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真夜中のエンタメ談話室 Vol.01 【後編】

泊まれる演劇のクリエイターを中心に、今気になっているエンタメ情報や制作の裏話などをClubhouseでお届けする深夜ラジオ企画『真夜中のエンタメ談話室』。

今回はその初回の後編をお届けします。スピーカーはSCRAP所属で泊まれる演劇でも脚本・演出を務めるきださおりさん、劇団ノーミーツの広屋佑規さん、泊まれる演劇の企画・プロデュースの花岡直弥です。

前編はこちら


イマーシブコンテンツで裏側をどこまで伝えるか?

広屋:マーダーミステリーとかって作る可能性あるんですか?『オンラインパパラッチ』のみんなで一つの事件を解決するっていうのと近いですよね。

きだ:遊ぶのは好きなんですが、今のところは「自分で作りたい!」とは思ってないです。これまで作ってきた謎解きと同じ文脈を感じるからかも。立ち回りや閃きによって流れが変わったり、端的に言うと頑張らないといけないじゃないですか。今自分が制作する上で興味を持っているのが、”頑張ること”が没入に繋がるものではなくて、頑張らなくても面白いものなんです。『オンラインパパラッチ』も必死に監視カメラ追わなくても、他のお客さんのTwitterを見ているだけで面白いものにしたかったので。会場に足さえ運べば、向こうから面白いものがやってくる、みたいな。でもそれは私がずっとお客さんが頑張ってくれるタイプの体験型イベントを作り始めて、ちょうど10年になるっていうタイミングの問題もあるんですけどね。別の可能性を探ってみたくなっているところというか。

広屋:なるほど。これまでマダミスに全然触れてこなかったんですけど、最近少しずつ触れ始めて。謎解きと比べると少しだけ受動的でも楽しめますよね。行動が示唆してくれるポイントもあるし、演じていればみんなでミッションや物語を紡いでいこうっていう雰囲気がありますよね。

きだ:難しさを感じたことがあるのが、演じるってことのハードルの高さですね。演じ切るところまでいかないと、恥ずかしくなっちゃう(笑)自分ではない誰かを演じることが恥ずかしいので、きださおりを演じてください、だったらやりやすいかもですね。「あなたはシンデレラです」って言われると無理〜〜〜!ってなっちゃう。ただ私が作るコンテンツでも、そのなりきりをお客さんに求めちゃうことがあるので、その塩梅はいつも凄く気にしてます。元々、日常の先にある物語が好きなので。もちろん非日常に振り切る面白さもあると思うんだけど。

広屋:どっちも面白いですよね〜〜〜。

きだ:私から見ると広屋くんは両方好きそうな感じがあって、花岡くんは完全に日常の先にあるナチュラルな物語が好きそうな感じはしてる。

花岡:ジャンルとしてはSFとかも凄く興味はあるんですけど、舞台がホテルでお客さんが宿泊客っていうのは最低限守らないと、どうしてもとっ散らかっちゃうんですよね。お客さんがチェックインするところから物語が始まるので、時代設定も2021年になってますし。泊まれる演劇のコンセプト的にも、お客さんが無理せずに物語の世界に入っていく、っていう流れにしかできないようになってるのかも。いきなりホテルに来て「ここは宇宙船です!」ってのはちょっと(笑)

きだ:花岡くんと話していて、ここの”イマーシブライン”が同じだから馬が合うんだろうなって思ってる。

花岡:イマーシブライン(笑)

きだ:例えば公演が終わったあとのエンドロールとかで、キャストさんが「こういうコメントしてもいいですか?」ってLINEで聞かれてた時に、「それはイマーシブ的にやめて下さい」って言ってたのが超同意だったんですよ(笑)

