いと思うんですけど、例えば僕の場合謎解き自体が得意じゃないのと、全部のシーンや情報を見ることができない感じだったじゃないですか。それが最後の答え合わせで全部回収されてたと思うんですけど。今までのSCRAPの謎解きが少数 vs 難問って感じでやってきてて、今回8000人で1チーム & 関与度が100%じゃないってなった時に、これまでと違った反応とかってありましたか?

きだ:思ったよりたくさんの人が面白いって言ってくれたな〜って感覚ではありましたね。『オンラインパパラッチ』を上演したフェスの他の体験型コンテンツのほとんどが「個人が頑張って問題を解決する」っていう構造だったので、それらのカウンター的な立ち位置にもなっていて。なので敢えて”観る”に全振りしたんですよ。Twitterに書き込まなくても、積極的に参加しなくても面白いものを目指したんです。

広屋:たしかに謎解きって一回置いていかれるとその状態のまま結末を迎えるってこともあるけど、『オンラインパパラッチ』の場合は最後までみんなで一緒に結末を見届けることができましたね。その点では、リアル脱出ゲームとは一味違った体験型コンテンツになってましたよね。


エンターテイメントビジネスの苦しさと楽しさ

きだ:せっかくプロデューサー2人が集まってるので、ビジネス的な話も聞きたいんだよね。面白いものを作りながら、同時にお金も生んで人を動かしていかないといけないっていう苦しさ・難しさは本当にあるなぁと思っているので。

花岡:めっちゃ難しいので広屋さんに教えて欲しいくらいです(笑)ノーミーツってプロデューサーって何人いるんですか?

広屋:僕含めて4人ですね。足りないけど!

花岡:4人もいるんですね。急激に人数増えたじゃないですか。生々しい話ですけど、人件費とかどうしてんのかなって。僕らはビビっちゃって公演の運営とかクリエイティブ制作は僕含めて2人とかでやってるので本当に羨ましい(笑)

広屋:ノーミーツの公演もクレジット見るとめちゃくちゃ人がいるんですけど、例えばピューロとかも僕ががっつりディレクションしてる訳ではなくて。専属のプロデューサーが2人いるので彼らが頑張って率いてくれてます。

きだ:泊まれる演劇はHOTEL SHE, のスタッフの熱量と意欲が凄く高いんですよね。結構難しそうなことをマジで2人でやってて普通の企業の人が見たらビビっちゃうと思う(笑)

花岡:クリエイティブに求めるレベルは高いかもしれない。もし自分だったら、僕の下では絶対に働きたくないなって思います(笑)泊まれる演劇はブラック企業なのかもしれない。

きだ:そうね〜〜〜(笑)でもブラック企業とサークルの境目みたいなのはあって、ブラック企業って中で働いている人が辛いと思うのがブラックじゃないですか。泊まれる演劇はハイでやってるところがあるから、その境目にいるなぁと思ってる。

広屋:それで言うとノーミーツも最初の作品とかはサークルみたいな感じで、とにかく楽しいものを!って感じだったんですけど、『むこうのくに』で楽しいけど凄く苦しい状態で制作をおこなってしまって大反省したんですよね。この状態で今後も作品を作っていくのはチームにとっても良くない、って痛感して。だから『むこうのくに』以降、プロジェクト体制とか人数感とかは慎重に考えて編成してますね。でも慎重に組んでも、やってみるとトラブルとかは出てきちゃうので、まだ課題はまだ山積みなんですけど。

花岡:めっちゃ偉い...。

きだ:どんどん真夜中のビジネス談話室になってきたね(笑)



後編は後日公開、お楽しみに...!



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