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私が息子に出逢うまで(4)

叱責

どうしよう…赤ちゃんが!私の赤ちゃんが!
私は震える手で産婦人科の先生に電話かけた。
事情を話すと先生は、電話越しに声を荒げた。

「何故外出をやめるよう言ったのに会社へ行ってるの?!貴女、本当に子供が欲しいと思ってるの?今すぐ会社を休んで、検査に来なさい!入院です!」

入院?私が?赤ちゃんどうなるの?
いや、課長に今から休むなんて言えない。言っても聞き入れて貰える気がしない。どうしよう。どうすればいい?
私は自分の気持ちと、置かれた状況を説明することにした。

-先生、私は本当に子供が欲しいです。
外出の件はすみません、私の勘違いです。外回りをやめるように、という意味だと思っていました。
会社に妊娠報告しましたが、歓迎されていませんし、体調不良でも休みを良しとしない上司なので、今から休むのは難しいです。

「そんな会社訴えなさい!あーもう!もう一度聞くけど、貴女本当に子供が欲しいのよね?
本気なら、看護師長に代わるから話を聞いてもらいなさい。」

-はい。

説得

電話は看護師長に繋がれた。
「先生は貴女に怒っている訳じゃないの。赤ちゃんを守りたいだけなのよ。分かってね。
会社を休むことは、上司以外に相談できない?前例がなかったり少なかったりすると、困る方も多くいるわ。
でもね、一番大事なのは何?
会社に遠慮して、もしも赤ちゃんを失ったら、貴女だけが傷つくし、一生後悔するんじゃない?
闘ってみましょう。ね? 私たちに出来ることは、何だってするから。」

私は涙をこらえてお礼を言い、頑張ることを誓った。赤ちゃんを、命を守りたい。会社なんてどっちでもいい。

デスクに戻ると、課長がこちらを気にしてちらちら見ていた。私は気にせず社内規定に目を通す。休みに関する部分を全て印刷し、課長の視線を横目に人事課へ向かった。
人事課には同期がいる。彼なら何か術を知っているかもしれないと思ったのだ。
同期を呼び出し、事情を説明した。
彼は声をひそめて言った。
「休めるよ。規定には書いてないけど。
お医者さんに診断書貰って郵送して。必ず、4日以上休まなきゃいけないって書いてもらうこと。まぁ、分かってると思うけどね。休みの間は会社から給料が出ないけど、傷病手当金の申請が出来るから。後で家で使うメールアドレス教えて、詳しく書いて送っておくから。
今日、もう帰る?明日から?」

-課長説得しなきゃだから、今日は定時までいると思う。明日から休めるようにお願いしてみる。

「えっ?あの課長、説得できるの?」

-貴方に教えて貰ったって言うわ。

「やめて!あの人、部署関係なく気に入らないことあったら怒鳴りにくるから。頼む。」

-分かった、名前は出さない。ありがとう。もう戻らないと課長が来そう。
私は部屋を出ようと立ち上がった。
同期も立ち上がり、私の肩に手を乗せた。
「おめでとう!!!元気出せ!な!
負けるなよ、ママさん!」

さて、休む方法があるのは分かった。
問題は課長を説得出来るかどうかだ。

私はお腹をさすりながら、営業部へ戻った。

つづく…

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