花岡:役を纏った上でのコメントはOKだけど、中の人としてのコメントはやめてくださいってお願いしていた時ですね。

きだ:そうそう。普通の舞台って終演したらカーテンコールあるじゃないですか。でも花岡くんはどれだけお客さんのアンケートで「カーテンコールして欲しい」って声があっても、スタッフやキャストさんが要望しても『ROOM 101』の時からやろうとしなかったんですけど、その感覚が一緒だなって。これは色々な意見があると思うのですが、私は稽古中の風景とかはあまり見たくないんですよ。私服で映ってるキャストさんを見たいんじゃなくて、あくまで役の中で演じていらっしゃるキャストさんを見たい派。でももちろん裏側も見たいってお客さんも多くいらっしゃるのは事実なので、公式アカウントを使い分けるなど、バランスは必要だと思うんですけどね。

花岡:難しいラインですよね。とは言え、クレジットまで出さないと興行として成り立たなくなる可能性もありますし、役者さんとしても応援してくれているファンの方にご自身の日常の様子も伝えたいだろうし。

きだ:このClubhouseをはじめる冒頭でも「イマーシブと裏側は相性悪い」って話したもんね。

花岡:『ミッキーに”中の人”はいない』論だ(笑)

広屋:『ビバラバ』でもイマーシブラインはかなり意識した挑戦をしていたんですよね。実はピューロさんのSNSで公演告知する前から #ビバラバ で「なにかのショーがはじまる」って予感させる投稿をしていたり。ストーリー的にも、ショーの3日前にスポンサーから急に変更依頼がくるって言うものなんですけど、3日前まではキャラクターたちがショーの準備をしている様子の動画がアップされてたりとか。ただキャラクターの投稿はそれで統一できたんですけど、スポンサーやピューロスタッフ役の役者さんの場合はどうしても難しかったですよね。もし”イマーシブ俳優”というジャンルがあるのであれば、期間中の発言も役のものにして、プロフィールも変える!が美学的に共有されていれば別なんでしょうけど、ノーミーツもあくまでお芝居として認知されているので現状難しいですね。

花岡:それで言うと泊まれる演劇の『ROOM 103』は役者非公開でやったんですよ。それは演出上、非公開にしないといけない理由があったからなんですけど。でも今思い返せば『ROOM 101』も『ROOM 102』も情報としては出してなかったんですよね。全公演が終わった後にSNSで公開してた。これまで演劇を作ったことがなかったので、その辺の慣習をそもそも知らなかったのも大きいです。

きだ:だからこそイマーシブラインが研ぎ澄まされていたのかもね。もちろん花岡くんが役者さんがいらっしゃらないと作品が成り立たないっていうのは100%理解した上で、まず最初は『泊まれる演劇』や『ROOM 101』っていう名前だけで勝負したいって言ってたのを覚えてます。最初からその美学をすごく徹底してたよね。

花岡:そうですね。『ROOM 101』にしても、他の泊まれる演劇の作品にしても、当初から”お客さんのチェックインから物語が始まる”っていうコンセプトを大切にしたかったし、そこへの自信もあったので、コンセプト以外の情報をあんまり出したくなかったんですよね。演劇を見るってなると出演者に目が行くけど、ホテルに泊まるって時に他の宿泊客やホテルスタッフの情報って知らないじゃないですか。なので作品の告知から終演までは、申し訳ないですけど泊まれる演劇の世界では、西郷豊さんではなく堅山ヒロとして生きてくださいってお願いしてました。

広屋:役者さんと合意とった上でやられているのであれば凄くいいですよね。その先の未来としてきださんやってるな〜〜って思ってたのが『Project:;COLD』なんですよね。


