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私が息子に出逢うまで(20)

呼び出し

その日、私は残業していた。お腹は目立ってきたものの、体調は以前より格段によくなっていた。

そろそろ帰ろうと支度していた時、電話が鳴った。夫と私の共通の友人である、同僚からだった。

「残業終わった?A社長が会いたがってるから、いつものお店に来れる?」

-行く!

A社長は私が前職でお世話になっていた元上司だ。私が転職した1年ほど後に会社を辞めて家業を継ぎ、専務を経て社長になった。
専務時代に私が今の会社と繋ぎ、現在も協力関係が続いている。

A社長の待つ店は会社から5分ほどの場所にあった。嬉しくてつい、駆け足になってしまった。

到着し店のドアを開けると、そこには課長代理が立っていた。私を見た彼が言った。

「えっ!?来たの?」

それはこっちのセリフだ。

乱入

店を間違えたかと同僚に電話しようとした時、奥から"こっち、こっち"と声がした。A社長と同僚は、課長代理と通路を挟んだテーブルで飲んでいたのだ。

「久し振り。元気か?」

A社長の声と笑顔で、記憶が前職に戻る。前職で当時課長だった、A社長から学んだことは今の仕事で生きている。

思い出話や今の会社での仕事の話をしたら、A社長は嬉しそうに聞いてくれた。

その時、課長代理が私たちの席へやってきた。

「女だからって依怙贔屓されて、羨ましいよ。同じ失敗しても怒られないんだ。」

つづく…

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