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再演すべきでない作品を再演するために。|MIDNIGHT MOTEL 再編集記 <#1>

MIDNIGHT MOTELという作品は、当初泊まれる演劇の旗揚げ公演として2020年に上演予定でした。よく泊まれる演劇はコロナ禍で不況に陥ったホテルが苦肉の策として立ち上げたプロジェクトだと誤解されてるんですが、それは違って、たまたま旗揚げとコロナの煽りが被ってしまっただけ。だからコロナがなければMIDNIGHT MOTELは2020年の6月に上演予定でしたし、物語や世界観設定、「モーテル・アネモネ」という名称もまったく別のものになっていた。良くも悪くも、天災に振り回され、もがき苦しみ、その渦中で産声をあげた予定不調和な作品。きっとこんな作品は、もう一生生まれないと思います。

そしてようやく昨年に振替公演として上演し、ゲストはモニターの向こう側にいた彼ら・彼女らと邂逅を果たし、感動的なフィナーレを迎えました。それは当初望んだカタチとは似つかず、何度も手を加えてしまったけど、それでも一つの「正解」として幕を閉じることができたと思っています。

なので、MIDNIGHT MOTELは2021年にこそ上演する価値のある作品で、再演だとIn Your Roomからの一連で生まれた熱量も失われてしまうと考えています。(それは僕ら制作チームが麻薬的ににひた走っていた原動力かもしれないし、ゲストの皆さんがずっと手渡してくれてきた ”愛情”のようなもの かもしれません)
上手く言えませんが、緊急事態宣言下で家の外に出られない環境で、それでもあなたの部屋とホテルを映像と音声で繋いで、でも手元にある招待状の手触り感だけはリアルで、そんなやりきれない夜を共有したあなたとだから、本物の場所にチェックインするだけで言葉を超えたカタルシスが生まれる。初めましてのはずなのに、どこかで会ったような気もする、まさにこんな感じです。
でもMIDNIGHT MOTELを再演するからって、In Your Roomを再演するってアイデアもありましたがなんだかしっくりこなくて、あの状況下だからこそIn Your Roomは価値を持っていたと思うから。つまり2021年を、あの熱量も含めて、もう一回やり直すことはやっぱり不可能なんですね。だから、モーテル・アネモネは昨年の夏で綺麗さっぱり閉館するはずでしたし、2022年版のMIDNIGHT MOTELは、果たして初演を超えられるのだろうか?とずっと半信半疑でした。

それでも再演を決めたのは、2021年のMIDNIGHT MOTELに行きたくても行けなかったゲストがたくさんいらっしゃったからで。オンラインでずっと追いかけて頂いていたのに、最終回だけ見れないって、なんだかすごく気持ち悪いじゃないですか。

再演するって決めたからには、「2021年を越えられるかわからない」なんて中途半端なことは言ってられないわけで、どうすれば「コロナ禍で色々あったけど、私は2022年版に参加してよかった!」と思って頂けるかを必死で考えました。そしてその活路はようやく姿を表し、私たちは今その道中をひた走っています。

チケット申込み時のアンケート数値を見ても、たとえばIn Your Roomシリーズを鑑賞していたゲストの割合は、2021年と比べて2022年は半数以下になっているので、MIDNIGHT MOTELは「過去シリーズを見ていないと物語が理解できないような文脈」はできるだけ減らし、でも完全に排除するのではなく、事前に過去シリーズのあらすじを読めるウェブコンテンツを用意したり(後日公開予定です!)、招待状の中身のコンテンツも工夫したり。体験も、昨年は一日2公演で、一公演目と二公演目に分断が発生していましたが、今年は一日1公演での上演。僕らが考える理想的な開演〜閉演の演出ができたり、上演時間も去年と比べて30分〜1時間ほど長くなる予定です。

でもこれはマイナスをゼロにするようなもので、マイナスをプラスにするようなものではありません。過去を超えるには、やっぱり過去と同じやり方ではダメなんですね。初演とは異なる指針、新しいコンセプトが必要となりました。

そのコンセプトこそが、今作のサブタイトルにもなっている『ROUGE VEROURS(ルージュ・ベロアーズ)』でした。
ルージュ・ベロアーズとは一体なんなのか。どうしてこんな読みづらいサブタイトルをつけたのか。次回はそんなお話をしようと思います。


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