『Project:;COLD』から見えた希望の光

きだ:『Project:;COLD』は本当にやばくて、私は一部の体験ギミックをお手伝いさせてもらっていただけなんですが、藤澤さんっていうずっとドラゴンクエスト等のゲームを作っていらっしゃった方が本当にすごくて。『Project:;COLD』っていうのはリアルとバーチャルの境目にいるようなキャラクター達を愛でていたら、突然殺人事件が起こっていくという、体験型コンテンツでは挑戦的すぎることをやっているのと、彼女たちの物語がTwitterを中心にリアルタイムで進んでいくっていうことに挑戦されていて。最初に企画書を見せていただき、協力して欲しいって頼まれた時に「これ実現できるのかな?」って思ったんですよ。リアルタイム物語としてとても壮大で、同じような企画を思いついた人が過去にいたとしても、様々なハードルがあって実現するのはとても難しいと思います。でも藤澤さんが会社を作られて、新しい物語体験について熱く語られているのを聞いたときに、もし実現したら物語体験にすごく未来があるなって思って。理念に共感し、是非!って感じで、体験部分をお手伝いさせていただきました。

とにかく世界観の作り込みがすごくて、『ずっと真夜中でいいのに。』がテーマソング歌ってくれていたり、監督が川サキケンジさんで、キャラデザが望月けいさんだったりと、世界観がぶれなくてドンピシャなんですよね。まだプロジェクトが本格始動する前の映像で起こっていたことが、進むに連れて回収されたり、PVの中のQRコードが仕込まれていてその先に飛べる!とか。こむぎこ2000さんが作った、ずとまよさんのPVの中のQRコードが仕込まれていてその先に飛べる!とか。そのPVもちゃんと単体でかっこいいんですよね。その世界観とクオリティで実現させ、最後までやり切った『Project:;COLD』のチームは心から尊敬していますし、やっぱり私たちももっともっとトライしていかないといけないなぁって思いました。

広屋:すごいですよね。僕もまだ全容掴みきれていないってのもあるんですけど、これを作るためにどれくらいの人がそれくらい準備したんだろう...って思うんですよね。

きだ:実際に制作に関わってみて、じゃああれをもっと短期間でやったらどうなるんだろうとか、考えが広がるんですよね。『Project:;COLD』はそういう希望を見せてくれたなぁって思います。あと何度も繰り返すんですけど、『花束みたいな恋をした』も希望の一つで、体験型じゃなくてもあんなに没入感を作れるんだって頭を殴られた感じで。ハマるかハマらないかは人それぞれだと思うんですけど(本当にハマらない人は劇中席を立っちゃうくらいらしい)、一から勉強しないとなぁ〜って思いました。


衝撃を受けるほどの体験

花岡:お話聞いていて、きださんも広屋さんも”物語”へのアンテナや興味関心が強くて凄いなぁって思いました...。僕もちゃんと勉強しなければ。

きだ:たしかに花岡くんはストーリーより、空間の演出とかビジュアルとかデザイン寄りなイメージがある。

花岡:物語ってある程度言語的なものだと思うんですけど、どちらかと言うと感覚的なものの方が興味があって。特に『本当はそういう風に使わないはずなのに、変な使い方をしている場所や空間』が好きなんですよね。

広屋:純粋に”体験”が好きってこと?

花岡:体験っていうと広義になっちゃうんですけど、脳に衝撃が走るくらいの新しい表現が好きなんです。最近すごい感動したのがが、今年の夏に山口県にオープンする複合施設の『メゾン ・アウル』。いわゆる洞窟レストランで、1組限定で宿泊もできるんですけど。

山口県って聞くと秋吉台とかあるから「元々洞窟があったところにレストラン作ったのかな?」って思うじゃないですか。沖縄とかにあるケイブカフェ的な。でもメゾン ・アウルがやばいのが、普通の住宅地の空き地に幾何学的な穴を掘って、そこにコンクリートを流し込んで、最後にそのコンクリだけを残して土を取り除くことで”人工的な洞窟”を作ってるんですよ。それって文字面としての紹介だと『洞窟レストラン』になるんでしょうけど、この設計にしようと思ったのも凄いし、実際に作ってしまったのは狂気的に凄い。

『洞窟カフェ』って聞いた時に思い浮かぶ固定概念を打ち破っていることに感動するし、更地の空き地を渡されて「なんか体験作ってください」って言われても到底思いつかないですよね。
泊まれる演劇もここまではいかないですけど、一般的にホテルって観光がまず先にあって、その後に寝泊りする“家の代わり“って思われるけど、だからこそホテルが旅の目的地になるような場所にしたかった。かと言って、演劇の固定概念にも縛られたくないから開演時間は教えませんっていうスタンス。純粋にストーリーが面白い・感動的っていうよりも、その空間に入った瞬間、「なんかわかんないけど、これまで味わったことのない感覚!」って思われるような、一瞬の衝撃を生む方に興味があるんです。

きだ:エンタメというより衝撃フェチなんですね。

花岡:今はエンタメ談話室なんですけどね(笑)他に最近好きだったのは『目』っていう現代アーティストグループが去年千葉美術館でやってた『非常にはっきりとわからない』っていうインスタレーション展なんですけど。

これはネタバレすると怒られるんで詳しく言えないんですけど、美術館の2フロアを使って一つのインスタレーションが展示?されていて、その展示構成がとにかく常軌を逸してるんですよね。でもちゃんと多くのお客さんに受け入れてもらえるようなエンターテイメントにしないといけないなぁ、とも思ってるので、お二人のアンテナの張り方はやっぱり凄いなって思いました。

きだ:でも私たちも”物語体験”っていうも、伝わりやすい便利な単語だから使っているだけってのもありますよね。”体験”だけだと意味が広すぎるから、「日常とは違う変わった体験ができますよ」っていうメッセージを込めて”物語”をつけているのかもしれない。


2021年の展望

きだ:もう深夜1時ですし、そんな我々3人の2021年にどんな体験を作っていくのか最後に話しましょうか。でもさっきの役者さんの名前をどう出してもらうかって話にも通じるんだけど、Clubhouseって本名でしかアカウント登録できないから、否が応でもリアルな個人として話さないといけない唯一の場所かもね。

広屋:実はノーミーツでもClubhouseでラジオドラマとかできないかなって模索してるんですけど、名前ってのが一つのハードルなんですよね。でも逆に”鈴木役”の人が欲しいから、鈴木さんを募集するってのは面白いかもしれないですね(笑)

きだ:たしかに、それで名前トリックとかされてたら痺れますね。物語中に借り物競走的な感じで「田中さんいませんか!!」って。面白いかもね。あ、また話ずれちゃった!笑

花岡:泊まれる演劇としては、とりあえずリアル公演を2021年に2公演はやりたいな〜って思ってます。6月の『MIDNIGHT MOTEL』と、あとはまだ構想段階でしかないんですけど10月か11月くらいに自主公演ができればって思ってます。2作品目はHOTEL SHE, KYOTOから場所を変えて、別のとこでやりたいな〜って。なので、今はひたすらにコロナの収束を願ってます。

きだ:本当にそうだよね〜。でもホテル自体が夢があるし、チェックインとチェックアウトっていう、始まりと終わりと体験として表現できるっていうのは素晴らしいアドバンテージですよね。

花岡:そうですね。将来的にはホテル以外の場所、例えば森とか列車とかでも作品を作ってみたいって言う気持ちはあるんですけど、現状ホテルでやってみたいアイデアが3つくらいあったりするので、まずはそれらを形にしたいなって。

きだ:京都で言うとお茶屋さんのシステムがエンターテイメントでも使えたらなぁって思うんですよね。やっぱりお金を払うっていう行為が一瞬現実に戻るじゃないですか。全部ツケで後払いっていう信頼システムが成り立てば、作品中に何かを購入するって演出があったとしても、あとで請求できるっていう。そうすれば公演中はお金のことも全部忘れて、静かに没入できのになぁって。

花岡:ホテルだったらルームキー見せるとか、オールインクルーシブでやるとかできるんでハードル低いですけどね。

きだ:ホテルだったらそれができるんでいいですよね。あとはテルマー湯みたいなスーパー銭湯。あのピッてやつ、導入したいなーって思いますけどね(笑)じゃあとりあえず泊まれる演劇は2公演やる予定なんだ。

花岡:そうですね。オンライン公演と比べると頻度は落ちるんですけど、その代わり、ある程度長い期間上演できればなって。

きだ:泊まれる演劇はオンラインでの1年間の情報の蓄積があるから、聖地巡礼的な楽しみ方もできるし、面白いムーブメントが起きそうだよね。SLEEP NO MOREしかり、だいたいの体験型イベントって初めていく土地じゃないですか。ラブライブ!サンシャイン!!が好きで、舞台が静岡県の沼津ってとこなんだけど、沼津にいくとキャラクターたちがキャッキャしている様子が目に浮かぶんですよ。

それが泊まれる演劇でROOMシリーズを観てくれていたお客さんだと、ホテルに入った瞬間「あの場所だ!!」ってなるし、その意味で特別な高揚感を持った状態で参加してくれるから、私は6月の脚本演出をやらせてもらえるのがラッキーだなぁって思ってる(笑)

花岡:たしかにROOM作品が終わったあとに、ホテルに遊びに来られるお客さんが一定数いてくださって、参加者同士でアイスクリームのモニュメントの前で写真撮影されてたりするんですよ。たまに宿泊予約の時に「組子さんが泊まってた部屋ってどこですか?できれば同じ部屋がいいです!」みたいなお問い合わせも頂いたり。

きだ:まさに聖地巡礼だ!!!それはホテルとして嬉しいね〜〜〜!

花岡:そうなんですよ。実際、僕としても一番嬉しい感想が「関西行った時は絶対ホテルシーに泊まります!」って言ってくださることで。もちろん作品が面白かったですって純粋に言ってもらえるのも凄く嬉しいんですけど、そこにホテルシーのスタッフとしての感情も上乗せされるんです。ただ、たまに僕もロビーで仕事してたりするので、泊まれる演劇のファンの方が来てくださってるのわかるんですけど、人見知りなのでずっとチラ見してます(笑)

きだ:『ROOM 101』の相談をされた時に、「オンラインの作品を、ホテルに来たいって思ってもらえるような作品にしたいんです」って花岡くんから言われたことを覚えてる。実際にそうなってるのは感慨深いね〜〜〜!

花岡:きださん含め、チームの皆さん、そして何よりお客さん、本当にありがとうございますっていう気持ちで一杯ですね...。ノーミーツさんの2021年はどんな感じになるんですか?

広屋:さっきの花岡くんの空間の話を聞いて考えてたんですけど、僕も元々は体験型イベントに興味のある人間だし、「こんな空間でこれやるの!?」ってのが好きだったんですよ。でも2010年代のライブエンタメ業界の流れに沿って好きなものが変わってきてるなぁって感覚もあって。2010年あたりでイベントも参加型のものが流行りだして、アフロマンスさんの泡パとかカラーランみたいな「異空間を楽しむ」みたいな流れがありましたよね。その先にSCRAPさんのようなゲーム性を楽しむコンテンツが市民権を得たって思うんですよね。その中で僕がイマーシブシアターで衝撃を受けたのって、めちゃくちゃ作り込まれた空間に物語性が加わった時に、興奮度合いが爆上がりする感覚なんですよね。今整理して考えると、体験×物語ってものに今は引っ張られてるのかなぁって思ってます。

花岡:去年に病院みたいなところで体験型イベントやられてましたもんね。つまりああいうものを今後は作っていきたいって感じなんですか?

広屋:2020年は本当はリアルエンタメをたくさんやろう!って思ってたけどコロナでできなくなっちゃって、その反動でオンラインを始めたんですね。その中でオンラインとリアルが共存できるコンテンツってできないかなぁと思っていた時に、たまたま『アンドロイドクリニック』の話があったので実験的にやってみようかなって思ったんです。

ただ作って思ったのは、オンライン・リアル両方楽しめるものって難しいなって。同時並行で楽しめるものは2つの視点で設計しないといけないし、そうなると2つの作品を作るくらい大変になっちゃうので。あと興行としての費用面ですね。

きだ:私もよくプロデューサーさんに「どうにかオンラインでもリアルでも両方楽しめるもの作れませんか?」って聞かれるんですけど、「(別々の作品で)2つ作れば大丈夫だよ」って答えますね(笑)今はオンラインとリアルで別々で作った方が面白いものになると思ってるので。たださっきも言ったように、泊まれる演劇はずっとオンラインで見てた世界がリアル作品で三次元になる、っていう構造は一つの希望かもしれないですね。画面越しにチャットでしか話せなかった人とリアルで話せるようになるし。『MIDNIGHT MOTEL』は凄く面白いものにしないといけないですね。でもすでに面白いものになりそうですよね。

花岡:そうですね。オンライン作品を見ていない人でもちゃんとついて行けるようになってるし、もしずっとシリーズを観てくれているファンの方であればテンション爆上がりするような演出もたくさんありますしね。

きだ:ホテルシーがかなりフリーダムなんですよね。「これやっていいですか?」って聞くと、大体「あー、いいですよ」って言ってくれるので(笑)あの自由度で体験型イベントを作れるってことは私の経験上でもなかなかないので、今のスタイルを貫いて欲しい。

広屋:プロデューサー的な質問なんですけど、やっぱり泊まれる演劇の収支がどうなってるのかめちゃくちゃ気になりますね。それだけ自由なモノづくりをしながら、ちゃんと収益化できてるってどういう仕組みなんですか?笑

花岡:まず制作メンバーを限りなく絞ってるってのもあるんですが、リアル公演の場合でもロングランをして一定のキャパシティを担保できるってのが一番大きいですね。おそらくホテルを数週間から1ヶ月、通常営業を止めてイベント利用でずっと貸し切るって他のホテルだとかなりハードル高いと思うんですよね。あとそのロングランの公演に付き合ってくれる役者さんがいること。泊まれる演劇に出演して下さる役者さんは、みんなめっちゃ優しい。本当にいい人ばっかりだし、頭が上がらないです。

広屋:確かに、こういう新しいものに共感して一緒に作っていこう!って人はマインドからして熱量ありますよね。ノーミーツに出演してくださる役者さんも素晴らしい方ばっかりで、公演終わった後も繋がりがずっと続いているので本当に恵まれているなぁって思ってます。

きだ:SCRAPに出演してくださる役者さんもいい人ばっかりですよ!笑

花岡:謎の張り合いになってきた(笑)

広屋:それはもちろんSCRAPさんは素晴らしいですよ!新宿にタワー建てちゃうくらいですもん。ずっと高いクオリティで作品を公開し続けることができるってすごいですよ。

きだ:確かに場所があるって言うのは強いメリットですよね。インサイドシアターも『SECRET CASINO』だけロングランができますし。あれは東京ミステリーサーカスの閉店後にやってるので。あと最近の再演は8000人の効果もあってか、チケットも完売するくらいお客さんも戻ってきてくれている感じで。オンラインもまだ続けたいなぁって思ってます。それではそろそろノーミーツさんの2021年の展望を。

広屋:ノーミーツはこの前のピューロランドが皮切りにもなるんですけど、色んなコラボ公演を仕掛けていきたいなと考えています。昨年は自主公演がメインだったんですけど、今年は活動の幅を広げるって意味でも、まだまだオンラインの領域でたくさん着地させていきたいですね。あとチームメンバーが本当に特殊なので、コロナ禍のあとも活動を続けていくためにも、「オンラインで色んなエンタメが作れるチームなんです!」ってのをもっと発信していきたいです。多分、今Clubhouseを聞いてくださっている方たちには知って頂いていると思うんですけど、その先まで届けたいっていう気持ちはありますね。

きだ:チーム力をあげたいってことなんですね。副業のメンバーってどれくらいいるんですか?めちゃくちゃ仕事ができるってことですよね。

広屋:もう化物ばっかですよ(笑)普通の仕事をしながら副業・兼業しているメンバーが半分くらいで。2月にはピューロランドとHKT48の公演があって、12月には自主公演、3月には学生たちと演劇祭をやってるので直近でも4つのプロジェクトが動いていて、同時に次の作品の仕込みをやってますね。なので2〜3ラインくらいはやってる感じです。

きだ:すごいですね。でも土日だけ活動してるってワケではないんでしょ?

広屋:これがさっきの健康とのバランスの話に戻っちゃうんですけど、本職の隙間時間を合わせながら作ってる感じですね。コロナのリモートワークの環境だからこそやりやすいってこともあるんですけど。でも本当にすごいメンバーばっか集まってますよ。副業メンバーで集まって仕事しているっていう、働き方の面でもきっと新しいですし。

きだ:確かにそうだよね〜〜。

花岡:では最後にきださんの展望を聞いて終わりにしましょうか。

きだ:2021年はすでに面白いものたくさん作り始めてますね。一昨年まではミステリーサーカスをやってて、2020年からはクリエイティブに全振りしようって思っていた矢先の、オンラインだったりしたんだけど。なので今年はオンラインもリアルも、もちろん『MIDNIGHT MOTEL』も含めて衝撃的なものをたくさん出していきたいなって思ってます。

あと私はこれまで物語を全然考えられない人間だったんですよ。基本体験でストーリーを考えるのはそんなに得意じゃなかったんですけど、オンラインでストーリーを強く作っていかないといけないってのを意識して向かい合ってきたので。今作っている謎解きの作品でも、「あれ?これまで苦手だったのにできるようになってる!」っていう変革が自分の中でも起きてますね。そういう意味でも2020年を経て、2019年までとは違ったリアルイベントを出していきたいなって思ってます。

広屋:お二人とも2021年はリアルにいくんですもんね〜。リアルやりたくなってきちゃうなぁ(笑)

きだ:やっぱりコロナが無かったらやれたのにっていうイベントがたくさんあるんですよね。飲食が絡むものはまだシビアだし、SCRAPの公演で作るものも狂ったように消毒してますしね。消毒が入ると、じゃあこういう細かいものは使えないなぁってなるので。そのハードルはありつつ、少しずつリアルにも戻っていきたいですね。と言うより、オンラインを経たからこそ、リアルでやりたいものが増えてしまったっていうのが正しいかも。アイテムとかも作りたくなっているので、ただ落ち着きのない人になってる(笑)

広屋:どんどんアイデアが出てくるのがクリエイターとして凄いですよね。

きだ:いやでも私は常にこの熱量を受け止めてくれるプロデューサーを探し求めてるので。もしよかったらお二人も是非って感じで(笑)エンタメ業界ってなんだかんだ作品性を追求してくれるプロデューサーさんって少なかったりするので。私もバチバチにやりたいんですよね。あとは今年はわからないけど3人で真夜中の街中でなんかやれたらって思ってますよ。まずは『花束みたいな恋をした』を観てもらって、そうすると真夜中の甲州街道を缶ビール片手に歩くことがどれだけエンターテイメントかわかってくれると思うので。次は明大前に3人で集合して歩きながらブレストしましょう(笑)

花岡:次は東京で集合したいですね(笑)それまでにちゃんと花束観るようにしておきます。

広屋:僕もちゃんと観ます。

きだ:お客さんもこんな遅い時間までありがとうございました。(Clubhouse)早くiPhone以外の方も聴けるようになるといいですよね〜。

花岡:ちゃんと聴けない人の為にも全文文字起こしするんで(笑)

きだ:イマーシブラインと言い、素晴らしいですね。ちゃんと文字起こしに耐えうる話ができていたか不安だけど。是非さも良い話をしていたかのようにまとめてください(笑)

広屋:3人それぞれ2021年も頑張っていくので、ぜひチェックしてもらえると嬉しいですね。遅くまでありがとうございました。

きだ:ありがとうございました!おやすみなさい〜!

花岡:おやすみなさい〜〜!




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